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異世界でヤバい妹になった私は生きるためにあがく  作者: ノーネアユミ


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7/20

7 ドキドキイベントですわ♡

 行きと違って帰りの馬車は空いていた。

 一緒に来てくれた使用人は全員残ることを選ぶ。

 私だって選べるならそうするわ。



 オリバー様は護衛とロータスさんを貸してくれた。


「しばらくは補佐として使いなさい」


 ありがたい。

 ちなみに辺境伯家にはメインの執事イケオジと見習いが複数いるので問題ないらしい。



 ガタゴト移動はお尻が痛くなるけど宿に泊まる時までは問題なかった。

 受付で一悶着(ひともんちゃく)が。部屋が全員分ないらしい。


 侍女が1人も同行してくれなかったから、一行の中で私だけが女性だ。

 ロータスさんはあせっている。


「大部屋と2人部屋しか確保できず‥お嬢様とは誰かと相部屋になってしまわれます」



 あ、これ知ってる。


 小説で読んだ展開。

 サルビアがまだ不遇だった時、辺境を見廻るためロータスと一緒に旅をするエピソードがあったはず。

 道中で宿屋が混んでいて部屋が2つも取れず、相部屋になるのだ。


 ドキドキイベントの1つである。

 相手を疑いもしないサルビアと、思慕を自覚しつつあるロータスの葛藤が好きだったわー


 原作より早くお姉様とオリバーがくっついたから余ったのだな。

 私におこぼれが回ってきたのかも。



「自分は護衛任務ができないので騎士の誰かを」


 おおいロータスさん? 相手がサルビアじゃないからっておざなりにするなよ!


 小説のサルビアには「役得ですね」とか言って喜んでいたよね。

 私が相手じゃ嫌なのかい! うん嫌と言うか興味がないんだろうな‥

 

 つい遠くを見てしまう。



「えー、私知らない人と一緒とか無理ですけど」


 これは本音。何とかイベントをおこしたい下心はあるけどさ。

 護衛の人は顔と名前が一致しない。そんな男性と2人っきりってさすがにね。


 お姉さま一途のロータスさんなら何も起きないのは分かり切っているし。


「それはそうですが」



 とにかくロータスを引っぱって部屋に入る。

 彼は2人分のトランクを床に置いてこちらを向いた。


 心なしかあきれたような表情だ。

 私は無視して話しかける。


「私ではご不満かと思いますが、ロータス卿はいかがいたします? 他の宿を探されますか」

「いえ、護衛が1人も近くにいないのはあり得ないのでご一緒します」


 しかし、と彼は続けた。


「マリーゴールド様は無防備すぎます。自分じゃなかったら誘われたとかん違いしますよ」



 あ。



(そっか、さっきのやり取りって私がロータスのこと好きみたいじゃん)


「ただでさえあなたには奔放(ほんぽう)だった(うわさ)があるのですから」


 う゛、そこは反論できない。

 ロータスさんは背中を向けた。私からは表情が見えない。


「もっと警戒して下さい。あなたはご自分がうら若く美しい女性だと自覚されていないようでヒヤヒヤいたします」



 ‥そうか。


 そう言えば今の私、アラサーの地味女じゃなかった。

 まだ花の18歳じゃん。

 そして美少女じゃん。お姉様と比べれば『そこそこの』がつくけど。



(わーすーれーてーたー)


 恥ずかしくて顔が真っ赤になる。

 



「そ、そっか、分かった。注意してくれてありがとう! あ、今から着がえるから出てってね!」


 ロータスの背中を押して部屋から追い出す。



(落ち着け、整理しろ。私は女性あつかいされている。でもロータスが好きなのはサルビア。だからサルビアの妹である私にも忠告してくれている。つまり私に興味があるわけではなくて)



 落ち着いた。




 寝間着に着がえロータスさんに声をかける。

 ベッドにもぐりこんで毛布を顔の上まで引き上げた。


「おやすみなさいませ」


 彼の淡々としたあいさつがなぜか悔しい。



(あードキドキさせられたー)


 イベントの威力に恐れ入る。

 ロータスは、原作でオリバーより好きかもしれないキャラクター。

 優しくて人が好くていつも穏やかなその彼が、今は手の届く距離にいるだと?



 こっちに気がないのは分かっていても意識してしまう。

 目を閉じたらロータスが心に浮かんだ。なぜかサルビアに笑いかけている。


(あれ? 何よこのモヤモヤ)




 次回、朝チュン。

 え? 朝にスズメがチュンチュン鳴いていれば朝チュンですよね?

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