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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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似た者同士

 ラウルはマリエッタの相手を知っていて、疑いを晴らすためだけに、ここまで連れて来てくれたんだ。用事がすんだから置いて行かれた。世界に一人だけぽつんと取り残された気分。


「ノエル様、そんなに慌ててどうなさったのですか。顔が真っ青ですよ。あいつに何かされたんですか?」


 アメリが追いかけて来た。怪我してないか、痛いところはないか心配してくれる。違うの。痛いのは心なの。


「ラウルは浮気なんてしてなかった。マリエッタとは何もなかったの。それなのに……」


 後は言葉にならなかった。誰に何を言われても婚約者である私が彼を信じなくてどうするのよ。


 そもそも最初からだ。何ひとつ取り柄のない、見た目もぱっとしない貧乏貴族の娘が、伯爵家の嫡男で魔爵に見初められたのが信じられなかった。あんなに優しくて誠実な方を疑うなんて馬鹿だ。私は大馬鹿だ。馬、いえ鹿に蹴られて死んで詫びても足りない。


 図書館で古代文字の本を手にしていた私が珍しくて声をかけたんだと思った。でも話すうちに私は恋に落ちた。さらさらの黒髪、深い緑の瞳、本のページをめくる長い指先。気付くといつも私を見て笑っていた。幸せすぎて夢かと思った。


 そうこれは夢だ。信じ切ることができずに、心の隅でいつか醒めてしまうんじゃないかと怖れていた。マリエッタからラウルの子を妊娠したと聞いて、やっぱりと諦めてしまったんだ。


 会えない日はひたすら無事を祈り、結婚式の日を指折り数えていたはずなのに。嵐の夜に帰ってきたのは石。それでも愛おしかった。素直になれなくて、酷いことばかりしてごめんなさい。疑ってごめんなさい。でも私の声はもう彼には届かない。


「嫌われてもしかたなかった」


「まだそんなこと言ってるんですか? お二人は本当に似た者同士ですね。それよりもどうしてこんなことになったのか、吐かせますよ」


 似た者って何よ。ラウルも私を信じてくれてなかったってこと? そうかもしれない。好きも愛してるも言ったことがない。わかってくれていると思っていたんだもの。自分勝手に呆れかえる。


 ボス猿は主さんに蹴られて意識を失っていた。一蹴りで済ませてくれたなんて、ラウルにとってはもう終わったことなんだ。


「では私が。おい起きろ! ノエル様に全てをお話しろ」


「うわっ! 狼だ! 近づかないで! それに大事な顔に蹄のあとが! イケメン猿の僕の顔に傷つけるなんて酷いことするな。もう仕事にならない」


「もっと酷い目に遭いたくなければ、正直に話せ。お前の仕事はなんだ」


「恐ろしいこと言わないでくださいよ。人になっていただけないですか。部下達が怖がって全員逃げだしましたよ」


 アメリがそっと教えてくれた。お猿の天敵は狼。クリークさんが郷に入る前に人に戻ったのは怖がらせないためか。狼クリークさんにボス猿が震えている。


「クリークさん、戻っていただけますか。それなら話せるのよね」


「ありがたい。金目様と二人きりならもっと話しやすいんですが」


「そう? では特別に子守唄でも聞かせてあげましょうか。狼魔獣達が押し寄せたらごめんなさいね」


「ここでいいです」


 素直でよろしい。最初からそうすればいいのよ。何を隠しているのかしら。


「私は人真似がすごく上手いんです。皆さんもリシャール様が現れたと思ったでしょう? 魔力さえも似せることができる。それで、時々ラウル様にも呼ばれて替え玉になっていました」


「ちょっと待って。それはいつから? 図書館にも来たことはある?」


「本は見るだけで目眩がします。というかラウル様が図書館に行きたいから、替わってくれと頼まれたんです」


 良かったぁ。もし恋したのが偽ラウルだったら、私があの人形に生涯閉じこもるところだった。


「式典は黙って立っているだけだから、いい小遣い稼ぎになりました」


 ボス猿さんは見栄っ張りそうですものね。そういえば式典の日は伯母達が出掛けるから、私は図書館に行ける日だった。待ち合わせしなくても会えたから、偶然かと思っていた。


「ある日、替われと言われて執務室に行ったら、奥からほのかにいい匂いがして、のぞいたら女の子が寝ていたんです。金目の乙女様でないことを確認して、ついね。だって仕方ないですよ。この郷にだって金目様をお迎えしたいのにそれは叶わない。同じ血の乙女ならもらってもいいかと……グエッ!」


 ご自慢の顔のど真ん中。鼻めがけてグーパンチを入れました。いいわけないでしょう!


 金目でなくても魔獣達には匂いでわかるのね。オベールの血が入っていれば、もしかしたらいつか金目が生れるかもしれないと考えたらしい。


「それでマリエッタはラウルと勘違いしたのね」


「その後も何度か執務室で会いました。ラウル様が何処かにこもられてからは行っていません。替え玉のご依頼の時にしか入れないんです」


「頼まれても二度とラウルにならないで。もし見つけたら狼の群れの中へ連れて行ってもらうわよ」


「なりません! 誓います!」


「マリエッタはもうあのままかも。どうする気ですか?」


「あれはあれで可愛い所もあるのですよ。それに子猿は私の子でありますから、郷の者を総動員して探させています」


「子猿ちゃんは必ず見つけ出して欲しいです。私の従妹の子ですもの。よろしくお願いします」


 もう一つ確認が。


「ボス猿さんは以前にマリエッタと王都の菓子店に行かれたことは? その時はラウル様ではなく、違う方を真似されていたとか」


「ノエル様、それ私がショック受けます。素顔見たらぜんぜんだめです。好みじゃなかった」


「アメリ、全てを明かしてもらいましょう。それでどうなの?」


「菓子店? それは覚えがないです」


 良かった! アメリとハイタッチ。 じゃぁ、あれは誰? ボス猿でもゴダール本人でもない。残るはあの人かな。


 ボス猿にマリエッタに履き古しではない、『浄化』文字入りの下着と服を取りに来るよう伝えた。


「そういえばあなたのお名前は?」


「森一番のモテ男、シャルルです。金目様、またいつでも遊びにいらしてください」


 遊びに来たわけではないです。もしかしてシャルル王子がリシャールと名を変えている理由ってこのお猿が原因かな。次に会ったらお聞きしよう。

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