表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/83

神話の先

 鶏たちのためにクローバーを植えさせた庭にはそこらじゅうに穴が空き、池の水も干上がっていた。

 外壁に焦げはあっても邸内の被害は少ない。ひとり暮らしといっても使用人がいる。


 会いたくない人物の一人が姿を現した。


「ちゃんと食って、寝てるか?」


「兄上……。用件なら手短に」


「忙しそうには見えないよ」


 エドガーは床に手足を投げ出し仰向け。仕事部屋に空いた天井から、夜空を見ていた。


 どれ、とリシャールも隣に寝転ぶ。


「月……見えないな」


 星は綺麗だか、うっすらと三日月が浮かぶ。


 兄の顔を見ようともしないエドガーはじっとしたまま。


「……ノエルに見せたかった」


 二人で見た星空はとても綺麗だった。でも今は胸が締め付けられるだけ。


「ノエルは、一人しかいない」


「そうだね」


 迷子になった森で彼女を見つけた時に、どうしてすぐに声をかけなかったのだろう。

 先に出会っていたなら……。


 兄は諦めろも、頑張れも言わない。その代わりにいいものをやると懐から何やら取り出す。


「ほら。これ、読みたかったんだろう」


「どうしてこれを!」


 飛び起きて、兄の手から奪うようにとった。探し求めていた神話の続き。


「クリスタ様が離れに入れてくれた。ああ、ノエルちゃん達は今、森の家。ばれてないよ」


 ふたりがいない間に徹底的に調べろと。何をとは言われなかったが、見当はつけていた。


 ノエルの使っていた古代文字と現代語を併記した帳面を見つけ、持ち出した。


 エドガーは帳面片手に、神話のページをめくる。


「<ここにはない場所>や人形のことが書いてある!」


「頑張れよ」


 肩をぽんと叩き、兄は消えた。


 ――神話の先


 愚かな人々の罪をあがなうために、金目の少女は魔獣王と約束を交わす。


 魔獣王は、穢れた魔獣を清めるために、<ここにはない場所>を作った。


 金目の乙女は<ここにはない場所>で祈りの歌を歌う。


 金目の少女が生まれるのは、禍や世が動くとき。


 戦争や飢饉が起これば、人から瘴気のもとが大量に吐かれる。多くの魔獣が歌を欲した。


 平和な時に金目の少女は生まれない。

 それでも歌は必要だ。


 そのためのオルゴール。動かすための魔力を人形に残す。


「大きな禍」


 赤い布が頭によぎった。


「ノエルが生まれたのは……」


 僕と出会うためではない。彼女には使命があった。


 それでも出会った。


 神話はまだ数ページ残っている。


「この絵は何だろう……」


 最後のページには空に浮かぶ満月と、見たことのない建造物が書かれていた。


 大きな階段をのぼる魔獣たち。階段下で魔獣を見送るのは魔獣王だろう。


 古代文字がひとつ書かれていた。


『無』


 ひどく胸騒ぎがする。


 この目で確かめに行かなくては。


 エドガーは立ち上がり、兄を緊急と呼ぶ。


「兄上! お力を貸してください!」


 何事かと現れた兄をまた転移魔法陣にのせる。


「いきなり何? えっ……また転移?」


「当分、帰れませんから」


「……」


 エドガーの目に力が戻っている。何かを突き止めたんだ。


 兄の力というより、ラウルの血――魔力が欲しいのだろう。


「ラウルも救えるのか?」


「ノエルの泣く顔は見たくないからね」


「わかった」


 エドガーが唱える。「オベール村!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