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お兄ちゃんのペットな彼女

 とある休日。

 毎日顔をつき合わせてはいるものの、幼馴染が休日に全員揃っているのが久々(二週間ぶり)ということもあって、伊達家ではお泊まり会が開かれていた。


「なんかさー。緊張感が足りないんだよねー」


 夕飯を終えてからのトランプの最中、そうのたまったのは神楽葵である。


 自慢の青色の髪に、同じく大きな藍色の瞳。健康的な肉体をタイトジーンズと、ストール付のタイトニットワンピースに包み込み、幼馴染のムードメーカーが唇を尖らせた。


「なにがだよ?」


 葵へと聞き返したのは月都鷹。


 天に反逆する金の短髪と、知り合いでも直視できない鋭い眼光――185cmを超える肉体を徹底的に練磨した同年代最強の格闘家にして幼馴染一の武闘派は、しかし葵の手札から抜き取ったカードを見て顔をしかめた。どうもババだったらしい。


「あー、クソ。ついてねぇ」

「運がなかったな」


 その鷹からカードを抜くため、彼――伊達一護は手を伸ばした。


 端正な顔立ちと人なつっこさが同居した青年である。纏っている穏やかな雰囲気やスリムな体型と合わさって、外見的にはかなりの美形と言えた。それなりの格好で街で歩いていれば、女性の目は釘付けになるだろう。


「よし、あがり」


 鷹と逆に一護は運が良かった。

 引いたカードは見事にペア、最後の一枚を場に捨てて、ふうと息をつく。


「お疲れ様。お兄ちゃん」


 そんなねぎらいの声は、トップであがっていた妹、伊達雪音からだった。


 落ち着いた色の綺麗な茶髪、滅多にいないレベルの愛らしい容姿。一護へ向けられた微笑みは少々幼かったが、それが逆に全幅の愛情と信頼を遺憾なく表現している。白いロングセーターとその上に羽織ったカーディガン、ふわふわとしたフレアスカートが、にこにこと微笑む雪音によく似合っていた。


「おう。ワンツーフィニッシュだな」

「うんっ、えへへ♪」

「いよっしゃー! あっがりぃー!」


 ご満悦の妹と戯れていたら、葵が雄叫びをあげる。

 どうやら三抜け、ビリ争いから上手くすり抜けたようだ。


「これで後は鷹と風見か」


 真剣な表情で鷹のカードを選ぶ少女――八重葉風見へ一護は視線を向ける。


 桃色のロングストレートの髪を留める、トレードマークの馬鹿でかいリボン。幼馴染随一のスタイルをだぼだぼのトップスとハーフパンツへ包み込んだポンコツ娘が、覚悟を決めて一枚を引き抜いた。


「む~!」

「ハズレか」

「みーだしね」

「あはは。風見ちゃん、がんばれ~」


 解りやすい奴である。これで鷹が有利、正解を引けば即終了だ。


「みゅ~ん、みゅ~ん、みゅ~ん、かざみゅ~ん……」

「……あんだよそれ」

「呪い~」

「やめろバカ。ほいよっと……お、あがりだ」

「あ~!? 鷹ちゃんひどい~! まだ途中だったのに~!」


 ぶーたれる風見だったが、誰も取り合わなかった。

 これでめでたく順位確定、五戦連続で風見がビリである。


「で、次いくか? それとも別のにすっか?」

「ババ抜きもうやだ~! 勝てない~!」

「まぁ結構長くやってたしな……」

「他のにする? ONOとかもあるけど……」

「ストーップ!」


 次は何で遊ぶかについて真剣に討議していると、あいや待たれいと葵が割り込んできた。居並ぶ幼馴染を睥睨して、彼女はため息をつく。


「ほら、緊張感薄いっしょ? やっぱ何かないとダメだと思うんだょ」

「……何かって何だよ?」

「よくぞ聞いてくれましたぁ!」

「ロクでもない予感しかしない……」


 不審者を見る目にもめげず、どころか喜色満面で葵は何やら箱を取り出した。

 三十センチくらいの正方形の箱を、計三つ。商店街のくじ引きで使うような、そんなボックスである。


「罰ゲーム名作セット~そんな罰で大丈夫か~!!!!!」

「…………」


 一人ハイテンションの葵だったが、他は全員が黙り込んだ。ネーミングセンスにも色々言いたいことはあったが、それよりも何よりも、なんだそりゃというのが正直な感想である。


