表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

十話「Dランクの魔物」

 パールックに到着して一夜が明けた。


 今日はギルドでどんな依頼があるかを確認して、ついでにいくつか受けてみる予定だ。

 元々の目的でもある元の世界に帰る方法も教会で調べなきゃならないが、都合よくすぐに帰れる手段が見つかるとは思っていない。

 焦らずのんびりやっていく予定だ。


 昨日の内にギルドの場所は確認しておいたので迷わず到着する。

 ゲームの時の記憶と一致していたので見つけるのは容易だった。


 中に入って掲示板まで進む。

 採取、討伐、護衛と数多くの依頼が貼ってある。

 四つの国の中心だけあって種類が豊富だ。


 んーどれにするか。

 無難に討伐をやろうかな。

 いちいち受付にいかなくていい上に効率がいい。


 最も効率を一番に考えるのなら採取を受けた上で討伐なんだけど、採取してる最中で魔物と遭遇したくはないんだよなぁ。

 物によったら荷物が多くなるし面倒くさい。


 ひとしきりDランクの依頼を見て外へと出る。

 この辺りだとシルバーウルフ、フロッグナイト、ロックスネークが狙い目だと分かった。


 シルバーウルフは俺の防具にもその素材が使われている。

 生息地も一番近いみたいだし今日はこいつを狙ってみるとしよう。



 中央都市から三十分程歩いた所にやってきた。

 ここからは色んな種類の木や草が生い茂っている雑木林となっている。

 あまり光が遮られておらず割と明るい。


 頻繁に使われているのか、簡単にではあるが道が作られている。


 ついこの間ピンチになったからな。

 慎重さを忘れずに進もう。


 少し歩くとさっそく一匹目が見つかった。

 いや、一匹じゃない。二匹だった。


 くすんではいるが短めの銀色の毛。

 大きさは大型犬くらいだろうか。

 二匹並んで歩いている。


 幸いシルバーウルフはまだこちらには気付いていない。

 背後に回って奇襲で一匹を仕留めてやるか。


 相手から目を逸らさず、静かに移動する。

 落ち着けばやれる。

 大丈夫だ。


 ぱきっ。


 足元の細い木の枝がそんな音を立てる。


 あ。

 これ知ってる。

 お約束だ。


 スマートにアサシンっぽく倒したかったのに。


 一瞬目を逸らしてしまったシルバーウルフに再び目を向ける。

 スタンスを広く取り体勢を低くし、唸り声を上げている。


 仲良しかな。

 二匹とも同じ姿勢だ。


 バレたのなら仕方ない。

 剣を抜き真正面から突撃する。

 素早く相手に迫り一閃。


 しかし相手の方が速く動き避けられてしまう。

 流石Dランク。

 素早い動きだ。

 もう一度行くか? それとも待って迎撃するか?


 あ、魔法はどうだろう。

 ファイアボールで二匹を分断するとかよさげだ。


 相手に掌を向けて気付く……いや、木に当たったら燃えるんじゃね?

 火属性魔法はマズいかもしれん。


 いや、大事にならないように調整すればいいか。


「ファイアーボール!」


 木に当たらないように気をつけて一発だけ撃つ。

 二匹のシルバーウルフはお互いが距離を取るように左右に飛んで避けた。

 ファイアボールは射程距離の限界に達すると消滅した。

 雑木林への被害は無し。


 分断されたシルバーウルフの片方に接近し再度剣を振るう。

 先程の再現のように回避されるが、これは想定済みだ。

 

