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十五話「新たな装備と昇格試験」

 アティナがうちに来てから一ヶ月が経った。


 あれからちょくちょくやって来ては飯を食っていく。

 急に来てもコゼットが慌てる様子もないからおかしいと思ったが、どうも帰る間際に次来る時を伝えているようだ。

 まぁ食料持って来る時もあるし、コゼットと仲良くやってるのなら構わないんだが。


 なるべくギルドに顔を出すようにしたらたまにコンラッドと会う。

 色々と話しをするが、未だに邪教徒のアジトは見つかっていないようだ。

 今は大人しくしているのか下っ端の人間も捕まらないとの事。


 俺は自分から探す気は無い。

 下手にアジトを発見して集団で襲われたらたまらんからな。



 今日は一人で都市を歩いている。

 ここ最近、割と効率良く討伐依頼をこなせていたから新しい装備を買いに行く所だ。

 ずっと同じ物を使っていたし、そろそろ買い換え時だろう。



 武具屋に着いた。

 中央都市に来た時に一度来ていたから迷わず来れた。

 この辺りでは冒険者や鍛冶師達が多く見られる。

 逆にこのエリアには用事がほとんどないであろう都市の住民は見かけない。


 中に入るとそこそこの数の冒険者が居た。

 外から見て分かっていたが、店は広い。

 あっちこっちに武器や防具が置いてある。

 種類も豊富だ。


 店の人に自分のランクを伝え、オススメの片手剣をいくつか見せてもらう。

 手にとってみてもよく分からない。

 攻撃力とか表示されたら便利なのだが、贅沢は言うまい。


「切れ味重視だとどれがいいですかね?」

「そうですね……。こちらはいかがでしょう?」


 そう言われ差し出されたのはゲイザーソードという名前の片手剣だった。

 そのまんまだがゲイザーというCランクの魔物が素材らしい。


 この魔物は一言で言うならデカイ一つ目。

 手足はないが触手が生えており、それを操って攻撃する。


 そう言われたがピンとこない。

 ゲームの記憶から探ろうとして脳内に検索をかけたがゼロ件だった。

 まぁ忘れているだけなんだろうが。


 手に持ってみたが、重さは問題ない。

 ショートソードより多少重いくらいだ。

 これなら十分片手で振れる。

 特殊効果はないそうだが、その分切れ味が良くなっていると説明された。


「では武器はこれを買います」

「ありがとうございます」


 特にこだわりもないし、悪くはなさそうだから武器はこれにするとしよう。

 


 お次は防具を見せてもらう。

 動き易いものを、と注文しいくつか用意してもらった。


 店の人は捕まえたままだ。

 防具も数が多くて一人では選べそうにないからな。


 部分的に金属を使用した鎧。

 今と似たような革の鎧。

 魔法を使うと言ったからか、ローブ系の防具も持ってきてくれた。


 が、ローブは要らんな。

 他に比べて防御力が低そうだし。

 アティナみたいに移動速度上昇の手段でもあればいいかもしれんが、接近戦もする俺にはどのみち不向きだ。

 軽くて動きやすそうなのは魅力なんだけどなぁ。


 どれにしようか悩んでいると、前方に白い服があるのが目に入った。

 それは用意してもらったものではなく少し離れた位置にあるものだ。


「あれは何ですか? あの白い服」

「あれはBランクの魔物、コカトリスの素材で作られた服ですね。

 服にしては少し重いですが、その分防御力は高くなってます」


 Bランクか。

 店員さんの話によると、石化させてくるが、それにさえ気をつければBランクでも戦いやすい部類の魔物だそうだ。

 俺もそろそろCランクに上がるし少しいい物を買っておくのも悪くないな。


 気になるお値段は……。

 流石にお高いが、これならギリギリ買える。


「なら防具はこれにします」

「ありがとうございます。ではあちらへ」


 会計を済ませて店を出る。


 ちなみに今まで着ていた防具はギルドで売る予定だ。

 中古品として安く他の冒険者に提供しているらしい。

 知らなかったが、初心者はギルドで装備を揃える事も多いんだとか。



------



 新しい装備に身を包み、いつもお世話になっている魔物と何度か戦った。


 まず実感したのは武器だ。

 切れ味が違う。

 掠っただけかと思ってもちゃんと斬れている。

 切断するにも今までより力を必要としない。

 いかにも攻撃力が上がったって感じがして気分が良かった。


 シルバーウルフやフロッグナイトで試すのは怖かったので、防具の性能はゴブリンで試してみた。

 わざと数発殴られてみたが、全くダメージが無かった。

 こっちが攻撃しないからか、ノリノリで殴り続けてたので首を撥ねて終わらせておいた。


 それからしばらくして、ギルドカードのゲージが溜まった。



------



 昇格試験。

 次のランクへ上がる為のテスト。

 格上の冒険者を相手に自身の持ち得る戦闘技術をぶつける。


 聞くところによるとそれはヒーラーも例外ではないらしく、回避能力や咄嗟の防御又は反撃能力を見られるとの事。

 大半は回復専門ではなく、普段の戦闘でも割と攻撃に参加しているらしい。

 攻撃が避けられず、とか勘が鈍って死んでしまいました、とかたまらんし当然と言えるだろう。

 適正により回復魔法しか出来ない者はいるが、そういった者は町で治療を行ったり別の仕事をしてるみたいだ。


 今回の試験は受験者が多く、待ち時間が長い。

 戦闘の場を二面用意してはいるが、それでも長い。

 まぁ普段見れない他の冒険者の戦いが見れるのは嬉しい事だけど。


 これまでの試験だとCランクの冒険者が戦闘役をやっていたが、戦闘役も審査員も共にBランクとなっている。

 受験者達は今までと同じように戦闘役にあしらわれつつも一生懸命に戦う。


 今、目の前で戦っているのは人族の戦闘役と獣人族の受験者だ。

 受験者はその身体能力を生かしてヒットアンドアウェイで戦っている。

 どれも防がれたり避けられたり攻撃自体を潰されたりしてはいるが他の受験者と比べれば頑張っている方だろう。


 と、偉そうな事を考えながら座っていると名前を呼ばれた。

 いつの間にか順番が回ってきたようだ。



 戦闘役と向かい合う。

 相手は人族の中年のおっさんだ。

 冒険者の癖に肌の色は白い。

 パンツレスリングに出てきそうな感じのムキムキな体をしている。


 今回の戦闘役には女性も居たがそれと当たらなくてホッとする。

 訓練用の武器とはいえ剣を向けるのは腰が引ける。

 かといってパンツレスリングに参加したかった訳でもないが。


 武器は何種類か用意されていて、ちょっと目移りしてしまった。

 が、試験で使う程ギャンブラーではない。

 安全安心の木剣を手にしている。

 防具も自分のではなく、試験用に支給された革鎧だ。


 しかしBランクともなると強そうだな。

 なんかこう、どう攻めていいのか分からない。

 これ手も足も出ないんじゃないか?

 いや、こういうのは実際にやってみると意外といけたりするのかもしれない。


「始めっ!」


 うぉっ!

 余計な事考えてる内に始まった!

 しょうがない。

 とにかく全力でぶつかるのみだ!


 まずは接近戦で戦う。

 犬コロ相手に鍛えた動きで何度も斬りかかる。

 避けられはしなかったが、全て防がれてしまう。


「くそっ!」


 悪態をつきながら一度下がる。

 接近戦がダメなら魔法だ。


「ファイアボール」


 中級魔法を覚えた辺りから一度に出せる数が一つ増えて四発になった。

 その全てを相手に向かって射出する。


「むっ! ストーンスキン」


 魔法!?