「説明しまーす」


 だが、その程度では暴走娘は止まらなかった。

 白けた空気もどこ吹く風、無駄に元気に快活に説明を始める。


「一つ目と二つ目の箱には番号、三つ目には罰ゲームの内容! 全部引くと、“何番が何番に何をする”って文章が出来るから、それを罰ゲームに! 種類はなんと百以上!」

「わ~ぱちぱちぱち~」

「やめろ風見。葵が調子に乗る」

「つか、ドヤ顔がうぜぇな……」

「百以上……葵ちゃん、相変わらず凝り性だね」

「ええい、この程度じゃくじけないぞあたしはぁ!」


 ここまで反応が芳しくないと、若干悔しいらしい。

 とはいえ引き下がる様子がコンマ一ミリもない辺りが、葵の葵たる由縁なのだが。


「さ、そんじゃトランプやろっか。順位が下の方が罰ゲームに当たる可能性は高くなってるからから、全員奮起するよーに!」

「え? ビリの方が当たりやすくなるの~?」

「あったりまえじゃん! そうじゃないと緊張感ないでしょ! 一つ目の箱にはビリの札が、二つ目の箱にはトップの札が多めにはいっているのだー!(ドヤァ」

「あ、結局やるんだ……」

「諦めろ雪音。こうなった葵は止まらない」

「試しに一回くらいならいいんじゃねぇか? 確かに気合は入るしよ」

「うんうん」


 幼馴染も半分諦め、半分興味といった感じである。

 とりあえずゲーム再開。スピードアップのため、戦いはババ抜きからポーカーへ移った。


「ほい、スリーカード」

「チッ。ワンペアかよ」

「ツーペアだ」

「お兄ちゃんと一緒、ツーペア♪」

「うう……何もない~……」


 伊達兄妹は数字の大きさで比較して、結果は――葵、一護、雪音、鷹、風見の順である。


「さてさて、そんじゃあたしが引きますねっと!」


 トップの葵は喜び勇んで箱へと手を突っ込んだ。

 気合一閃、ほいほいほいと三つの箱から順当にカードを取り出す。


 果たして、その罰ゲームの内容とは――。


「えーっと……“4番(鷹)が1番(葵)の肩を揉む”だって」

「わ~い!」

「ビリじゃねぇのに俺かよ……」

「運がなかったですね、鷹さん」

「……まぁ罰ゲームとしては順当なレベルか」


 鷹は不運だったが、良心的な内容に少しだけ安心した。

 元々パーティーを盛り上げるためのアイテムというのもあって、このくらいの罰なら緊張感があっていいかもしれない。


「ほらほら、でっかいの。さっさと揉みやがりなさい」

「るっせーよ」


 しぶしぶと鷹が葵の肩を揉んだ。その間に気を利かせた雪音がトランプをシャッフル、再び全員へと配分してゆく。


「えらいぞ、雪音」

「えへへ。ありがと、お兄ちゃん♪」


 よく出来た妹だ。


「さ、そんじゃ次いってみよー!」


 しばらくすると満足した葵がゲーム再開を告げた。

 先ほどより若干、引き締まった雰囲気の中でポーカーが進み――雪音、鷹、風見、葵、一護との結果になる。


「それじゃあ引くね……えいっ」


 そして気になる罰ゲーム。

 今回ビリの一護が当たる確率はかなり高く、内心相当ドキドキしていたのだが――。


「えっと……“5番(一護)が1番(雪音)の服を脱がす” ……えええええええええ!?」


 雪音が引き当てた結果は、予想の遥か斜め上をいっていた。


「うわー……えっろいの引いたね、ゆっき……」

「……そんなん入ってんのかよ。これ」

「おお~。大人のカードだね~」

「いやいやいやいや、待てこれ! この罰ゲーム色々まずくないのか!?」


 前言撤回。なんだこのアイテムは。確かに罰だけども!


