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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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魔力って必要ですか

「ラルゴが……」


 伯父の姿を見て、リシャール様は驚いていた。


 あれほど探したのに。がくりと肩を落とした。


 伯父が自分にかけた古代文字の魔術は、魔爵でも見破れなかった。


「赤い布を使っていたメイド達も、すっかり元気になったよ」


 嬉しそうに報告してくれる。ご褒美まで用意して、ずっと世話をやいていた。


 彼女たちは病気が治って良かった、と職場に戻り、前よりも楽しそうに過ごしているそうだ。


 ボニーは別の教会に通っているが、お悩み相談はしていなかった。


 かわりに歌劇に夢中。お気に入りの歌手の追っかけをしている。引っ込み思案も治ったみたいだ。



「伯父様、この文字をしっかりと覚えてください!」


 シャーリーに会いたければ頑張ってと励ました。


「忘れんうちに、早く次を……」


「それを頭にはっきりと思い浮かべて!」


 うっすらとインクが滲むように、文字が浮かび上がった。


「伯父様、すごいわ!」


 伯父は汗だくだが、古代文字の写し取りに成功した。


 呪いの赤い布に触れないようにするには、この方法しか思いつかなかった。


 エマが導き出した解術の魔法陣の上に置かれた布に、伯父が文字を重ねると、一文字、一文字が消えていく。


 南塔の執務室から見つかった布は、もう二度と使えないように、最後は切り刻まれ、焼かれた。



 エドガー様は団長執務室へ入ったことは覚えていた。


 椅子に座り、引き出しから印章を取り出し、書類に押した。


 その瞬間、心を奪われたようだ。


 嫉妬は黒い塊となり、蝕んでいった。


「でも……それを僕は拒まなかった」


 リシャール様が、エドガー様の私邸を訪ねると、ぽつりと漏らしたそうだ。


 嫉妬など人には言えない。


 王子ならなおさらだ。


 人が羨んでも手に入らないものを、生まれながらにして持っている。


 でも、全てを持っているわけじゃない。


 どこにでもいる青年が抱える、小さな悩みだってある。


 ずっと心に蓋をして、ため込んでいた。


 それをこじ開けらた。


 どこか他人事のように、ラウルを貶めようとした。


 見えているのに、止めようと思わなかった。


「もしノエルまで、道連れにしていたら……」


 その先は言わなかったそうだ。


 そして、少しづつ蘇ってくるあの日の記憶を忘れないとも。


 強いお方だ。


 また笑顔で会える日は来るのだろうか。




「ノエルちゃん、石をかして。封印を解こう」


 リシャール様が手を出して待っているが、渡さない。


「もうしばらくは、このままで。ラウルもいいよね」


 頬ずりして、同意を求めれば、石は少し熱を持った。


「この石がないと、もう眠れないの。……熱っ!」


 火傷するところだった。危ないな。


 わたしたちの計画が終わるまで、出してあげません。


 人形に入ったエマを抱き、石は巾着の中へ。


「さあ。おうちへ帰りましょう」


 クリスタ様にお願いして、森の家に連れて行ってもらった。


 荷物はアメリに後で送って貰えばいい。


 リシャール様は、面白いことが始まるのかな、と笑って王都へ戻った。



 森の家を覆うように、エマが結界を張った。


 もともとオベール家の誰かが張った結界がある。二重になって強固になった。



 エマは、もう体が溶け出すことはなくなった。

 肌に残る黒い瘴気はかなり薄くなってきた。鏡を見るたびに、笑顔が増えた。


 マリエッタやボニーたちだって、浄化の魔術を使ったが、それだけじゃないはず。


 それを伯父が証明してくれた。


 シャーリーを抱いた瞬間のラルゴは、歓びにあふれていた。

 そして、人に戻った。


 魔術なんか使わなくても瘴気は祓える。


 そんな、希望が見えてきた。



「ノエル。ちょっと出掛けてくる」


 おしゃれしたエマ。


 ふ~ん。行き先は聞かなくてもわかる。マークスに会いに行くんでしょ。


「呼んであげようか」


「いいよ。自分で探す!」


 マークスは離れに戻ってこなかった。


<ここにはない場所>でもなさそうだとエマは言う。


 保護区のどこかにいる。それ、どんな範囲のことを言ってるのかしら。


 迷子どころじゃない。道を間違えれば遭難するほど広い。


 わかるのかと聞けば、魔力をたどると。


 それに向こうからも、察知して見つけてくると言う。


 その昔、人形から逃げ出したときは、すぐに居所がしれたんだ、と少し嬉しそうな顔をした。


「行ってきます! ラウル、ノエルを頼んだからね」


「わたしが石のお世話係だよ。エマちゃんこそ、気をつけて」


 見た目はまだ少女。


「あっ、いたいた」


 もうマークスを見つけたんだ。


 人の言葉も聞かないで、エマはすっと消えた。



 正直、羨ましいと思った。


 もしラウルが人の姿でも、主さん姿でも、見失えば、わたしには見つけられない。


「わたしにも魔力あったらな。それとも、全員がなくなれば、お互いを探し合うのかな」


 それも面白いね。


 文献には、魔術を消す方法が書いてあった。


 ……消す。


 そもそも、魔力って必要?


 魔獣は魔力がないと本当に困るの?


 姿を変えられないのは困るだろうけど……。


 生まれたままの姿で、一生を終える子も沢山いる。


 言葉には出さなかった。


 ラウル。あなたは困る? 


 もし選べたなら、どっち?


 石のままがいい。なんて言わないでね。


 じっと石を見つめる。


「……久しぶりに描こうかな」


 今日はお猿の顔にしよう。

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