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世界征服を企むニャンコ  作者: 続けて 次郎


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31/33

第三十一話:箱が二つになるとき、序列が生まれる

 箱が、

 二つある。


 昨日まで、

 世界は一箱だった。


 それだけで、

 秩序は保たれていた。


 だが今、

 箱が二つある。


 これは、

 分断ではない。


 配置だ。



 ――飼い主視点――


 段ボールを、

 少し離して置く。


 近すぎても駄目。

 遠すぎても、

 緊張が増す。


 距離は、

 三歩分。


 ミケは、

 元の箱。


 新しい子は、

 新しい箱。



 ――ミケ視点――


 俺は、

 動かない。


 先に動いた方が、

 立場を失う。


 箱の縁に顎を乗せ、

 目を細める。


 観測だ。



 ――子猫視点――


 ここ、

 あったかい。


 箱、

 かくかく。


 におい、

 いっぱい。


 向こう、

 おっきい。


 じっとしてる。



 ――ミケ視点――


 視線が合う。


 逸らさない。


 逸らしたら、

 終わる。


 相手は、

 俺を見ている。


 だが、

 意味は分かっていない。


 それが、

 一番厄介だ。



 ――飼い主視点――


 どちらも、

 鳴かない。


 ただ、

 見ている。


 静かすぎて、

 少し怖い。



 ――ミケ視点――


 小さい方が、

 一歩、

 前に出た。


 境界線を、

 踏む。


 だが、

 迷っている。


 止まった。


 いい判断だ。



 ――子猫視点――


 あれ、

 こっち見てる。


 動かない。


 おっきい。


 でも、

 こわくない。


 たぶん。



 ――ミケ視点――


 俺は、

 尾を、

 ゆっくり一度、

 動かす。


 これは、

 言葉だ。


 「そこでいい」


 という意味。



 ――飼い主視点――


 ミケの尻尾が、

 揺れた。


 いつもの、

 あれだ。


 落ち着いてる。


 ……はず。



 ――ミケ視点――


 子猫が、

 座った。


 境界の、

 向こう側で。


 序列は、

 今、

 決まった。


 俺は、

 動かない。


 それでいい。



 夜。


 箱は、

 動かなかった。


 距離は、

 三歩のまま。


 だが、

 空気が、

 少し柔らかくなった。



 ――ミケ視点――


 序列とは、

 押しの強さではない。


 譲る場所を、

 最初に決めることだ。


 俺は、

 この家を知っている。


 だから、

 急がない。


 小さい世界が、

 大きくなるには、

 時間が要る。


 世界征服とは、

 増えた世界を、

 壊さずに並べることだ。


 箱が二つになった夜、

 俺は、

 まだひとつも失っていない。


 それが、

 最も重要だった。

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