「お、お兄ちゃん……ど……どうぞ」

「って準備万端!?」


 が、しかし雪音を含めた他のメンバーは別に構わないらしい。一護の文句は一切黙殺し、やんややんやとはやし立てるだけだ。


 逃げ道は、ない。

 なら淡々と、さっさと終わらせるのみ。


「……オーケー。解った。脱がすぞ、雪音」

「うん……♪」


 何で嬉しそうなんだお前はぁぁぁぁぁ!!!


 真っ赤な雪音は当然として、一護もタコみたいになっているだろう。

 カーディガンを脱いでもセーターがあるだけなのに、可愛い妹の表情を見ているととてもそうは思えない。


「お兄ちゃん……」


 上気した頬。潤んだ瞳。美しい唇。愛らしい顔には艶が加わって、なんだかありえないくらい色っぽいぞマイシスター……!


「っ、はい終わり!」


 鋼の精神力でカーディガンを脱がせて、一護は勢いよく宣言した。


 あー、やばい。

 淡々と終わらせるつもりだったのに、心臓バクバクいってるよ。


「なんか微妙に面白くないけど……まぁゲームだし、仕方ないか。よし、次いくょー!」

「お~!」

「お~♪」

「……これ、やべぇんじゃねぇのか。一護」

「ああ……」


 一護の痴態を見た女衆はとても元気になったが、男衆は嫌な予感をひしひしと感じていた。この罰ゲームボックス、侮れない。下位になるのはかなりのリスクを伴う。


(負けられねぇ!)


 その気合が通じたのか解らなかったが、今度のゲームは風見、一護、葵、雪音、鷹の順位で終わった。


 二番でほっと一息、この位置ならまず当たりはしないだろう。


「よ~し、引くぞ~! 雪音ちゃんが私に料理を作るってのがいいな~♪」


 罰ゲームを引くのは風見。


 だが、欲望駄々漏れの願いをピンポイントに引けるはずも無く。


「……うわ」

「……あはは」

「面白そー!」


 彼女が当てたのは“5番(鷹)が4番(雪音)の物真似をする”というものだった。


「…………用事思い出した」


 顔を引きつらせた鷹が立ち上がろうとした瞬間、葵が神速で押さえ込む。その眼は爛々と輝き、新しい玩具を逃がさないという意思が読み取れた。


「諦めろ鷹。俺だって恥ずかしかったんだ」

「テメェは役得だろうが! 俺のは誰が得すんだよ!」


 至極もっともだったが、罰は罰。

 幼馴染の中なのに完全アウェーという新境地の中、それでも暫く葛藤していた鷹は、最後には覚悟を決めたようだ。


 死地へ赴く戦士のような表情で、震えながら口を開く。


「お、お、お、お……」

「お?」

「お兄ちゃん、大好き♪」←(裏声


 ……

 …………

 ………………うわぁ。


 どうしよう。

 凄い面白いんだけど、鷹が不憫すぎて笑えない。


 周りも同意見のようだった。苦笑いの雪音、ぽかんとした風見、そして震えている葵――。


「あははははははははははははははははははは!!!!」


 否。一人だけ思い切り楽しんでいる奴がいた。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!! ひーっ、ひーっ、はー、ふー、っ、あ、やば、やばいよ! お腹痛い!」


 葵さんご満悦である。

 勇者は腹を抱えてごろごろ転がりながら、床をバシバシ叩いていた。絵に描いたような爆笑っぷりである。


「あははははははははは!!! あははははははははは! あの、あ、あのでっかいのが! お兄ちゃん、大好き、だ、だって、あはははははははははは!! ばーっか!!! あはははははははは!!!!」

