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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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人形の部屋

 マークスはエマの兄ではなく、幼い頃からずっと見守ってきた魔獣だと白状した。肖像画に書かれた少女の頃のエマに寄り添う大きな黒い犬が正体。執事もメイドもみんな魔獣でした。


「エマ様の歌は遠くまで良く聞こえた。沢山の魔獣達が会いに来る。私もその中の一匹だったが、いつの間にか一緒に過ごすようになった」


 まだ文字も読めないエマを心配して、王へ嫁ぐまで見守ると決めた。


「まさかユーグ様が金目の乙女以外を選ぶとは思ってもみなかった」


 ユーグも最初からエマを疎んじていたわけではない。マークスと同じようにエマを可愛がっていた。だがエマは満足などしなかった。いつも口をとがらせ、特に自分よりも年上の女性をユーグに近寄らせないようにマークス達を使って追い払った。


「私が子を産める大人になっても、いつまでも子ども扱い。歳が離れていたせいかしら」


 ご本人に自覚なし。金目の人形を抱くエマは少女のよう。寝かせたり、座らせたりを繰り返す。エプロンだってメイド用ではなく、幼い女の子が汚れ避けにしてるやつだ。可愛らしいし、とても似合っているが大人が着けるにはどうなの? 


「エマ様、人形を元の場所へ戻しなさい。もしもの事があったら大変だ。もっと丁寧に扱って! 貸しなさい!」


 人形にもしも? 陶器だから割れるのが心配なのはわかるけど、物言いがきついな。それならこっちはどうかしら。


「マークス様。こちらにあるオルゴールはどんな音色なのでしょう」


「勝手に触らないでいただきたい」


 ふ~ん。やけに()()の人形とオルゴールを大事にしてるわね。屋敷内も少し見せてもらったが、綺麗に整えられているのはこの部屋だけだった。エマの部屋だといっても違和感がある。食堂だって居間だって同じく整えられていいはず。それに「人形が知る必要がない」ってどういう意味だろう。


 エマと私が人形達が置かれた棚から離れると、マークスは安心したのか話す気になったようだ。


「役目を果たせない金目の乙女の末路を聞いたか? 私はどうにかしてやりたいと考えた」


「私も不自由にはなりたくないです。回避できる方法があるなら教えてください」


 一応私にも考えはあるが。あれをどう使うのかわからない。


「次の王となる者に託そうとしたが、その時にはすでに手遅れ。それでも何かできないか考えた末にたどり着いたのが、全てを取り込む事だ」


 乗り移るでなく、取り込む? ドロドロの体でできそうな事は、同じくドロドロにでもする気かしら。ラウルならそんな事になる前にやっつけそうよね。胸騒ぎはするが、きっと大丈夫。魔爵様ですもの。


「おびき寄せるのは簡単だった。ドガールが瘴気にまみれた金目の乙女を捕らえたと聞いてすぐにやって来た。神が瘴気を吸い込んだら、どんな災いが降ってくるかわからないからな」


「神? エマ様は人だったんですよね」


「本当に何も知らないのね。どこで途切れたのかしら。最初に現れた金目の乙女は月の女神の化身。私達金目は神の子よ」


 多分伝わっていないのはご先祖様がきちんと書き残してくれなかったからです。神話だってまだ知らない三冊目があるらしいし。あるなら読ませていただきたい。


「瘴気まみれのエマ様を救い出すために、ラウル様は正体をさらしてしまった。あれを誰にも見せたくなかったんだろう。自ら石に入り結界を張った」


 何となくそうかもと思った事が度々あった。石の中から魔法を放ち放題でしたからね。


「中で何をしているんですか? エマ様も一緒に入っていたって事ですよね」


 またしても私以外の女性と二人きりでしたか。出てこないって事はお気に召したのでしょうか? そろそろ本気で怒りますよ。 


「もう少しで私達は溶け合うの。取り込めないほど瘴気を吸わせているから、次期に自我がなくなってラウルは私の中で眠り続ける。ちょうど体も手に入るし、また自由に外へ遊びに行ける」


「勝手なことばかり言わないでください。まるで子どもね。いえ、本当は小さな子どもじゃないの?」


「違うわ。私はもう大きくなったの。ほら背だって伸びたし、何だって知っている」


 見た目は大人だったが、子どもで間違えないだろう。ドロドロだって、大人が溶けたにしては量が少ない。化けてたのね。


「ノエル様。あなたに一度会いに行った事がある。幼いあなたはエマ様と同じくらい歌が上手で、私は聴き入ってしまった。一度は逃そうとした。助けてもここにたどり着いてしまった」


 私の足元に魔法陣が現れる。転移とは違う。


 気づくと視界が狭い。声も出せない。何処かに閉じ込められたのかな。 


「まぁ新しいお人形ね」


 エマのドロドロの手が私に触れる。もしかして私、人形にされてますか?

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