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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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疑惑は晴れないまま

 ラウルの姿が人へと変わっていく。助かったのね。本当に良かった。まだ瘴気は残っている。『浄化』と唱えながら、すぐ近くで見守った。


 最初に何て言おう。「お帰り」かな。それとも、あい……。


「…いっ、いやぁぁぁっ! こっちに来ないで!!!」


 ドン! バッチーン!!! 


「最低よ! 早くこれ着けて!!!」


  ボッ! ゴウ!!!


「お前はノエルに何てもの見せるんだ! 早くしまえ!!!」


 思い切りひっぱたいて、前を隠すように、一糸まとわぬラウルに着けていたエプロンを投げつけた。後ろでごにょごにょとリボンが結べないとか、どうとか言ってるけど、手伝えません。


 もうあんなの見たらどこへもお嫁に行けないよ。本当に最低最悪。


「酷くないか? 服なんて一番最初に溶けたよ」


 立ち上げることもできないラウルに、肩を震わせながらリシャールが上着を渡した。


「わかってくれたのはお前だけだ。無理矢理酒を飲ませたことは水に流すとしよう。おい、笑うな」


 背の高いリシャールのものなら尻が隠せる。たぶん。


「さっすがだな。ぶふっ。ビンタは食らっても、とっさにエドガーの業火を避けるなんて。でも……だめ。裸エプロンは七面よりも衝撃的すぎる」


 リシャールがツボったと腹を抱えて大笑い。そのうち治まるだろう。


「ノエル。振り向かなくて良いから聞いて。ごめんね。ありがとう」


「お帰りなさい」


「うん。ただいま」


 一言しか言えなかった。色々とありすぎた。どこから聞いて良いのかもわからない。私の元へ帰ってきたわけじゃないし。


 感動の再会にはほど遠かった。抱きつくどころか、突き飛ばしてしまったもの。片腕を失ったラウルに酷いことをしたとは思う。でも裸は予想外でした。


 気を取り直して、先にあれを片付けてしまおう。


「エマはどうなるの? ドロドロは固まったみたいだけど、また溶け出すの?」


「もう大した魔力もないだろう。でも危険には変わりない。ここで処分する」


 ラウルは魔力が戻り次第、封印して地に埋めるという。


「ラウル様、もう人形から永久に出さない。どうか見逃してください。お咎めは全て自分が受けます」


 マークスがエマを抱き起こして、立ち去ろうとする。何を勝手なことしてるのよ。


「お座り。お・す・わ・り!」


 人の姿なのに、条件反射なのかマークスがしゃがむ。初めて遊んだ日に、飼い犬かと思ってお座りさせたのをまだ覚えてくれていたのね。ご褒美はないけど、お手もいけそう。


「エマの保護者面するなら、責任とりなさいよ。だいたいそんな口約束は信用できない。エマが納得しなければまた同じような事が起こるわ」


「もうしないよ。約束する。マークスを叱らないで」


 目を覚ましたエマがマークスにしがみつく。愛犬を盗られるとでも思ったのかしら。


「あなたはなぜラウルにこだわるの? 今までだって王になるものは大勢いたのに。魔獣のお世話だけなら妻にならなくたってやってたんでしょう?」


「魔獣王の妻はうんと長生きできるの。私は体が弱かったから、いつもマークスに心配かけていた。人形になってからは長く生きてるけど、魔力は尽きそうだし、体がもう保たなくて」


「エマはマークス様のことが好きなの?」


「私が王の妻になればずっと一緒にいられる」


 人嫌いの女の子が一人で考えた。相談できるような親も友達もいなかったのは可哀想だとは思うけど。何世代にも渡って迷惑をかけてきたのならお仕置きが必要。それは後で考えよう。


「魔獣王ルーラー様。王は世襲制なんですか? 他のものがなってはいけないの?」


「決まりはないと思うよ。できれば僕だって譲りたいくらいだ」


「ではマークス様が次の王様。人形だけどエマが妻となる。マークスだと逆さにすると変な名になるのかな」


「ならないよ。名は金目の乙女が決める。何故僕がルーラーになったの?」


「ふと浮かんだ名を言っただけ。ここが、私達の住む所と合わせ鏡だからかな」


「あの反則的な古代文字の写し書きを思いついただけあるよ」


 後ろでくすっとラウルが笑う。ああ、久々に見たかった。でもあれが目に入ったら困る。


「なんだ。エマちゃんはラウルが好きなのかと思ったが違うのか。君にも着替えが必要だね」


 エドガー様に上着を貸してやれなんて、リシャール様は女の子には優しいのね。エマも服は着ていないけど、寝ている魔獣の影に隠れていた。


「本当にユーグ様のお嫁さんになりたかったし、次の方にも、次の次の方にもお嫁さんにしてってお願いしました。でも」


「でも?」


「私は心も体も清い方がいいのに、みんな違って」


 今、この子なんて言いましたか? 清い? ラウルは浮気者ですよ。


「うわ~。お前は堅物だから狙われたのか。だから僕と一緒に一度くらい」


「兄上。まさかとは思いますが、娼館に行かれたことが?」


 エドガー様に耳を塞がれて、お二人が何を話しているかわからないけど、リシャール様が真顔だ。何か不都合があったのかしら。


 それどころじゃない。ここではっきりとさせたい。


「ラウル。マリエッタのお腹の子はあなたの子ではないの?」


「保護区に帰ったら話す」


 少し考えてから返事をされた。違うよとは言ってくれなかった。それよりもマリエッタを探さなくちゃ。


「マークス様、マリエッタをどこに逃がしたのです?」


「私がいることをやっと思い出したか。いつまでお座りしていればいいのかな。マリエッタは勝手に何処かに行った。あと私は王になぞなりたくない」


「こら待て!」


 エドガー様が紐を出したが、もういつ発動させても良いように準備していたのだろう。エマを担いで魔法陣の上に立つ。


「そ~れ」


 ガッシャーンと瓶が投げられた。何だろう。リシャール様の必殺隠し玉かしら?

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