表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/62

ここにはない場所へ

 ノエルが地下室を出ると、隠れていたエドガーが姿を現した。ドガールは眠らせたがすぐに覚醒するだろう。ご自慢の袋を被せた。


 檻の前に立つと魔獣にかけた、心の内を話してしまう魔術を解いた。禁術だがエドガーは何も言わなかった。


『大した情報は得られなかったが、今後ノエルに接触させない』


 血肉でも喰らうのかと魔術を仕掛けたのに、乳搾りを始めた時は二人で大笑いしそうになった。そしてノエルが入ってくると慌てて隠れた。


『お前、冷気放ちすぎ。ノエルが凍えたらどうする気だ』


『あいつに雷落とせと言ったお前が何を言う? 屋敷ごと崩れるぞ。それに今なら抱いて暖められる』


 バチン。また頬を叩かれた。痛いと感じはするが所詮は人の体。王子様の顔に手形がつこうが問題なし。


『ドガールを転移させる。魔獣達は後で母上も呼んで解放してくれ』


『ドガールをどうする気だ? 始末するのか』


『<ここにはない場所>へ連れて行く』


『それはどこだ?』


『人は知らなくていい』


 ラウルは瘴気を出さないような魔獣まで封印し滅していた前団長を、圧倒的な魔術をもってねじ伏せ追い出した。自領にクリスタ様と魔獣保護区を作り、人里に現れた魔獣全てを保護区に送り込んだ。聞けば元々住んでいた場所に帰しただけと言う。


 話を聞きたい。共に魔獣と共存できる世にしたい。友人になれるかと私邸を訪ねたが拒まれた。兄とは上手くやっているので王族だからが理由ではない。ただの変わり者と位置づけた。


 それでも実力は認めている。誰も見たことのない魔術を使い、いつも何処かへ出掛けている。かと思えばいつの間にか執務室に現れる。兄以外に親しい者はいない。謎だらけの魔術師。


<ここにはない場所>。人の入れない場所ということか。ならばラウルはなぜ入れる?


『もう少しで組み上がる。発動と同時に僕は消えるから、後は頼むぞ』


『わかった。それにしてもさすがだな。こんな複雑な魔法陣…。これは古代文字?』


 ラウルは返事をしない。


 ***


 夕食の支度をしていると偽神父がつまみ食いにやって来た。


「旨い。マリエッタに家事を押しつけていた割に手際もいいな」


 あの子、どこでも同じように吹聴していたのね。もう人に戻らなくてもいいかも。


「マリエッタが一日中教会にいた日が月に何度もありましたよね。メイド一人いない我が家を誰が片付けていたとお思いですか?」


「夜中にマリエッタがやっていたのだろう? 朝起きられずいると、お前に酷い仕打ちを受けたと泣いていた」


「あなた、マリエッタの手を見たことある?」


「ああ。白魚のような綺麗な手をしていたな。あんな姿にならなければ俺だって……」


「その先は結構です。家事をこなしている手はこのようなものです」


 クリスタ様からいただいたクリームを塗ってもまだ荒れている手と腕についた傷跡も見せてやる。


「マリエッタが嘘をついていると言いたいのか?」


「ご想像にお任せします」


 腹が立つわね。こんな時は欠けたカップを思い切り叩き割るのが一番。あっ。地下にカップ忘れた。取りに行こう。あれは好みの柄だった。曾お爺様のものなら私がもらっても構わないはず。


 ***


『そろそろだ。僕が離れたら意識を失うかも知れない。頭打たないよう気をつけろよ』


『お前はその訳のわからない場所から戻れるのか?』


『心配してくれるのか。王子様はお優しいな』


『ノエルが悲しむ。それと石から出てきたお前と僕のどちらかをノエルに選んでもらう』


『もう答えは出ているだろう。頼んだぞ』


 ピンと張られた金の糸は輝きを増す。


「ドガール様~。まだ寝てますか。えっ? エドガー様はここで何を!」


 金色の巨大な古代文字が浮かび上がる。引き寄せられるように足が勝手に動く。


『ノエルが巻き込まれる! 頼む!』


 エドガーの体から黒い影が剥がれ落ちた。


「ノエル! 戻れ!」


「エドガー様! あれは、あれはラウルだよね。あの影はラウル。ラウル!」


 影はゆらゆらと揺れながら、私をじっと見ているようだった。


 駆け寄りたいのに、エドガー様に行くなと体を押さえつけられた。ラウルがすぐそこにいるのに、なぜ止めるのよ。


 ふいに唇に温かい影が触れた。その瞬間目の前は暗闇になり、気づけば1階へ戻っていた。意識のないエドガー様が逃すまいと私の手を握っている。


「ごめんなさい。自分にもう嘘はつけない。行きますね」


 ノアを呼び寄せ、先ほど見た古代文字を唱えた。そして愛しい人の名を呼んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