外伝 - 続・問題児たちが別世界へ行くようですよ?- プロローグ
パラレル第3弾。
許可は取ったとはいえ、色々はっちゃけますのでご注意ください。
・元ネタ:電気羊の異世界プロトコル(作者:みかぜ―様)
http://ncode.syosetu.com/n3973bm/
『EGF』というゲームがある。
“Ubiquitous Platform for Augmented/Virtual Reality”――UPARを用い、VR空間へ構築された異世界『エヴァーガーデン』を冒険する、VR-MMORPGの一時代を築き上げた金字塔――正式名称、エヴァーグリーン・ファンタジア。
その世界への玄関口ともいえるロビーは今、お祭りの様相を呈していた。
「……凄いことになってるな」
目の前に溢れる人、人、人――まるでラッシュ時の満員電車のような光景だ。
唖然としながら呟く美形の青年の名は、伊達一護。
EGFの世界ではプレイヤー名:一護として活動する、ギルド『キズナ』のマスターである。
「いくらなんでも凄すぎないか?」
問いかけは背後。一護の後へ続く、『キズナ』のメンバーへ向けられたものだった。
「あはは。本当にお祭りだね」
『雪姫』――突出した治癒術師にして『キズナ』参謀。
プレイヤー名:雪音。
「お祭りなら屋台とか欲しいな~。なんかお腹減っちゃったよ~」
『人形卿』――その腕一つで軍勢を造り上げるグラマラス人形師。
プレイヤー名:風見。
「みーはいつもでしょ。にしても壮観壮観。EGFってやっぱり人気なんだにゃー」
『機動弓兵』――戦場を縦横無尽に駆け巡る野人娘。
プレイヤー名:葵。
「人気なのはいいけどよ。ここまで来るとうざってぇな」
『戦鬼』――『キズナ』最強にしてワールド有数の戦狂い。
プレイヤー名:鷹。
「ですねぇ。凄いゴミゴミしてますし……繊細な僕には地獄ですよ。帰っていいですか?」
一護のフェロー。
戦場では堅牢鉄壁、平時には怠惰で不精な従者:ゼロ。
「……(ふるふる」
雪音のフェロー。
恥ずかしがり屋の末妹であり、『キズナ』の最大火力:小雪。
「こらこら、ゼロ。あまり小雪を困らせるのは感心しませんよ」
風見のフェロー。
『人形卿』の忠実な助手にして、フェロー組の長男役:イカヅチ。
「そうだな。前々から思っていたが、ゼロには影の意識が足りなすぎる」
葵のフェロー。
探索から暗殺までこなす万能忍者:アカ。
「アカはちょっと堅すぎる気もするっすけど、ゼロが緊張感ないのは同意っす!」
鷹のフェロー。
天真爛漫に鷹を師匠と慕う格闘娘:レイ。
一護、雪音、風見、葵、鷹、ゼロ、小雪、イカヅチ、アカ、レイ――以上がギルド『キズナ』のメンバー構成だった。
「……なんか視線を感じるな」
「仕方ないですよ、ご主人。僕らが一堂に会する機会なんて、2日に1回くらいですし」
「(華麗にスルー)まぁあたしらって注目株だし?」
「だな。まー、目立つのは嫌いじゃねぇぜ。よく見りゃ、有名人もそこそこいるしよ」
「ううう……小雪……皆さんが冷たいですよぉ……」
「……(なでなで」
小雪に癒される自分のフェローを見ながら、一護はため息をつく。
別にゼロを情けなく思ったからではない。いや、そういう気持ちがないとは言わないが――それよりも、葵や鷹の言に一理あると思ったからだ。
(……ウチもなんだかんだ注目されてるからなぁ)
『キズナ』の構成員は僅かに10名。
規模としては完全に弱小ながら、戦歴は大手にすら引けを取らない異色のギルド。個々人のポテンシャルはもとより、突出して高い連携から生み出される強大な戦闘力はワールド最強ではないか――などという過分な評価を貰ってしまっているのだ。
(『風見鶏のとまりぎ』は当然として、『インフィニティ』に『闇に呑まれてEGF』、『戦真連隊』……『トマホーク』……俺らよりよっぽどの連中もいるのになぁ)
心の中で大手ギルドを指折り数え、周囲へ視線を向ける。
自分達と同じく彼らもここへ来ているだろう。見つけたからといってどうするわけでもないが、とりあえずそれらの面々を一護は探そうとして――。
《お集まりの皆様。長らくお待たせいたしました》
「お」
ロビーへ響き渡った声に探索を中断した。
周囲も同じである。あれほど賑やかだったロビーは一気に静まり返った。一言一句、システムアナウンスを聞き漏らさないよう、訓練された兵達が耳をそばたてる。
《空をごらんください》
たった一言で千を超える連中が空を見上げたのは、最早魔法のようですらあった。
苦笑しながら一護も空を――フォルセニア大陸の蒼穹を仰ぎ見る。
現実世界ではありえない原色の、果てのない青空はしかし、常日頃と様子を異にしていた。
蒼穹を遮るウィンドウ。
もっと言えば、そこに表示されているのは文字だった。
一護達が――否、無数のプレイヤーとフェローが集まる原因となった、クエストの名。
《ただいまより特殊クエスト:唯一つの神宝》
その響きに心が震えた。その揺らぎが自分のものなのか、ギルドメンバーのものなのか、あるいは装備品から流れ込んでくる雪音のものなのか――いいや。この鼓動は、歓喜は、そんな小さなものじゃない。
この場に集った連中、その全ての鼓動だろう。
《オペレーション開始します》
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
無機質なシステムアナウンスが告げた瞬間に轟く叫びが、そう告げていた。




