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異世界でヤバい妹になった私は生きるためにあがく  作者: ノーネアユミ


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11/20

11 昔の男があらわれた ▶ たたかう

 ストックが増えたので火・木・土連載にします。


「お腹空いたわ、何か食べに行きましょうよ」


 ダンスを踊ったらもう我慢できない。

 足早に軽食コーナーへレッツゴー!


 カナッペや1口大のローストビーフを次々とつまんだ。


(久しぶりの高級食材なんだから楽しまなくっちゃ)


 ロータスに笑われてしまったけれど気にしない。


「飲み物を取って来ますね」


 彼が隣から離れるけれど、気にせずスコーンを手に取る。

 クリームとジャムを目いっぱい塗ってほおばった。




「マリーゴールド嬢でしたか」


 会場に着いてから初めて誰かから声をかけられる。軽薄そうな若い男だ。


「僕を覚えていますか?」

「どちらでお会いしたかしら」


 このハデ顔には覚えがない。


「失礼、以前会った時はお互い顔を隠していましたから。あなたが名のったのは姉君の名だったようで」



 あ、と息を飲む。

 そう言えば昔の私、姉の名前で悪行三昧だった! いい男と見ればとっかえひっかえだった!

 過去に男の5人や10人くらいいるって想定しておけよ! 


(しかも仮面をつけての集まりか)


 だったら覚えていないはずだ。


「その時はどうも。ですが今そのお話をするのは無粋ではないかしら」


 ああいった集会では本人を特定しても指摘せず楽しむのがマナーだったような‥



「しかし僕は忘れられなくて」

 彼はぐっと体を寄せてきた。



「特にあの夜のあなたは」


 スコーンを落としかけたよ。

 根性で落とさなかったのは食い意地ゆえか。


(あああああの夜ううううう⁉)



 そんなことあったっけ?

 マリーゴールドは怪しげな夜会に参加していたけど、そこまで進んでいたっけ?

 私はマリーとしての記憶を必死に探る。


 ウッ、お酒に酔っぱらって記憶があいまいな部分が何回かあったよ。

 つまり、心当たりがないわけではないのか? 誰が一緒だったかは分からないけどな!



「バルコニーに行きませんか、くわしくは2人きりで」


 元カレ? が肩を抱き寄せてくる。

 が、その程度で流される私ではない。


「おほほほ、きっとあなたのかん違いよ。記憶にございませんもの」


 嘘は言っていない。

 マリーの記憶はあやふやで本当にこいつとどうこうしたかは不明だし。



 男は強引に肩を引こうとした。

 遊び好きな元のマリーゴールドや、気弱なサルビアだったら釣れたかもしれないね。

 だけど私中身はアラサーだから。


 男友達は多くても男性関係はからっきしのなぁ!


 知らない男についていくわけないだろう。後、さわり方がエロくて気持ち悪いんだよ。



「ですから離して下さる? わたくし食事で忙しいの」


 怪しい奴は拒否一択じゃ。

 つまんでいたスコーンのカケラを口につめ、空いた手でセンスをつかむ。男の手をパンっとはじいた。


()()くふれない()()いわ」


 口の中に物があるせいでモゴモゴしてしまったが、言いたいことは伝わったらしい。男は体を引いた。




「マリーゴールド嬢!」


 ロータスさんの声だ。

 ふり返って一気にホッとする。

 1人でも戦えるけど怖くないわけじゃないのよ。



「ロータス、遅い」

「お待たせしました」


 持って来てくれたカクテルを流しこむ。


「もう新しい恋人がいるの。昔のことなんて忘れましたわ」


 私はわざとらしくロータスさんと腕をからめた。

 男はロータスをにらみつける。


「伯爵家の婿がそんな平凡に務まりますかね」


 イラっとした。自分はともかくロータスさんを悪く言われるのは我慢がならない。


「う~ん、あなたのような三下よりはマシでしょうね」


 相手が言い返せない内にすばやくその場を立ち去るのよ。




「ふうう、助かりました。ありがとう」


 男から十分に距離を取ったことを確認し、私は腕を離した。


「安易に離れるべきではありませんでした。自分のミスです」

「私の行いが悪かっただけでしょ」


 それより、とロータスさんに向かい合う。


「恋人のフリをさせちゃったけれど、大丈夫かしら?」

「いえ、こちらこそ役得です。噂になったら申しわけありませんが」


 彼はいたずらっぽく笑った。

 私の胸がキュウッとして胃が痛くなる。


「じゃ、じゃあもう1曲踊って下さらない」

「喜んで」



 ロータスの腕に体をまかせた。


(私、この人が好きなんだ)


 ステップを踏みながら思いを自覚する。



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