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石になった元婚約者のお世話係になりました  作者: ななこ


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33/61

地下は牧場でした

 偽神父の許可をとって地下へ降りた。逃げ出したと思われてはエドガー様に何をされるかわからない。


 ドガールに黙っててやるから、夕飯はもっと手の込んだものにしろと約束させられた。だったら食材くらい用意してよ。私だってエドガー様に栄養あるもの食べさせたい。


 魔獣達は眠り続けていた。よく見ると檻に入っているのは雌ばかり。


 やば。ドガールがいるじゃない。でもちょっとお疲れ気味というか、以前より老けて見える。


「魔獣を見ても恐れないか。さすが金目の乙女だな」


「何をしているのですか?」


「見たことないのか。乳搾りだよ」


 ドガールは檻の中に入り、眠る魔獣から乳を搾っている。見ればわかるが聞かずにはいられなかった。


「それをどうする気ですか?」


「もちろん飲むのさ。村が襲われて一人残された時にどこからかやって来た魔獣が乳をくれてね。たぶん子を亡くしたばかりだったのだろう」


 泣き声を聞きつけた母魔獣は人の子だろうが放っておけずに、魔力の宿った乳を与えてしまった。腹を空かせた人の子は知らずにそれを夢中で貪った。


「不思議な、それまで感じたことのない感覚を覚えた。魔獣の魔力とわかった時は歓喜したよ。村人皆が魔獣の血が流れているのに両親とも人でね。私達家族だけが村で異質だった。私にはそれが屈辱だった」


 大した魔力も持たない両親が目の前で事切れようが哀しくもない。腹が空いて泣いていただけ。当時の魔術師長達が見つけた時、吐く息が魔獣臭く、庭に横たわっていた魔獣の屍を食べていたと勘違いされた。


「お乳を飲んだくらいで魔獣になれるものなんですか?」


「これのおかげで古代文字が理解できるようになり、姿が保てる」


 コップに取った絞りたてのお乳を飲み干すと顔のしわがなくなり若返った。どんな高度な魔術を使っているのかと思えば、なんてことはなかった。


 保護された幼獣のお母さん達はここにいた。坊や達に返してあげるから待っててね。


 足りないのかまた別の母魔獣から乳を絞り出す。悪人面で手際よく乳搾り。どうみても違和感ありありだけど、魔術師を引退したら牧場主になれそうです。


「一人では味気ないな。君も飲むか?」


「そのような貴重なものをいただくわけにはまいりません。それに私には不要です」


 19歳の乙女が飲んで子どもにでもなったら大変だし、飲みたくないです。丁重にお断りすると、こんな不味いものよく飲めるなと言いながら、お茶を偽神父に運ばせた。見た目も香りも人の飲むお茶だがこれもご遠慮した。


「あなた様は人でも魔獣でもないものに見えます」


「わかるかね。神に最も近しい存在だがまだ力が足りない。忠実に仕えるものも用意しなくてはいけない」


 生き神になって祀られたいのかしら。これからは無神論者になろう。献金もしなくて済む。


「赤い布で人を異形に変えているのはそのためですか?」


「そうだ。お前の従妹のように自ら進んでなる者ばかりじゃないからな」


「マリエッタを騙したのではなくて? 人に戻る方法はあるのですか?」


 人に戻るなど愚かだと鼻で笑われる。マリエッタは金目でないこと。古代文字が少しも読めなかったことに劣等感を持っていた。低い爵位の娘。それさえも失い、誰よりも優れた存在になれるという甘い言葉に乗ってしまった。


 凡人に貴重な乳など飲ませられない。布にしみこませた血をこすりつけるだけで十分だ。私には魔術師用に『服従』と書かせたかったらしいが、書いたと見せかけただけなのは、ばれていた。


「マリエッタの腹の子はあなたの子ですか?」


「違う。どこかの猿にでも種づけされたんだろう。何が出てくるか楽しみだな」


 猿呼ばわりされて。ラウル、あなた相当嫌われてるわよ。もしかしたらと期待したがもう確定でいいだろう。自分の諦めの悪さに嫌気がさす。


「人を憎んでいるのですか? 全ての人を異形に変えるおつもりですか?」


「なぜ下等な生き物を憎む? 魔獣もそうだ。簡単に人を蹂躙できるのに、その力を使わない。どちらも哀れむ存在だ」


 完全にいかれてる。お乳を飲んだら寝てくれないかしら。それにしてもよくしゃべる。文字入りクッキーを食べさせてもないのに、どうしたことかしら。できるだけ聞いておこう。


「あなた様は魔獣の血をお飲みになってましたね。あれは?」


「君は女性なのに知らないのか。乳というのは母親の血液からできている。強い雄の血からも魔力を取り込まなければ完全体にはなれない」


 ここでまともなお話まで聞けるとは思わなかった。だから妊産婦さんは貧血にならないようにと言われるのね。覚えておきます。


「やはり金目の乙女は渡さずに私の妻としようか」


「そろそろ上に戻りますね。夕飯の準備をしなくては。それに急に冷え込んで寒いです」


 怪しげな言葉が聞こえました。早くエドガー様に元気になっていただかなくては。逃がす前に舌をかみ切りそうです。でもその前に凍えて死にそう。本当に寒い。


 魔獣達は寒くないかと檻の中を見ると蜘蛛魔獣の金糸があちこちに張ってある。珍しいのかと思ったらどこにでもいるのね。


「ドガール様?」


 眠ったのかしら。今のうちだ。引き留められないうちに屋敷内に戻ることができた。

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