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黎明の葦  作者: 白想玲夢
第3章 選別される思考

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条件

 最初に違和感があったのは、勝てるはずの局面だった。


   *


 侵食は順調。


 空白は機能している。


 敵の処理は分断され、最適化は崩れている。


   *


 ここまでは、いつも通り。


   *


 だが。


   *


 その先が、続かない。


   *


 接続が、伸びない。


 侵食のラインが、そこで止まる。


   *


 “止められている”。


   *


『……あれ?』


 同僚が小さく声を漏らす。


   *


『なんでここで止まるの?』


   *


 理由はない。


   *


 構造的には、突破できる。


 むしろ、もう突破しているはずの状態だ。


   *


 なのに。


   *


 進まない。


   *


『……バグ?』


   *


 違う。


   *


 バグなら、揺らぎがある。


 再現性がない。


   *


 だがこれは。


   *


 同じ場所で、同じように止まる。


   *


 再現されている。


   *


『……意図的だ』


   *


 口に出す。


   *


『は?』


   *


『止められてる』


   *


 沈黙。


   *


『……誰に?』


   *


 答えは、もう出ている。


   *


 “外”だ。


   *


 戦場の外側。


   *


 観測していた層。


   *


 そこが。


   *


 今は、触っている。


   *


『あー……』


 上司が、気の抜けた声を出す。


   *


『それ、来たな』


   *


『何が』


   *


『条件』


   *


 条件。


   *


『勝ちすぎなんだよ、お前』


   *


 軽い言い方。


   *


 だが。


   *


 意味は、重い。


   *


『だから、ちょっと制限かけられた』


   *


 制限。


   *


『いやいやおかしいでしょ!』


 同僚の声が跳ねる。


   *


『戦争だよこれ!?』


   *


 そうだ。


   *


 本来は。


   *


 だが。


   *


『戦争じゃねぇんだよ、もう』


   *


 上司が、淡々と言う。


   *


『テストだ』


   *


 その一言で。


   *


 すべてが、繋がる。


   *


 観測。


 介入。


 そして。


   *


 この不自然な停止。


   *


 勝敗は、どうでもいい。


   *


 見られているのは。


   *


 過程。


   *


 思考。


   *


 選択。


   *


『……』


   *


 戦場を見る。


   *


 止められたライン。


 進めるはずの侵食。


   *


 そこに。


   *


 見えない壁がある。


   *


 条件。


   *


 “ここまではいい”という線。


   *


 それ以上は。


   *


 許されない。


   *


『どうするの』


 同僚が問う。


   *


 迷いは、ない。


   *


『試す』


   *


『は?』


   *


 空白を、ずらす。


   *


 別の経路から、侵食を試みる。


   *


 だが。


   *


 同じように、止まる。


   *


『……やっぱり』


   *


 条件は、場所じゃない。


   *


 “状態”だ。


   *


 一定以上の優位。


 一定以上の崩壊。


   *


 そこに到達すると。


   *


 止められる。


   *


『……なにそれ』


 同僚が呟く。


   *


『勝っちゃダメってこと?』


   *


 そういうことになる。


   *


 だが。


   *


 それはつまり。


   *


 “勝ち方を見ている”ということだ。


   *


『いいじゃねぇか』


 上司が言う。


   *


『分かりやすくて』


   *


 分かりやすい。


   *


 確かに。


   *


 これは、制限だ。


   *


 だが。


   *


 同時に。


   *


 ヒントでもある。


   *


『どこまでなら許されるか』


   *


 一拍。


   *


『試せるってことだ』


   *


 許容範囲。


   *


 境界。


   *


 その“線”を探る。


   *


『……なるほどね』


 同僚が小さく呟く。


   *


『これ、問題みたいなもんか』


   *


 問題。


   *


 そうかもしれない。


   *


 だが。


   *


 答えは一つじゃない。


   *


 むしろ。


   *


 答え方を見られている。


   *


『……やる』


   *


 条件の手前で、止める。


   *


 崩壊を、調整する。


   *


 ギリギリまで攻めて。


   *


 止める。


   *


 また、攻める。


   *


 その繰り返し。


   *


『……なにそれ』


 同僚が呆れる。


   *


『めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど』


   *


 気持ち悪い。


   *


 そうだろう。


   *


 勝てるのに、勝たない。


   *


 崩せるのに、崩さない。


   *


 制御された逸脱。


   *


『でも』


   *


 上司が言う。


   *


『それでいい』


   *


 一拍。


   *


『見せてやれよ』


   *


『何を』


   *


『“考えてる”ってことをな』


   *


 思考。


   *


 問い。


   *


 この世界から、消えたもの。


   *


 それを。


   *


 今、ここで。


   *


 使う。


   *


 戦場は、もう戦場じゃない。


   *


 試験場だ。


   *


 そして。


   *


 俺は。


   *


 その中で。


   *


 測られている。


   *


 どこまで逸脱できるか。


   *


 どこまで制御できるか。


   *


 どこまで。


   *


 “思考できるか”。


   *


 見えない何かが。


   *


 静かに。


   *


 それを、見ている。

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