「………ッ!! やってられっかぁー!!!!」

「ふにゃ!?」

「あぶなーい!」

「物に当たるなよ!?」


 キレた鷹が全力で拳を叩きつけると、テーブルが真っ二つに割れた。

 びっくりした雪音が一護へ飛びつき、風見は端っこに載っていたお菓子を護るためにダイビング。葵は鷹の怒気にも動じず笑い続けているし、なんだこのカオス。


「ひー、はー、はー……あー、面白かった♪ 本当はダメ出しして何回もやらせるつもりだったけど、予想以上だったからいいにしてあげるょ」


 どうしよう。葵のゲスっぷりが止まらない。


「死ね。お前もう、ホント死ね」

「やーだよーだ。ってゆーか、罰ゲームであたしに当たるのはお門違いだょ」


 ふんふーん、と上機嫌で次のゲームに進む葵。


 だが神様はちゃんと見ている。

 次のゲームで、葵へと天罰が下った。


 即ち、“4番(葵)が3番(鷹)に殴られる”という結果に。


「いよっしゃあー!!」

「あぐ!?」


 ごつん、という鈍い音。

 木製テーブルを粉砕する拳に流石の葵も悲鳴を上げたが、悔しそうに俯いたのは鷹の方である。


「……クソ。咄嗟に手ぇ出ちまった……もっと本気でぶん殴るつもりだったのに……」

「あたしに何の恨みが!?」


 すげぇ。さっきの顛末をもう忘れたのかコイツ。


 ともあれ、罰ゲーム効果というべきか――先ほどまでよりもトランプは盛り上がっていた。当人達の葛藤やダメージ、犠牲テーブルはともかく、確かに楽しくはある。


 一番大事なのは己に被害が出ていないことだった。先ほどの脱衣も一護自身に被害はなかったし。


(たまにはいいかもな。罰ゲーム)


 ――そう思ったのが悪かったとは考えたくないが。


 今日一番の衝撃が、その後にやってきた。

 しばらくは罰ゲームも穏やかだったので油断したと言うしかないが――ともあれ、本日初のトップを一護は勝ち取って、ボックスへと手を突っ込む。


(さて、何が出るかね?)


 勝者の優越感とおみくじにも似たドキドキ感。


 鼻歌まで口ずさみそうな一護だったが、罰ゲームを引いた瞬間、衝撃で固まった。


 曰く。

 “4番(雪音)が1番(一護)のペットになる”という罰ゲームに。


「なんだこれ!?」

「あ。当たりカードだ」

「当たりとかあんの!?」

「ペットって……あのペット~?」

「他にねぇだろ」

「ど、どうしよう……」


 気づけば雪音がおろおろしていた。

 こんな訳の解らない罰でもこなそうとしているようだが、指令自体が意味不明すぎる。


 あたふたする姿が新鮮だから放置するけどな!


「なんかこう、猫とか犬とかそれっぽいことしたら?」


 葵のアドバイスも雑だった。当たりカードとか言っていたのに丸投げすぎる。


「それっぽいこと……」


 だがそれでもアドバイスには違いない。

 これまでの経緯からリタイアは認めていられなかった。雪音には他に選択の余地はないのである。


(ってか、意味不明ならどんな仕草してもアリだしな)


 そういうことなら確かに当たりカードかもしれん。


 とはいえ、生真面目な妹はそこまで考えているわけではないだろう。

 どういう結論に至るかは解らないが、兄として温かく見守ってやろう――。


「………………………………………………にゃん?」


 考えに考え抜いた挙句、雪音は恥ずかしそうに首をかしげた。


 言葉にすればそれだけの仕草だが、決してそれだけではない。


 がんばって丸めた手とか、桜色に染まった頬とか。潤んだ瞳の上目遣いとか!


「くっ……!?」

「ッ……やべぇ……」


 温かく見守るなんて出来るはずが無かった。


 とにかく尋常じゃなく愛らしくてやばい俺の妹が可愛すぎて兄貴が有頂天(混乱中。


「……鷹ちゃんも一護も、どうしたのかな~?」

「バカだから仕方ないょ。しっかし、ゆっきーずるいなぁ……こーゆーのって普通は笑えるんだろうけど、むやみやたらに可愛い……」


 全力で葵に同意したい。

 それくらいに可愛かった。他の単語なんて思いつかん。


「……にゃ♪」


 しかし、本当の試練はここからだった。

 一護が気に入ったのを悟った雪音が、すりすりと擦り寄ってくる。猫のつもりか、わざわざ四つんばいになって近づいてくる姿は酷く妖艶だった。


「やめろ雪音……それ以上はやばい……」

「にゃ~?」


 赤くなった頬は羞恥か、それとも喜びによるものか。

 いたずらっ子の笑顔を至近距離で直視して、流石の一護も揺らぐ。


(……薄々思ってたけど、俺の妹って世界一可愛いんじゃないか?)


