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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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森の主

 せっかく狼に姿を変えたクリークさんの背に乗せてもらったのに、うっそうとした森に阻まれ、お猿のようにすいすいと進むことができなかった。


「すいません。足手まといでしたね」


「私達だけでも追いつけませんでしたよ」


「あの猿にとっては庭みたいなものなのでしょう。悔しいです」


 アメリは人に戻ってくれたが、クリークさんは狼のまま。目が光っていて怖いけど、魔獣だけじゃない。野生動物も生息している。危険がないように見張ってくれていた。


 夜になって、月明かりも届かない森は真っ暗。葉づれの音にもビクッとしてしまう。


「クリークさんにもそろそろ休んで欲しいです」


 半日走ってくれて、疲れが溜まっているはず。なのに首を振られた。こんな時にノアがいてくれたらと思う。他の魔獣も呼び込んでしまっては大変とアメリに呼ぶのを止められた。それに来てくれるかどうかもわからない。


「ノエル様からする匂いだけでも、ほら小さな魔獣達が寄って来てますよ。絶対に歌わないでくだい」


 樹上からは鳥魔獣。とり囲むように狐とか狸かな。暗闇の中からじっと見てる。混じって野生動物も来ているらしい。まだ襲っては来ないけど生きた心地がしない。


「ノエル様は私の後ろに」


 大型の動物が近づいて来る。警戒していたクリークさんが、尻尾を振りだした。


「ノエル様。もう大丈夫ですよ。えっと、この辺りの(ヌシ)です。ほらどこの森にもそういったものがいるでしょう」


 森の賢者はフクロウみたいな? アメリも良かったと言ってるから有名な主さんなんだ。


 現れたのは大きな雄の鹿だった。角はないから、きっと落角したばかりなんだろう。耳も少し切れている。目は光っているが怖くはなかった。森の家にもよく鹿が来ていたからかな。みんな臆病で大人しかった。


 主さんがクリークさんと何か話している。そして私の匂いを嗅いで、「ガー」と鳴いた。周りから魔獣も動物も去って行くのがわかった。ひと鳴きですごいです。


「今夜はここにいてくださるそうです。私達は邪魔なようなので、少し離れた所にいますね」


「えっ。邪魔じゃないよ。みんなで一緒にいた方がいいよ。それに知らない主さんといきなり二人はちょっと」


 行かないでと引き留めた。相手は森の主さんだよ。緊張しちゃうよ。


「仕方ないですね。少しの間だけですよ」


 アメリがリスに姿を変えて、膝に乗ってくれた。でも少しって朝まではいてはくれないんだ。クリークさんはとっくに姿を消してしまった。逃げた? 早いです。


 主さんが真後ろに座ってくれた。寄りかかっても良いかな。疲れていても横にはなれないから、甘えることにする。


「失礼しますね。うわ、あったかいし、いい感じの堅さ。これは朝までぐっすりできそう。でもお腹空いたね。主さんも食べるかな」


 アメリは木の実を拾って食べていた。狼クリークさんは……。まあいいか。石を入れていた巾着からボソボソクッキーを出して、主さんの前に置くと食べてくれた。魔獣だったら食べてもお腹壊さないよね。


「来てくれたお礼です。人の子がいたら危ないですものね。ありがとうございます」


 大事な縄張りを見回りしていたら、様子が変だと来てくれたんだ。ありがたい。


「アメリは主さんと知り合いなの?」


「保護区の中でも外でも知らない者はいないと思いますよ。ただ姿をお見せにならないので、今夜はついていますね」


 イケメン鹿なんですよとアメリに言われても、よくわからない。でも凜とした佇まいは美しいと思った。なんというか風格がある。


「アメリ、朝までいても良いからね」


「早くお休みなさいませ。朝までにきっとクリークさんが猿の居場所を突き止めてくれていますよ」


 邪魔なのは私だったのね。クリークさんは一人で猿探しに行くために、邪魔者だなんて言ったんだ。優しいな。


「主さん、休ませてもらうね」


 ピィーと鳴いて応えてくれた。まぶたが重くなる。葉づれの音も子守歌に聞こえてきた。


 ***


『ラウル、いつまでそこにいる? 彼女が森で迷子になったぞ』


 父が彫像に入ってから久しく呼ばれた事はない。浄化が進んでいるか魔力が回復したか。どちらでもいい。今、ノエルが迷子って言わなかったか?


 瘴気が薄れて体が楽になった。あれから魔獣達がやって来てはペロッとひと舐めしていく。ひと舐め分が浄化するとまたやって来てひと舐め。こんな方法で瘴気が消えていくなんて驚いた。


 また小さな魔獣がざらっとした舌でひと舐めしていく。くすぐったくてつい笑ってしまう。そうすると浄化が早まるようだ。これはすごい。ならばと君の笑顔を思い出して一人笑いしてみた。リシャールにまた変態呼ばわりされるな。


 今ならもうひとつの姿になれる。気づくかな。君を驚かせないといいけど。魔術で魔力のこもった角を、失った左前足とひずめに変えた。大怪我をした魔獣によく分けてあげたっけ。自然の落角ではないから少し痛かった。でも四つ足がないと歩けない。


 広大な保護区でもかなり辺境に位置する森の中に君を見つけた。怒られそうだからまだ黙っておくよ。

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