 あぁ人族でも使う人はそらいるよな。

 忘れがちだけどコゼットも使うし。


 おっさんも使い慣れてるのか魔法を操作して前方に砂の盾を作る。

 操作しなければ全身を覆う砂の鎧となる……はずだ。多分。


 相手にダメージが通った様子は見られない。

 砂の盾がこちらの魔法を完全に防いだのだろう。

 数と速度を重視した為、威力は全力ではなかったがちょっと悔しい。


「四つか……」

「ん?」


 次はどうしてやろうかと考えているとおっさんが何事か呟いた。

 四つってさっきのファイアボールか?


「……お前、中級使えるだろう?」


 おや、バレてる。

 となると最大数が増えたのは中級を覚えたからって事になるのか。

 勉強になった。

 おっさんと話してるとこっちの手の内を全部見透かされてしまいそうなので無視するが。


 再び接近戦で戦う。

 相変わらず防がれる。

 が、今度は下がると同時に全力フレイムピラーをお見舞いする。


「うぉ……っとあぶねぇ!」


 割といいタイミングだと思ったのに紙一重で避けられてしまう。

 ご丁寧に武器にストーンスキンを使って壊れないようにまでしている。

 何があぶねぇだ。割と余裕じゃねぇか。


「ふぅ……」


 しかし参った。

 ここまで攻撃が当たらないとは。

 こうなったら零距離ファイアブラストでもお見舞いしてやろうか。


 ぐっと足に力を入れ、走る準備をする。

 打ち合った限りあのおっさんとの力の勝負はしない方が賢明だ。

 魔物を一撃で倒すくらいの力でやっても普通に防がれたし。


 次は足も使って色んな角度から攻撃してやろう。

 一撃の威力はかなり落ちるだろうが当たらないよりはマシだ。

 そして隙を見つけてファイアブラストぶっ放してやる!


 よしっ! 気合充分!


「そこまでっ!」


 あら?

 横から声がする。

 この出鼻を挫かれた感は最初の昇格試験の時と同じ感じがするな。


「ありがとうございました」

「おう。お疲れさん」


 ま、終わったものはしょうがない。

 別に何がなんでも決着つけたい訳でもないしな。


 後はのんびり終わるのを待つとしよう。

 

 

------



 全員の試験も終わり、現在ギルドで結果発表を待っている。

 自分の番が終わってから人数を数えてみたが、二十三人の受験者が居た。

 さて、何人受かる事やら。


 ようやく掲示板に合格者が張り出される。

 自分では割と頑張った方だと思うが、この瞬間はやっぱドキドキするな。


 掲示板の前に行き、張り紙を確認する。


 違う。

 違う。

 違う。

 ……。

 ……。

 ……お、あったあった。

 俺の名前だ。

 あー良かった。

 

 さっそく張り紙を外して受付に持っていく。

 三回目ともなると慣れたもんであっという間に更新が終わる。

 橙色でCと刻まれたギルドカードが手元に戻ってきた。


「昇格おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 受付の人から祝福の言葉を貰いギルドを出る。



------



「ただいまー」

「あっ、おかえりなさい! どうでしたか?」


 家に帰るとコゼットがとてとてと歩いてきて出迎えてくれた。


「何とかCランクになれたよ」

「わぁっ! おめでとうございます!」


 自分の事に喜ぶコゼット。

 こういう反応をしてくれるとこっちまで嬉しくなるね。

 うむ、頭を撫でてやろう。


「ありがとな」

「えへへへ。ユウイチさん、今日の晩ご飯はいつもより頑張って作りますね!」


 合格祝いってやつか。

 たまには贅沢してもいいよな。


「そっか、なら期待してるよ」


 それから晩飯が出来るまでぼーっとしているとアティナがふらりとやってきた。

 そしていつもより豪華な食事をいつもよりたくさん食べて帰っていった。


 相変わらず自由だな、あいつ。



------



 Cランクになってから数日。

 邪教徒のアジトが発見されたとギルドで発表された。

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