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世界征服を企むニャンコ  作者: 続けて 次郎


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30/33

第三十話:知らない匂いは、事件である

 世界は、

 匂いで出来ている。


 だから分かる。


 その日、

 家の匂いが、

 ほんの少しだけ歪んだ。


 扉は閉まっている。

 窓も、いつも通りだ。


 それなのに、

 外の匂いが混じっている。


 新しい。

 細い。

 震えている。


 これは、

 事件だ。



 ――飼い主視点――


 玄関で、

 少し迷っていた。


 段ボール箱。

 中から、小さな音。


 拾ってしまった、

 というより、

 拾わざるを得なかった。


「……どうしよう」


 視線の先には、

 ミケがいる。


 静かに、

 こちらを見ている。



 ――ミケ視点――


 箱。


 知らない箱。


 だが、

 ただの箱ではない。


 中に、

 生命の気配がある。


 俺は、

 一歩も動かない。


 この距離は、

 保留だ。



 ――飼い主視点――


「ミケ、

 ちょっとね……」


 説明は、

 いつも後付けだ。


 箱を、

 床に置く。


 小さな鳴き声。



 ――ミケ視点――


 鳴いた。


 高い。

 割れやすい音。


 未完成だ。


 世界を、

 まだ知らない声。


 俺は、

 目を細める。


 これは敵ではない。


 だが、

 無害でもない。



 ――飼い主視点――


 そっと、

 箱を開ける。


 小さい。

 思っていたより、

 ずっと。


「大丈夫だよ」


 誰に言ったのか、

 分からない言葉。



 ――ミケ視点――


 見えた。


 三色ではない。

 俺とは違う模様。


 震えている。


 匂いが、

 弱い。


 俺は、

 一歩、

 後ろに下がる。


 近づくのは、

 まだ早い。



 ――飼い主視点――


 ミケが、

 下がった。


 怒ってはいない。

 でも、

 戸惑っている。


 それが、

 一番分かる。



 ――ミケ視点――


 この家は、

 俺が知っている。


 すべての音。

 すべての影。


 だが、

 この匂いは、

 地図にない。


 世界地図が、

 書き換えられようとしている。


 俺は、

 拒否しない。


 だが、

 許可も出さない。


 保留。


 それが、

 最初の判断だ。



 ――飼い主視点――


「今日は、

 別の部屋で……」


 隔離。

 必要な措置。


 それでも、

 胸が痛む。



 ――ミケ視点――


 扉が閉まる。


 匂いは、

 完全には消えない。


 消えない、

 ということは、

 続く、

 ということだ。


 俺は、

 自分の場所に戻る。


 だが、

 眠れない。


 世界が、

 一段階、

 増えたからだ。



 夜。


 静かな家。


 だが、

 奥の部屋から、

 かすかな音。


 生きている証拠。


 俺は、

 聞いている。


 聞いているだけだ。


 知らない匂いは、

 事件だ。


 だが、

 事件は、

 いつか日常になる。


 それを決めるのは、

 時間と、

 距離と、

 俺だ。


 世界征服とは、

 世界が増えることに、

 慣れることでもある。


 ミケは、

 まだ動かない。


 だが、

 もう一つの世界を、

 確かに認識した。


 今夜、

 この家は、

 二匹分の未来を持っている。

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