表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/84

伯父の行方

 仕事部屋に置かれた水槽。


 尾がゆらりと揺れる。


 ゆったりと魔魚が泳いでいる。


 離れに閉じ込められているのも、忘れて、癒やされる。


「可愛いな。口をパクパクさせて、つついてる」


「ノエル。あなたって本当に……」


 エマはその先を言わない。人でなしとでも言いたいのかしら。


 呆れ顔だが、本当は面白がってるのはわかる。


 そう。水槽の底には石ラウルがいる。


 やはり、無罪放免にはできない。


 雷封じに、水に浸すことにした。


 いわゆる、水責め。

 聖水だから、罰ってわけでもない。


 ノアが庭の池から、小さな魔魚を咥えてきた。そして水中に放した。


「ニャッ」


「ノア!?」


 ノアが笑った気がした。

 それも、ちょっとニヤリと。


 きっとラウルと仲良しなのね。


 最初は、大人していたラウルだが、ぷくぷくと泡をだした。それを魔魚がつついている。


 ラウルも気に入っている様子。


 とても呪われている人には見えない。


「エドガー様は目覚めたのに、ラウルの呪いはいつ消えるのかな……」


「ドガールの残した赤い布。それに古代文字を書き込んだ人物が見つかれば解けると思う」


「きっと伯父様だわ」


 リシャール様も探してくださっている


 手がかりもなく、行き詰まりだった。


 偽神父達は、叔父はいつもぼっーと窓の外を見ていたと。


「わたしも古代文字を書けと言われた部屋から見えたもの……」


 思い出した。窓から墓場が見えた。


 一瞬、頭の中で、ラルゴの顔が浮かんだ。


「まさか……」


 水槽の中に手をいれ、ラウルを出す。


「すぐに保護区へ連れて行って!」


 うんともすんとも言わない。


 こうなったら。


「わたしって。この魔魚と同じ……」


 箱庭の中で、ただ生きているだけ。


「これじゃあ、人形に入っていても同じ」


 隠していたアウラ様人形を取り出した。


 エマが小さく何か言ったが無視。


「呪いが解けて、石から出てきてくれたら、もう一度……。いいの」


 アウラ様に触れたわたしの指先が、吸い込まれていく。


 瞬間。光の中に放り込まれた。



 目を開けると、保護区の居住棟。見知らぬ部屋の中にいた。


 ゴロンと足元で石が転がった。


「ここは……」


 落ち着いた部屋だった。ラウルの私室だろう。


 角で作ったのか、……小さな輪っかがいくつも置いてあった。


 歪な指輪。


 もしかして……? 


 胸が熱くなった。


「ノ……ノエル、一体その人形どうしたのよ?」


 エマがわたしの持つ、アウラ様人形を指した。


「隠していて、ごめん。実は……」


「ノエルが吸い込まれるのかと思った……」


 そんな魔術、わたしには使えない。指先を透明にして、吸い込まれると、見せかけただけ。


 一瞬なら誤魔化せるかな、なんて、魔術師長相手に賭けだったけど。


「それより、ラルゴに会いに行こう!」


 ラウルを巾着に放り込んで、保護棟へ向った。



「ラルゴ。いえ、アラン伯父様……」


 ラルゴは黙って聞いていた。


 でも目で何かを訴えている気がした。


 言葉はずいぶん覚えて、最近では挨拶もしているらしい。


 保護官の手伝いもしていた。


 特に幼獣の世話をするときは、嬉しそうにしていたという。


 そうしているうちに、姿は徐々に変わってきたと。


 保護官達は叔父を知らない。


 まだ、毛深いが、叔父の面影を見つけた。


「伯父様。遅くなってごめんなさい……」


 涙の止らないわたしの頭を、そっと撫でてくれた。


「伯父様に、是非あって欲しい子がいるの」


 クリスタ様にシャーリーを連れてきて貰った。


 シャーリーは、いつも遊んでくれるラルゴを見つけ、すぐに飛びついた。


「伯父様、シャーリーはマリエッタの子です」


「マリー、シャーリー……」


 ラルゴの姿が変わっていく。



 伯父は、事業に失敗して、借金とりに追われた。


 帳消しにする代わりに、仕事を頼まれた。


 それが教会で、赤い布に古代文字を書くこと。


 出来ないと最初抵抗したらしい。だが、娘のマリエッタの命が……と言われ、仕方がなく文字を書いた。


 そして、マリエッタも一味と知り、絶望した。


 それでもいつか、娘は目を覚ますかも知れない。


 窓から墓場を見ていた。ちょうど墓守りが逃げだそうとしていた。


 あれだ。


 姿を似せて、入れ替った。


 伯父がシャツをまくり上げると、腹には刻まれた古代文字。


 書くには読む以上に難しい。伯父は読むのにも苦労していた。


 どうにか姿を変えた瞬間、人の記憶を失ってしまった。


「ノエルのあげた帽子。あれに浄化の文字書いたの?」


「まさか。でも、もしかして……」


 帽子に刺繍したあの日。幾度も針で指先を刺してしまった。


「それだね」


 エマがうなずく。


 わたしの持つ浄化の血が、文字を打ち消したのだと。


 明日、お猿の郷からマリエッタを連れてこよう。


 石は反対じゃないみたいだ。

 少し温かくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