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異世界でヤバい妹になった私は生きるためにあがく  作者: ノーネアユミ


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14/20

14 ロータス 後

 19歳になったマリー嬢には笑顔も少しずつ増えていた。


 家の立て直しには時間がかかりそうだが、社交界での顔合わせが済めばいくらでも縁談が舞いこむはずだ。

 こんなに可愛らしい人なのだから。



(結婚したら俺は追い出されるかもな。マリー嬢はそんな人間ではないが、自分をどう思っているか分からないし‥)


 自分との仲は良いがあくまで使用人として。もし兄くらいに慕ってくれていたら良いのだけれど‥




 マリー嬢が伯爵へ就任して初めての夜会。

 久しぶりに着飾った彼女は美しいだけじゃなく、俺の目は釘付けになった。


(な、胸が、谷間? そこまであったっけ? いやいや、見るな俺。失礼だろマリーさんに)


 資金が逼迫(ひっぱく)しているからドレスは手持ちの物を着ると言っていたはずだ。


「もっと大人しい服はなかったのでしょうか」

「これが1番大人しかったの」


 着替えは却下された。


「ドレスの1着くらい作っておくべきでした」


 他の男たちの視線が予想できてしまう。

 あと遊び好きだった噂は本当なんだと思い、なぜか落ちこんでしまった。



(落ち着け、今日はマリー嬢のサポートに徹しろ自分)



 会場にはオリバーとサルビア嬢も参加している。

 久しぶりの姉妹との再会に喜ぶマリー嬢を見守っていたら、オリバーが声をかけてきた。



「友人が婿入り先を探しているのだが、マリーゴールド嬢はどうだろう」


 どうだろう? 自分は何と返すべきなんだ?

 何も考えられなくなった俺に、幼馴染はニヤリとささやいた。


「お前が幸せにしないのなら、他の奴にさらわせるぞ」



 ぞっとする。

 覚悟はしていたはずなのに、いざ具体性が上がると気分の悪さを止められない。



(自分が、彼女と?)


 しかしそれはそれで想像しづらいよな。

 オリバーばかり見ていた彼女が、こんな自分にふり向くはずはない。


 ダンスを踊る彼女は輝いていた。

 この人を自分の腕で抱きしめられたら。



 悶々と悩みながら彼女の側を離れる。

 そしてすぐ後悔することになった。顔だけしか取りえのなさそうな男が、マリー嬢に付きまとっていたのだ。


(昔の恋人だろうか)


 そう思っただけで頭が熱くなる。


(彼女から離れろ。不躾(ぶしつけ)に見るな、触るな)


 マリー嬢がはっきり嫌がっている。

 俺はホッとしながら助けに急いだ。



「もう新しい恋人がいるの。昔のことなんて忘れました」


 彼女の言葉に自分も合わせる。フリであっても嬉しいから。



 ほんの少しのことで気分が乱高下した。



 マリー嬢にオリバーが顔を寄せただけで。

 あいつが何かをささやいて彼女があわてただけで。



(さっきの縁談の話か)


 頭が沸騰する。自制心が消えて行くのが分かった。


(他の男には渡さない)


 たとえ彼女が見ているのが自分じゃなくても。

 これ以上自分以外の誰かと一緒の彼女を見るのが辛く、帰宅を急いてしまった。




「オリバーとは何を話していたのでしょうか」


 疲れた彼女が寝室で休もうとしている所まで邪魔してしまう。

 縁談の話だったのか、ただ冗談を言われただけなのか、それだけでも教えて欲しい。


「ええっと、休んでから考えるので、明日でいいですか?」


 彼女の目が泳ぐ。冗談ではなかったようだ。もっと真面目な内容だろう。



「今の俺には聞かせられない内容なんですか」


 だとしたらやはり誰かを紹介されたのだ。


(どこの家の誰と?)


 あせって彼女に詰め寄ってしまった。




「じゃあずっと一緒にいて下さる?」


 耳に届いたのは信じられない言葉。


「話をしたら、離せなくなってよ」


 マリー嬢が、俺にすがり着いてきた。



「いいんですか、俺で」


 きれいな瞳に見つめられて俺は‥我に返る。


(しまった、令嬢の部屋に無断で入っている)


 しかも彼女のドレスは胸元が開かれているデザイン。ふっくらとした肌が至近距離で視界を直撃する!

 この状況はまずい。



「あ、あ、申しわけありません」


 執事として失格だ。あわてて部屋を飛び出した。


(何をやっているんだ自分は)


 後悔と、そして願望。



(あのまま部屋に留まっていたら今頃‥うわああ考えるな俺ぇ)


 自責の念から一睡(いっすい)もできなかった。



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