表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/40

二十一話「特訓」

 秘密の特訓を始めて数日。

 少しずつ成果は現れているものの、まだまだ不安定だ。


 最初は弱く、弱く、と念じ続けて発動していた為問題はなかった。

 恐らく最低の出力でやるのは簡単なのだろう。


 次はある程度強い状態にもっていこうとした。

 が、これが難しい。

 思っていた以上に力が出てしまっている。

 そういう時は使用後に動けなくなる事が多い。


 中央都市を出てすぐの場所でやっていた為、出入り口に立っている兵士さんにお世話になったりもする。

 頻度としては、三日に一回くらいだろうか。

 秘密じゃないのかって?

 そんなものはプライドと一緒に捨てた。


「た、助けてくれぇ……」

「またか。大丈夫か兄ちゃん?」

「ぐ……燃え尽きちまったぜ……真っ白にな……」

「は? よく分からんがまたそこに座らせるぞ」


 そんな感じで冗談を言えるくらいには会話もしてる。

 ネタは一切通用しないが。

 しかし毎度毎度手助けしてくれる辺り面倒見のいい兵士だ。

 今度クッキーでも持ってきてやろう。

 作るのはコゼットだが。


 動けなくなった時はしばらく壁を背に座らせて貰っていれば動けるようにはなった。

 これも少しは上手く扱えているようになっているという事だろうか。

 よく分からないがポジティブに考えておこうと思う。



 そんな生活をしていたある日の夜。

 いつものように三人で食事をした後まったりしていると、とうとう突っ込まれてしまった。

 三人と言ったが、三人目は夜の食事に毎度来るアティナだ。

 寝泊りはしていないが、この時間帯は当たり前のように居る。


「ユウイチさん、最近おかしくないですか?」

「えっと、何が?」

「ご飯食べる時たまに腕がぷるぷるしてる時ありますよ」

「あー……そうか?」

「はい、そうです。今日だってちょっと変でした」


 腕がぷるぷるというより全身ぷるぷるしてるんだけどね。

 石を砕くだけじゃなくて全力で走ったりもしてるし。


 それはさておき。

 そういえばコゼットにも詳しく言ってなかった気がするな。

 伝えたのはただ動かなくなるくらいか。


 うーむ。

 反動が酷い魔法なんて心配されるんじゃないだろうか。

 魔法なのかどうかもよく分からんけど。


「……ユウイチ」

「なんだよ」

「……コゼットが心配してる。喋って」


 横に座っているアティナから追撃がきた。

 うーん、隠したい訳じゃないしな。

 別にいいか。


「あー、実はだな――」


 ブラッドオーク戦で初めて発動したよく分からない力。

 しばらくは怖くて使用を控えていた事。

 この間の緊急依頼で最後に戦った邪神教の教徒相手に使った事。

 ひとまずそれを伝えた。


 そして力の調整をしている現状の説明。

 成果は出てるんだけどまだ納得いく出来ではない事。


 といった最近の事まで全てを話した。

 ついでに特訓したいからしばらく稼ぎはないという情けない現実も混ぜておいた。


 話している間はコゼットの綺麗な金髪を撫でていたのでちょっと髪型が崩れている。

 本人は気にしていない様子だが申し訳ない気持ちになったので手櫛で直す。


「うーん、そんな魔法は聞いた事ないです」

「……私もない」


 俺もないです。

 だけど使えるのだからしょうがない。

 あるものはあるんだ。

 二人はいまひとつ信じきれないようだが。


 するとアティナが何か思いついたかのように顔をあげてこちらを向いた。


「……使ってみて」

「ん? あぁ、限界突破(リミットブレイク)をか?」


 コクリ。

 と頷くアティナ。


 そうか、そうだな。

 見せるのが一番手っ取り早いか。

 仕方ない。

 俺の特訓の成果を見せてやろうじゃないか。



------



 最近お世話になっている都市の出入り口そば。

 いつもと違うのは観客が二人居る事だ。


「いつもここで練習してるんですか?」

「そうだな」


 昨日話し合った結果通り今日は俺の力を見せる事になった。


 そういれば黒の覇者で出た神藤とかいう奴もこの力を使えたのだろうか。

 黒髪、火属性魔法やらと色々共通した部分もあった。

 しかし特別な力を使えたとかの記述は記載されていなかったはずだ。

 いや……パッと見じゃ分からない力だ。

 もしかしたら誰も気付かなかったのかもしれんな。


「ユウイチさん。石これでいいですか?」


 そんな事を考えているとコゼットが掌サイズの石を持ってきた。

 神藤についてはまた追々調べるか。

 情報はなさそうだけど。


 しかしコゼットは気がきくな。

 昨日石砕けるぜーとか言ったから持ってきてくれたんだな。


「あぁ、丁度いいサイズだ」


 石を受け取り二人を見渡す。

 さっそくやるか。


「んじゃやるぞ。しっかり見ておいてくれ」

「はいっ!」

「……ん」


 二人の返事を聞いてから軽く息を吐く。

 調整はどうするか。

 全開は怖いから少しずつ強くしていくか。

 いつもの訓練通りに。


「ふぅ……よし、限界突破(リミットブレイク)


