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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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ばれました

 ちりひとつ落ちてないくらいに、掃除して、荷物をまとめた。


 文献、人形に入ったエマ。


 アウラ様人形は、エマに見つからないように、鞄の奥底へ。


「色々あったね……」


 誰に話かける訳でもないのに、声に出していた。


 あの嵐の夜を思いだす。


 朝が来るのが怖かった。これは悪い夢なんだって、思いたかったから。


 震える手で、抱きしめたね。


 実家を追い出されて、行く当てのない私を休ませてくれた、小さな離れ。


 その後は、石とのちょっとおかしな日々。


 今日は顔に何も描かない。


 だって、あれは私だけに見せて欲しいラウルの顔だったから。


 怒った顔、泣いた顔、笑った顔、すねた顔ーー


 夫婦だったら、当たり前に見れた顔。


 私の王子様はラウルだ。手は届かない。王子様だもん。


 本邸の転移魔法陣を使おうと、ドアノブを回す。


 開かない。主寝室と同じだ。どうして、このタイミング!?


 ここ建て替えをした方がいいよ。と、扉を蹴飛ばす。


『ノエル、ここ出られないように、魔法かかってるよ』


「えっ?」


 エマが教えてくれた。


『たぶん、ノエルだけ出られない……ぶふっ』


「なんで……」


 笑い事じゃない! 一大決心がしたんだよ。


 心の奥の何かが音をたてて崩れていく。


 雷が落ちたくらいの衝撃にくらくらした。


 巾着から石を取り出す。


「ラウル、どういうことでしょうか。説明してください」


 こんな真似するのは、魔術師長様だけでしょう。


 石は知らんふり。こうなったら、反省するまでーー外へ放りだした。


 コッコとリコちゃんにつつかれようが、知りません!


 助けて欲しければ、私をここから出しなさい!



「エマ、出てきて良いよ。当分、ここから動けそうにないからね」


 人形が淡く光って、エマが出てきた。


「可笑しくて、もうお腹が痛いよ」


 あんなにかっこつけて、出られないって、昨日見た喜劇だと笑われた。


「魔法使えるってことは、もう呪いも消えたってことだよね」


「そうでもないよ。ラウルはもっと、こう、繊細な魔法を使うのに」


 荒いとでも言いたいのね。繊細なのか。さすが、ラ……違う。


「外からは入れる。心配しないでいいよ。食事は運んでもらえる」


 慰めがそれか。でも大事。もうすぐ昼だもの。


 ため息をつきながら、荷物をほどく。それほどの量でないのが、せめてもの救い。


 アウラ様人形は、いつも通り静かに微笑んでいた。


 もしかして、人形に入れば、私も出られる?


 試しにと、思っても、術がわからなかった。



「ノエル、いる?」


 クリスタ様がやって来た。


 私だけが出られない魔法を、察知して、笑われた。


「何があったのかしら。エドガー様が大荒れだっていうのと、関係ある?」


「……大荒れ」


「私邸に戻られて、突然、高難度魔術を開発するとか言い出して。失敗して、お屋敷も庭も穴だらけよ」


 静めるために、師匠であるクリスタ様が呼ばれた。


 胸が騒がしくなる。私とは関係ないかも知れない。でも……。


「ノエル。あなたが何を決めたかくらいわかるわ」


 責めるわけでも、諭すわけでもない。


「お母様……」


「息子を選んでくれた訳でもなさそうだけど」


 手にはラウル。そっと渡された。


 つい、傷がついていないか確認してしまう。


「波風立たない夫婦なんて、この世にいないわよ。喧嘩したっていいじゃない」


 クリスタ様も散々、伯爵とやり合ったそうだ。それも魔術までつかって。


 それ、周りの人が怖いです。


「だって、いきなり魔獣の世話しろとか、彫像にこもるとか、勝手に決めてくるんだもの」


 相談して欲しい。そうよ。ラウルはいつだって、何も言わない。


 どうもその辺りはお父様似なのね。


「ところで。そのお嬢さんは誰?」


 視線の先には、ちゃっかりクリスタ様の手土産クッキーを頬張るエマ。


 エマ、見つかりました。お話するしかありません。



 クリスタ様は「そう」と言われるだけ。ラウルが戻ったのならそれでいいと。


「文献はどこまで?」


「半分くらいは」


「私なら、先に結果を知りたいと思うけど……」


 鋭い。これは、ミステリー小説じゃない。


「えっと……。それは……」


 目が泳いでしまう。


「教えなさい」


 逆らえませんでした。


 魔獣を全て、<ここにはない場所>へ連れていくこと。


 人の記憶から魔獣を消すこと。


「やっぱり。そんなことだろうと思ったわ」


 クリスタ様が石を睨む。反応なし。


 話の間、クリスタ様が防音魔法をかけたので、聞こえてはいない。


「あの子、最後に一目会いたいと、姿出したのかしら。結果的には、父親もあなたも守れたけど」


 エドガー様を止められる存在は魔獣王だけ。


 呪いまで受けて、魔力使い果たして、瀕死の状態になって、守ってくれた。


 嬉しいけど。それこそ相談してくれたら、私は断っていた。


 エドガー様の心を救いたかった。無謀だと頭ではわかってはいたけれど。


「阻止しましょう。案はあるんでしょう?」


 クリスタ様がニヤリと笑った。そのお顔、最高に好きです!



「では、ラウルは私が預かるわ」


 いらっしゃいと、石をつまんでクリスタ様は、保護区へ戻られた。


 巻き込みたくはなかったけど、心強い味方ができた。

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