2 私が手に入れるべきは
ドアマットヒロインを虐げる妹になった私。
(しかし‥別人に成り代わってどう生きればいいんだ?)
元の世界への帰還方法も大切だが、それはそれで大問題だ。
私は思考を巡らせる。
これからの選択肢その1、物語と同じ展開をたどって物語を終わらせる。
(無理無理無理)
物語と同じ展開だと、後半で姉にベタぼれの辺境伯が実家の人間に復讐するのだ‥つまり私没落しちゃうじゃん。
だいたいこの時点ではもう姉の私への心象は最悪だろう。
そして気に入らない縁談を姉に押しつける寸前。
もし身代わりで姉が嫁いだら、1年くらいで我が家の不正は断罪され私と両親は私財没収の上平民に落とされちゃう。
貧乏になるってことは水汲みとか毎日やらなきゃいけないんだよ?
肉体労働なんて前世だって無理だったんだから、今のご令嬢の体力じゃ衰弱死に一直線じゃん!
却下。
選択肢その2、この家から財産をくすねてダッシュで逃げ出す。
没落予定の家から持ち出せるだけ財産を持ち出せば、今の私なら余裕で暮らせるはずである。
使用人がいるちょいと裕福な庶民はある意味勝組。
肉体労働はそこまでやらなくて良いし、貴族の義務には縛られないし。
(でもそれ泥棒じゃん)
さすがに私も良心が痛んだ。最悪の状況ならともかく、今はもうちょっと考えなければ。
選択肢その3、姉を幸せにして自分だけは断罪からまぬがれる。
姉のサルビアはこの世界のヒロイン。辺境伯どころか王太子にまで恋願われる存在。
だったらお姉さまに取り入ったほうが絶対お得である。
(うんこれじゃん! お姉さまに気に入られて一生安泰に暮らしてみせるぜ)
方針は決まった。
後は具体的な計画だ。私は一晩中あれこれ作戦を練る。
「おはよ~ ござ~ ます」
「え、マリーゴールドちゃん大丈夫?」
両親が心配してくる。
眠ったのが朝方だからだろう、私はフラッフラだ!
顔色もさぞ悪かろう!
しかし策は決まった。決意もね。
「そんな縁談に悩んでいたんだね。辺境伯との結婚はサルビアに決定‥」
「お父様、私、辺境へ参りますわ」
「え?」
父親はポカンとしている。
「あなたあんなに嫌がっていたのに、どうしちゃったの」
お母様も不信顔。
「私も考えに考えたのです! 会ってもいない相手を勝手に嫌うなんていけないことよね。私、辺境に向かいますわ。そして婚約相手の方をじっくり見定めようと思いますの。私の夫にふさわしいかどうかを」
もちろん嫁ぐ気はない。辺境伯には予定通り姉を娶ってもらおう。
この計画の目的は私が穏便に実家から離れることである。
だって無計画に次女だけ溺愛する両親はヤバい。
こんな毒親からはサッサとおさらばするに限るわ。
そして相手を見極める時間が欲しいとねだれば長期の離脱も可能になる。
人生なんて気長なことは落ち着いた環境で考えたいし。
(ふ、今のところ完璧な計画だぜ)
そして肝心な話を切り出した。
「でも、私1人で知らない場所に行くのは心細いわ。お父様ぁ、私にお姉さまをちょうだい♪」
姉を屋敷に残すわけにはいかない。
そして好感度を上げるためには、私自身がこの家から姉を助け出しておきたい。
しかし姉は伯爵家を受け継ぐため我が家に必要な人材だ。
一般的な親だったら絶対に反対する。
一般的な親ならば。
だけどね、私が可愛くねだれば、この父はなんでもくれるのよ。
姉のドレスだろうが宝石だろうが婚約者だろうが。最後のはまだもらっていないけど多分ねー
だったら姉本人だってくれるはずだ。
「むむむ‥ そうすると我が家をつげる人間がいなくなるのだが」
「ええ~ 家なんて私の子供とか養子もらうとかどうにでもなるじゃない? お願いよお父様」
珍しく渋る父。多少はまともな思考があるのだろうか。
私は打算でいっぱいの瞳をウルウルさせながら伯爵にすり寄る。
「私、お姉様が欲しいの♡」
父は陥落した。
欲しがりな妹、とうとう姉を欲しがる。




