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1回目の人生終了。そして暗闇から始まる二度目の人生

突然だが、君は人に敵意を向けられた事はあるだろうか?

俺はない………と今までは言い切っていたが、どうやら俺はその敵意に殺されたらしい。



オフィスにいたはずなのに、背中が暖かい。

目が霞んで見えにくいが目の前には自分の手がある。倒れてるのか

周りがすごく騒々しく感じて、でも何がどうなっているのかは耳がこもっていてよく聞こえない。

体が鉛みたいに重くて指の先しか動かすことができない。


あっ目も一応動かせるみたいだ。

さっきから誰かが叫んでるな、誰だ‥?


その人間が屈んできて、はっきり目が合った。

倒れ込んでいる自分を恨めしそうに、まるで殺しそうなほどの目線を向けてくるのは、さっきまで一緒に楽しそうに話していた部下だった。




ーあぁ、俺、刺されたのか。









「せーんぱい!何してるんすか?俺もまぜてくださいよぅ〜」

「っおい!危ないだろ三森」

「すみません〜先輩〜あっ、コーヒー奢ってくださいよ!」

「…ったくお前は」


飲み物を買おうとしていた時に俺の肩にだれかが突っ込んできた。

後ろを向くと少しチャラめの青年がニコッと笑った。こいつの名前は三森。

俺の二個下の後輩で見た目とは違い優秀なやつだ。

悪気なく愛嬌たっぷりで謝るその仕草はかわいい後輩と言って間違いないだろう。

しょうがないなと笑って手を軽く伸ばすと、少し低い位置にある三森の頭に思いっきりチョップを叩き込んだ。


「いっったい!何するんすか!体罰っすよ体罰!パワハラだー!」

「はいはい、わかったわかった。ほらお詫びにコーヒーやるよ」

「マジっすか!やっぱり嘘です!先輩マジサイコー!」


ギャーギャー喚く後輩を黙らせるべく俺のコーヒーを三森に投げ渡してやる

すると案の定手のひらを変えて喜ぶので少し呆れたがその態度を見ても悪い気はしないので、ほんと先輩の扱いが上手いなと思う。



「先輩はこれから帰るんすか?」


お互いコーヒーを飲みながら休憩所を出ると三森が聞いてくる。


「んーそうだな、もうやる事は全部やったし帰るつもりだけど、お前は?」

「俺は残業ですよーうへぇ手伝ってくださいよ先輩〜」

「お前またサボってたな?」

「ははっバレました?」


そうやって笑う三森の肩に空いている手で2回ほど背中を叩く。


「いってっ」

「俺は今日予定があるから手伝えないけど頑張れよ」

「………それってデートですか?」

「ん?」


一緒に歩いてたはずの三森がオフィスの入り口でいきなり足を止めるものだから思わず俺も足を止める。

さっきとは違うような声が冗談を言っているように聞こえなくてなんだか腕がゾワっとした。


「いや?俺にそんな子いないって。もう30近いし、お前知ってんだろ?」

「いつも仕事も早いっすよね、周りの気配りもできて」


冗談で言われるのは何回かあったが、初めて聞く声色に俺も少し緊張して体が強張り始める


「お前だって仕事は早いじゃないか ミスも少ないし、いつもさりげなく気を配ってる。それにこんなおっさんよりもお前みたいなやつの方がモテるだろ」

「受付のみゆきちゃんが…先輩のこといいなって言ってるの聞いたんすよ」


コツ、コツ、


足をゆっくりと進めてくる三森に頭の警告がガンガンなっている気がして、俺も一歩、また一歩と後ずさる。


「いっつも謙虚で爽やかで…本当に嫉妬する」

「三森、今日はもう帰った方がいい。きっとお前疲れてるんだ 仕事の件はまた後日俺が手伝ってやるから…」


ゴンと後ろのデスクにぶつかった。それでも三森は止まらずにじり寄ってくる。

まずい、なにか、まずい気がする。


「三森!俺もう用事の時間が迫ってるから今日はもうかえ…」



ドンッ


そう言って後ろを向けたのがよくなかったのだろう。

俺の体は後ろからの衝撃で前に勢いよく倒れた。





いだッ!?


いってぇぇえ!?なんだ!?

急な痛みと出来事で受け身が取りきれず、デスクの上の物を巻き込んで一緒に床に倒れ込む。


ゔっ、

倒れ込んだ勢いで内臓が圧迫され、息が詰まり呻き声を上げた瞬間に背中に何かが乗っかってくる

続けて背中に衝撃が二回。


熱い、なんだ、なんだこれは


「ずーとその態度が嫌いだったんだよ」


何を言っているのかがわからない、何がどうなっているんだ!?


「俺よりも優秀で女にモテるくせに…」


立てない、力が入らない。


「ずっとその周りに気を使えます。気にしてませんって態度が気に食わなかった!」


ああ、目の前が霞む…さっきまで熱かった背中はもっと熱くなり、背中以外が急激な寒さを訴え体が震えた。

頭から順に血の気が引くような感じがして少し冷静になれた。


(三森…)


そうか、俺は…

もはやなんの命令も聞かなくなった体は人形と変わらないだろう。

フ…と背中の圧迫が軽くなって息がしやすくなったからか過呼吸が酷くなる。何かが上を跨いで目の前に影ができる。

瞑られようとしていた瞼は頭皮の痛みで思わず目を開いた。

ぐいっと持ち上げられた目の前には俺を殺しそうなほどの眼光と殺意。


(……俺は刺されたのか、三森に)


「どうせ俺のことも見下してたんだろ」


(何を喋ってるんだ…)

声が篭って聞こえづらい


「かわいそーとか思ってたんだろ?」


(何を伝えたいんだ…)

この音を聞くと頭がガンガンして仕方がない。


「バイバイ三鷹裕司(みたかゆうじ)センパイ。せいぜい来世は謹んで、

周りに能力をひけらかさない()()()になれよ」


目の前に突き出されたのは俺の背中を刺したであろう赤く染まったナイフとハッキリと聞こえたその言葉。


(そうか、お前は俺のことをそういう風に見てたんだな…)


そう思った瞬間に俺の視界は暗闇を映した。








最後の記憶はここで終わりだ。 

人は意外とあっさり死ぬもんだと思った。あっさりと言うかガッツリ?

さっきから暗い道をずっと歩いてる。どこだここは?

歩いても歩いてもどこにも辿り着かない。合っているのか?

しかしこう言う場合どうなるんだ。未練があればきっと幽霊になれるだろうが、たった今殺されたばかりなんだ。今の俺にはそんな気力はない。

天使が迎えにきたりするんだろうか?そういうの信じてないんだよな俺。


ずっとこんな感じなのかと当たりを見渡すと遠くの方に光のようなものが見える。

おぉ!光だ!よかった。ずっと歩かなきゃ行けないのかと思ったぞ


居ても立っても居られなくなって思わず足のスピードが速くなる。

その光の先に何があるのか、これから何が待ち構えているのか、


サラリーマン 三鷹裕司 享年28歳。


そして、これから起こる出来事は三鷹の考える想像を遥かに超えていて、一体何が起こるのか、三鷹は知るよしもなかった。




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