 これだけ距離が縮まっていればこっちが当たる。


「ファイアボール」


 掌から出たそれが相手の頭部を吹き飛ばす。


 消滅時に出る光の粒子を確認し、意識をもう一匹へと切り替える。


 残ったシルバーウルフに向き直ると、こちらに向かって走ってきていた。

 今度はこちらからは動かずに迎撃を試みる。


 飛び掛りに合わせて剣を薙ぐ。


 大きく開いた口に剣を滑らせそのまま力任せとも言える動きで胴体の中間まで切り裂く。

 はたから見れば不恰好なのだろうが、勝てれば良いのだ。


 声を上げる事もなく地面に落ちたシルバーウルフは数秒後光となり消えた。


 残った二つの魔晶石を拾い上げる。


 怪我する事なく勝てた。

 が、やっぱ強い。

 キングオブザコのゴブリンやワームとは全然違うわ。


 掲示板の一言に「シルバーウルフを倒したらアナタも一人前の冒険者!」と書かれていただけの事はある。


 それからしばらく歩くと道が二手に分かれていた。

 親切に看板が立てられているが、文字が擦れてほとんど読めない。

 かろうじて分かったのは右に行くとナントカ沼に行けるという事。


 フロッグナイトの居る場所も沼だったから、そこに繋がってるのかと予想するがちゃんと調べてないので今日は控えておこう。


 大きく場所を変える事は控え、周辺を探索する。


 探し始めて数分でポツンと立っているシルバーウルフを発見した。

 既に気付かれているようだが先程既に二匹倒している。

 油断さえしなければ問題ないだろう。


 ある程度距離を詰めると相手も臨戦態勢となる。

 更に近づくとこちらに向かい走ってきた。


 先程と同じ様に迎撃しようとしたが、直前で横に回られた。

 もう少し引き付けておけば良かったか。

 一瞬反応が遅れると飛び掛りながら鋭い爪を振りかざしてきたので回避を試みるが、シルバーウルフの攻撃が頬に掠る。


 回避で体勢を崩したまま苦し紛れに剣を振るが既に距離を取られてこちらの攻撃は当たらなかった。


 さっきより強い気がする。

 個体差か……?

 それとも魔法使ってないからか?


 自問自答を中断し、目を動かし回りを見渡す。

 少なくとも見える範囲には他の魔物は居ない。


 それだけ確認し集中する。

 相手だけを見る。

 一挙一動を見逃さないように。


 今度はこちらから打って出る。

 下から上に切り上げるが、ギリギリで回避される。


 離れようとしているシルバーウルフに追従する。

 集中したお陰なのか、相手の動きに反応出来ている。


 二撃目、三撃目と振るった剣は確実なダメージを与える事が出来た。

 動きが著しく悪くなったシルバーウルフにトドメを刺す。


「ふぅっ……」


 光の粒子を見ながら剣を仕舞いながら大きく息を吐く。


 あー疲れた。

 精神的に。

 とりあえず一回帰るか。


 歩いてきた道をそのまま戻り中央都市へと帰る。

 コゼットも昼がまだなら一緒に食べようと思い、宿へ入る。


「ただいまー。コゼット、昼食べた?」

「あっ、おかえりなさ……その怪我どうしたんですかっ!?」


 うぉっ、なんだ?

 怪我?

 ……あぁ、そういえば掠った傷がそのままか。


「ちょっと避け切れなかったんだよ。いやー魔物も必死だものね」


 そう。

 相手も必死なんだからしょうがない。


「何言ってるんですか。早くこっち、こっち来て下さいっ!」


 イストを出てから勢いがついてきたなこの子。

 言われた通りにそばへ行く。


「えーっと、良かった……酷くはないですね」


 俺の傷を確認したコゼットはひとまず安心したような声を出す。


「だから掠っただけだって」

「いいから大人しくしてて下さい。ヒール!」


 とっくに痛みなんて無かったが、ヒールのお陰で傷が消える。


「ありがとうコゼット」

「次からはちゃんと回復薬使って下さいね」

「あぁ、分かった分かった」


 あんな掠り傷程度で回復薬なんて勿体無くて使えないが了承しておく。

 本当に危ない時にCT中だったら死んじゃうしな。


 その後はコゼットと一緒に昼飯を食べに行った。

 食堂に着きメニューを見る。

 相変わらず元の世界と大差ないものばかりだ。


「ユウイチさん、お昼からはどうするんですか?」

「んー、午前中と同じ場所で狩りしようかと思ってる」

「そうですか。暗くなる前には帰って来て下さいね」

「分かった。晩飯には間に合うように帰るよ」


 コゼットとそんな会話をしながら食事をして、再び狩場へと戻った。



 シルバーウルフの攻撃をかわしながら足を斬りつける。

 相手の機動力を奪った所でトドメの一撃を確実に当て、倒す。


 午前の分も合わせてまだ十匹程度しか狩っていないが慣れてきた。


 この世界だと天才じゃなかろうかと思い上がりそうになる。

 が、ブラッドオークにボッコされた記憶がそれを阻止。


 ミスったら文字通り死ぬからな。

 増長はしない。絶対しない。


 夕方までひたすらシルバーウルフと戦闘し続け、キリのいい所で切り上げる。

 他の冒険者がこまめに討伐してるのか、中央都市までの帰り道は魔物と遭遇する事はなく帰宅出来た

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