 ドクン。


「ぐぐぐ……」


 思い切り力を入れる。


 まだ無理か。

 力が足りない。

 もう少し。

 もう少し強くだ。


 ドクン。


「ぐぎぎぎ……」


 パキッ。


 もっと。

 もっと強く。

 壊せ。

 破壊しろ。


 ドクンッ!


「……ッ!」


 バキバキバキッ!


 くそっ!

 力の調整間違えたか?

 気が昂ぶり過ぎている気がする。

 まぁいい。

 どうせ割れる程度には力が必要なんだ。

 このままやってしまえ!


「オラアァァァッ!」


 ボゴンッ!


 ふっふっふ。

 どうだ。


「うわー凄い凄いっ!」

「…………ほんとに割れた」


 石が砕けた直後に二人から反応があった。

 コゼットは喜んでいるようだ。

 緑の瞳がキラキラと輝いている。

 アティナは信じていなかったのだろう。

 珍しく目を見開いてまさに「信じられない」という顔をしている。


「ふぅ……ふぅ……」


 やっぱ調整が上手くいかないな。

 要練習ってやつだ。

 右腕に上手く力が入らない。


「どうだ? ちゃんと砕けたろ?」


 コクコクと頷く二人。


「あっ。でも体は大丈夫なんですか?」


 コゼットは心配性だな。

 俺はそれに胸を張って答える。


「右腕が上手く動きません」

「えぇっ!」


 コゼットに引っ張られ座らされる。

 ヒールをかけてくれたが当然効かないのでしばし休憩となった。


 飲み物を持ってきていたコゼットが三人分用意してくれる。


「ほんとにばがーんってなってましたね!」

「言っただろ? さてはコゼットも信じてくれてなかったんだな」

「えぇっ! い、いえ、信じてましたよ!」

「……私は疑ってた。……でも凄かった」


 ま、実際に見せたんだ。

 これで完全に信じてくれただろう。


「あ、そういえば黒の覇者は俺みたいな力は使えなかったのか?」


 休憩ついでに二人に質問する。

 コゼットはあの本をちゃんと読んだようだしな。

 アティナは分からんが、エルフなら何か知ってるかもしれない。


「うーん、私はあの本しか知らないですが、そんな事は書いてなかったと思いますよ」

「……知らない」


 都合よく情報は手に入らなかった。

 アティナの方は黒の覇者自体を知らないみたいな言い方だったな。

 よく考えるとこいつ教会とか行かなさそうだ。



------



 それから更に十日。

 相変わらず一人で特訓をした。

 調整も前よりは断然上手くなった。


 どうもこの力は体にも変化をもたらすようだ。

 まず、

 腕力が上がった。

 走るのが速くなった。

 これは限界突破(リミットブレイク)を使ってなくてもだ。


 力を使うのに慣れた、というより力に耐えられる身体が出来たという感じだ。

 これはずっと特訓を続けていたからだろうと思ってる。

 詳しくは分からないが多分合っているだろう。


 身体が強くなり耐えられるようになった。

 そうすると、それに伴って反動も少なくなる。

 当然だな。

 今ではある程度の出力なら使った後も普通に動けている。


 これも特訓していて分かった事だが、どうも一回目、二回目は全力の発動だったようだ。

 調整で出力を強くしていくと、どうもあの時の感覚に近くなる。

 使用後に動けなくなったりと反動が酷かったのはそのせいだろう。



 特訓中の環境にちょっとした変化もあった。


「ユウイチさん。そろそろお昼にしませんか?」


 コゼットが昼の鐘が鳴る頃に弁当を持ってやってくるようになった。

 作る時間も考えてくれているようでまだ温かい。

 ありがたい事だね。


 ちなみに今までは動けなくなる事もあったから弁当を持参していた。

 腕が動かなくて兵士のおっさんに「あーん」をして貰った事だってある。

 すげぇ嫌そうな顔をしてたのは今でも覚えている。


「いつも悪い。面倒だろうし無理はしなくていいからな」

「わたしがやりたくてやってる事ですから」


 笑顔でそんな事も言ってくれる。

 よく出来た子だ。


 頭を撫でてやると嬉しそうにすり寄ってくる。

 あぁ、この子の為にも稼がないと。

 今、毎日外に出てる無職みたいなもんだし。



 よし、そろそろ次の段階に移行させるとするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