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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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隠された屋敷

 ほんの一瞬だけ姿を現したが、すぐに消えた。暖炉の火が作るノアの影から手が伸びる。気づかぬうちにエドガーの手から石が消えた。


『これはすごいな。実際に手にすると、私まで浄化されそうだよ』


 手は石に書かれた文字をなぞる。


「エマはとても優しい子で魔獣達に慕われていた。どうしてああなったんだろう」


 寂しそうな。憐れむような。力のある魔獣達が彼女のそばに付いていた。巧妙に隠された彼女を止められなかったと悔やんでいる。本人だけがまだ人だと疑わず、この不確かな世界を彷徨っている。


『ユーグ様ですね。ノエルはここに来たのでしょうか』


『君が逃げまわるから、あの子は追いかける。もう解放しておやり』


 エドガーに投げ返された石は、割れそうなほど熱くなり、冷たくなった。中で葛藤しているのか、また熱くなった。


「熱っち。少し落ち着け」


 付き合いきれないとエドガーは石をテーブルに置いた。


「ラウル。こちらはどなただ? 紹介して欲しい」


『数代前の魔獣王ユーグ様だ』


 リシャール、エドガーが頭を垂れる。


「エマというのは金目の乙女なのでしょうか」


「彼女は私と共にここで過ごすはずだったが、少し。いや、かなり嫉妬深くてね。最期を迎える雌魔獣にまで私を近寄らせようとしない。おかげで私はいまだここに存在するはめになったよ』


 エマは白い影を見つけては何処かに隠した。ユーグは救われない魂を探して回り、地に還す。エマが存在する限り永遠に終わらない、いたちごっこ。終わるまで自身が地に還ることはできない。


「何それ。酷い話だね。僕も嫉妬深い女の子はお付き合いしたくないな」


 王様はどの世界でも責任が重すぎる。自分には無理だ。弟が優秀で良かった。


「悪さをしないように封印して、違う女性を選んだのは、この地のためでもある」


 お付きの魔獣が逃すとまた封印。魔獣は殺生をしない。殺されないと知っているから始末に負えない。


 私の頃はまだ人とも上手くやっていた。平和そのもの。年月が経ち、魔獣が瘴気を取り込んでいることを憂いていた。


「この先も同じなのでしょうか。瘴気が人の心の弱さからくるものなら、止めようがない。ラウルもずっと気にしていたな。研究ってそれに関係するのか?」


『そうだ。魔獣を瘴気から解放する。そのための方法を探していた』


 ラウルはそれ以上のことは言わなかった。


「さて。そろそろ夜が明ける。隠された屋敷への扉が開くぞ」


 ユーグが転移魔法陣を床に展開した。


「ラウル。自身とあの子を信じろ」


 影はノアに戻ると、ふらりと何処かへ行ってしまった。また白い影を探しに行ったのだろう。


 魔法陣を使って転移。オベールの屋敷の前に立っていた。


「ここにはもう誰も残っていないのに。俺たちに探せって事か?」


『裏へまわれ』


「何もないぞ。一体ここに何があるんだよ」


『目の前にあるだろう。大きな屋敷が』


 日が昇り、オベールの屋敷の影が一層濃くなる。


『少し影の中を歩いてくれ』


「人使いが荒いな」


 エドガーの手に乗る石から金の糸が垂れて、入り口はここだと指す。


『入るぞ』


 今度こそノエルを向こう側へ送る。


 ***


 可愛らしい部屋には、新しい花が飾られていた。エマがいつ戻ってきても良いように、整えられている。とても大事にされてると感じた。


「私はあの小さな家の方が好きよ。実家は豪農でそれなりに暮らしていた。父は領主となり、貴族となった。それはすべて当時の王子と婚姻させるため。大勢の人がペコペコと頭を下げてすり寄ってくるのは面白かったけど、私のお相手は魔獣王様だけ」


「お慕いしていたんですね」


「それはそうよ。幼い頃から人よりも魔獣と過ごすことの方が多いのだもの。父もお金に目がくらんで王族に嫁がせようだなんて馬鹿な考えを持たなければ、長生きしたのにね」


 のんびりとした口調に油断していたけど、やっぱり怖い方でした。エドガー様のご先祖様にならなくて良かった。それだけが救いです。


「お兄様にお会いにならなくて良いのですか?」


「いいの。また閉じ込められたら困るから」


「溺愛なんですね。私に兄はいませんから羨ましいです」


 エドガー様と結婚すればリシャール様がお兄様か。なんだかんだ言っても頼りがいがあるお方。


 噂をすれば、マークス様がやって来た。


「エマ。すぐに戻りなさい。体が保たないよ」


「ノエルが体をくれるから大丈夫よ。私よりは見劣りはするけど、変わらずに尽くしてね」


 決定事項みたいに言わないでよ。あげません。美味しいもの食べたいし、続きが気になる本があるの。あと見劣りって酷い。


「マークス様も魔獣だったんですね。高位の方は本当に人と同じで、気づきませんでした」


「なぜここへ? 怖い物知らずにもほどがある」


「ラウルを閉じ込めたのはあなたですね。なぜ可愛がっているエマ様まで閉じ込めたのですか?」


「人形が知る必要はないけど、いいか。このお姫様はもう君が気に入ったようで離さないだろうからね」


 ラウルを閉じこめた犯人だけは見つかりそうです。

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