 倫理とか道徳とか正直どうでもいいかもしれない。

 もうこの可愛さが俺のものになるのなら、それだけで――。


「いいいいいいつまでやってんのさあああああああああ!!!」

「はうあ!?」

「にゃー!?」


 現世から離れかけていた一護の魂を引き止めたのは、後頭部への衝撃。

 ぶっちゃけると、葵渾身のツッコミ(裏拳)だった。凄まじい威力で我は取り戻せたものの、代わりに顔面を地面へぶつける。


 ……超痛ぇ。


「ふん! 自業自得だょ!」

「今回ばっかは同情出来ねぇわな」

「見えなかった……気づいたら一護が吹っ飛んでたよ……超能力?」

「にゃ、にゃ、にゃ?」

「あ、ああ……大丈夫だ。雪音……」


 っていうか徹底しすぎだ。心配まで猫語かい。


「あーもう! さっさと次いくよ、次!」


 そんな様子が癇に障ったのか、葵がイライラと叫ぶ。

 こうなった台風娘には逆らわない方がいいというのが幼馴染の公式見解なのだが――。


「……にゃ~」


 あくまで雪音は傍を離れようとしなかった。

 困ったように一護を見上げ、うるうると瞳を潤ませる(超可愛い。


「にゃ、にゃ~、にゃ」

「雪音ちゃん、次の勝負、始まるよ~?」

「……徹底しすぎだろ。どんだけやる気なんだおい……」

「いくらなんでもそれは……」


 頑なな様子に幼馴染達も苦笑い。


 否定的なムードが漂う中、しかし一護だけは違っていた。


「ふんふん……猫はゲームに参加できませんって?」

「なんでわかんの!?」

「いや、なんとなく……」

「にゃ♪」


 正確な一護の推理に、雪音が顔を綻ばせる。

 アクセント、視線の動き、ジェスチャー、その他諸々があればこの程度は造作も無かった。


「何なのこの兄妹……流石のあたしもちょっと引くレベルだょ……」

「失礼な」


 このくらい、十何年も兄妹やってれば理解できるだろう!


「……罰ゲームどうすんのさ」

「にゃ~にゃ!」

「ん? 無条件で五番でいいのか?」

「にゃ♪」

「……兄貴は淀みなく通訳してるし、ゆっきは少しでも甘える時間稼ごうとしてるし。もうダメだこの兄妹……」

「……まぁ別にいいんじゃねぇか? 雪音ちゃんが自動で五番なら、俺らが罰喰らう可能性は減るんだしよ」

「お~。それはいいかもね~」

「みーはともかく、でっかいのは猫ゆっきをもうちょい見てたいだけでしょーが!!」

「ンなことねぇよ。バーカ」


 鷹。そこで目を逸らすんじゃない。

 そして葵。猫ゆっきじゃなくて、雪音にゃんだ。


「にゃ~♪」


 当の本人は、もう完全に開き直っていた。

 言葉どころか本物の猫よろしく、あぐらをかいた一護に膝枕をしてもらう始末――甘えん坊猫、雪音にゃん、爆☆誕である。


「あー、もう! 絶対どかしてやるううううう!」


 力ずくでどかさないのは葵の意地か。

 ともあれ、幼馴染の咆哮で次のゲームが始まった。


 夜は長い。

 ここからどうなるかは解らないが――まぁきっと、なるようになるのだろう。



 ……

 …………

 ………………なお、余談だが。


 この後も何人かの精神にダメージを与え、結局罰ゲームボックスは封印された。

 ただし割と頻繁に解放され、その度に面白恥ずかしい事件を起こすことになるのだが――。


 それはまた別の話。

 まったくの、余談である。

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