15 リクルート?
マリーゴールドの視点に戻ります。
朝だ。目が覚める。
昨夜のことはしっかり覚えていた。
(あああ、私ロータスさんと)
あれって本気なのだろうか? それとも夜会効果のハイテンションで突っ走っただけ?
ちゃんと話し合わないと。
朝食の席のロータスさんは目の下にすっごいクマを作っていた。
はい、私のせーいー
「これからちょっといいですか」
私は朝食後執務室に入ると同時にロータスさんを呼び止めた。
「もちろんです」
彼の顔は固い。緊張しきっている。
昨夜の話を片付けないと。
「ええっと、私ロータス卿には我が家にずっといて欲しいんですけど、嫌じゃありませんか」
「まさか、喜んで拝命いたします」
まだ固さが取れない。
これではただの転職話じゃないか!
「その、夕べのあれは‥」
「申し訳ありませんでした!」
私が切り出す前にロータスさんがヒザをついて謝ってくる。
「自分、調子にのりすぎました。お嬢様に不埒な思いを抱いたこと、心よりおわびいたします。これからは一切行わないよう気を引きしめますので、どうかお側においてください!」
く、やはり気の迷い的なやつか。
だけど‥不埒な思いを抱いたってことは、異性として意識されているってことだよね。
ええい女は度胸だ。
「そこまで気を引きしめることもないんじゃない?」
「お嬢様?」
私はおずおず手を差し出し彼の肩に手を置いてみる。
「私は嬉しかったのだけど。たまにならハグしても構わなくてよ」
ロータスさんは目を丸くしている。
「それはつまり‥親愛の意味でしょうか? しかし自分はその、もっとやましい気持ちでして」
男性だしそれは理解できるけれど、聞きたい言葉はそれじゃない。
私はもう一歩踏みこんだ。
「それってやましい気持ちだけなんですか? 私のこと‥もしかして好きだったりしません? 恋愛的な意味で。妹とか友達としてじゃなくて!」
恐る恐る問いかけた。
間違っていたら恥ずかしさで死ねるかも。
ロータスさんは真っ赤になって私を見上げる。
「そんな顔で見ないで下さい。かん違いしてしまいます」
キャー! 『かん違いしてしまいます』キター!
恋愛小説で良く読むあれじゃ~‼
「す、すればいいじゃない。私ならかまわないんだからね」
あ、ツンデレってしまった。
「よろしいのですか‥良かった。ただの身代わりでも大丈夫です。自分の心を捧げさせて下さい」
ん?
「あなたが誰を慕っていても、この気持ちは変わりません」
言いたいことは伝わったけど、言っていることがちょっと分からない。
「へ? 身代わり? 慕っているって誰を? あ、そりゃ昔は色々ありましたけど今は別に」
思っているのは目の前の男性だけである。
「いつもあなたはオリバーを見ていたじゃありませんか。気がついていないとでも?」
悲し気な彼に、私の目は丸くなる。
確かにオリバーのことは良く見ていた。きれいな顔を見るのは好きだから。
まさかそれを誤解しているのか?
「オリバー様は完全に観賞用でしてよ。え、私はずっとロータスさんねらいですけど‥ロータスさんが好きなのってお姉様じゃ?」
ロータスさんは瞬きをくり返す。
「まさか」
彼が嘘を言っているようには見えなかった。
もしかして私が物語を変えた成果?
やったあ!
だったら遠慮なんてするものか。
「す、好きです結婚してください!」
がばっと抱きついてみた。
彼の腕が私に回され、彼の声が私にささやく。
「愛しています。自分で良ければ一生側にいさせて下さい」
信じられない。
なにこれ超幸せ。
ロータスさんになら触られても嫌じゃない。
もっと触って欲しいし自分からも触りたい。
彼の顔は目の前だ。私はそっと瞳を閉じた。




