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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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いたずら子猿にお任せします

 森の家の前庭でのんびり日向ぼっこ。


 二人だけで過ごす午後。


 ノアも何処かへ遊びに行ってしまった。


 ついうとうととしてしまう。


 エマが帰ってくるかと夜中も起きて待っていた。


 朝になって、マークスだけがひょいと現れ、早口でラウルに報告して帰って行った。


「今頃、エマはマークスと仲良く魔獣のお世話か……」


 エドガー様の飼育場……。知らなかった。


 新しくなるオベール村。見てみたいな。


 エドガー様は、人に姿を変えられる魔獣を『魔人』と名付けていた。


 そのうち『魔』もとれて――人となるだろう。


 時間がどれほどかかるかわからないが、魔獣が静かに消えていく。


 いいのか、悪いのか。私にはわからない。


 横目でちらっと、無反応の石を見る。


 ラウルは何を考えているんだろう。


 オベール村へ連れて行くべきかしら。


 呪いがとけても、石から出してあげない私を不審に思ってるよね。


 理由は教えてあげられない。私の我が儘だとしておく。


「文献解読は、途中だけどもう諦めた。一人では無理だもの」


 本当はほぼ終わっている。


「特にやることないし、シャーリーに会いに行こうと思うの」


 石から少し気配がした。


 お猿の里。古代遺跡に反応してる。


「私一人で行くのはすごく寂しい。一緒に行こうよ」


 いいでしょ? と石を手にとると、ほんのり温かくなる。


 クリスタ様に保護棟経由で里まで転移魔法陣をつくってもらった。


 本当は主さん……鹿ラウルの背に乗りたいけど、我慢だ。



 里に着くと、なんとマリエッタが自分の部屋を掃除をしていた。


 箒を手にしたマリエッタを見るのは初めてだ。大嵐でも来るのかと引き返しそうになった。


「お姉様。お猿たちは私の言うことを少しも聞かないのよ」


 起き上がれるようになったら、自分の事は自分でしてくれと。


 泣いて喚いても、脅しても、誰の気も引けない。


 でも、歌えば里中のお猿が集まって来る。ちやほやされることはないが、教会で歌っていた時よりも楽しい。


 掃除くらいのことで、里から出る気はないと言う。


 本当に以前と変わった。もう瘴気は残っていない。


「身支度だって、自分でしているの。お姉様が結うより綺麗でしょ」


「とてもいいわ。似合ってる」


 ただの三つ編み。私にはもっと複雑に編み込めとか文句ばかり言ってたくせに。


 でも黙っておく。


「ところでシャーリーと伯父様は?」


 マリエッタがふっーとため息をつく。


「お父様はシャーリーを甘やかしすぎよ。何をしても叱らないの」


 走り回ろうが、物を壊そうが気にしない。何でも気に入らない、嫌だ嫌だと言っても笑うだけ。


 もう手に負えない、とマリエッタが言うくらいだから相当なものだろう。


 伯父様にシャーリーが悪戯しても多少は叱らずに、好きにさせてとは言った。でもそこまでとは。


「シャルルは?」


「壁の落書きを見て、この子は天才だーとか言って、絵の具を買いに行ったわ」


「すごいわ! オベール家は芸術家も多く出ている。きっとシャーリーも!」


 私の父は事務方だったのに、今じゃ彫像の修復作業を行っている。伯父様だって絵を描くのはお好きだった。マリエッタは歌。私は……石の顔描きかな。


 シャーリーは至る所に入り込んで悪戯し放題。様子を見に行きたいが、素知らぬ顔をする。


「シャーリーには当分会わない方が良さそうだね。石をおもちゃにされたら大変だもの」


 石から安堵したような気配。よだれだらけにされるのは、ラウルも嫌なんだろう。


「マリエッタ。また来るわ。これお土産。シャーリーと食べてね」


「キキー! 貧乏クッキーね。これ、たまに食べたくなるの」


 作るたびに不味いとか言っていたのに。つい笑ってしまう。



 家に帰り、湯を沸かす。食事は一人だと面倒で作る気はしない。お茶とクッキーでぱぱっと済ませた。


 あとはまた二人の時間。


 今日も石をお風呂に入れる。優しく手洗いして、ふわふわタオルにくるんだ。


「ラウル、今夜も一緒に寝ようね」


 どこかでフクロウ魔獣の鳴き声がした。


 石がほどよく温めてくれる。気持ちいいな。


「ラウル。おやすみ」


 シャーリーに会いに行くのは、壁いっぱいに落書きをさせてからだ。


 保護棟の壁一面にシャーリーの手形を見たときに閃いた。


 遺跡に眠る古代魔術をラウルに知られずに消す方法。


 ラウルが手形だらけの壁を見たら、どんな顔するだろう。驚いて石から飛び出てくるかな。


 服を用意しておかなきゃ。


 そして文献はすべて焼いてしまおう。


 古代魔術は絶対に使わせない。

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