表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ空の下で  作者: 桜油
7章
94/140

88話

こんにちは。


ここで話すネタもなくなってきたので、

早速本編どうぞ。

ホールの入口まで戻ると、宥、有希、紗季がそこで待ち構えていた。

俺達の姿を視界に捉え、宥が尋ねる。


「黒守くんや志瑞くんとの話は終わりましたか?」

「ああ、終わったぞ。司たちは?」

「既に練習を再開していますよ。 今は撮影しなくていいと言われたので、私も話をしようと思いまして」

「そうか」


俺がそう頷いていると、有希と紗季が少し申し訳無さそうに眉を下げていた。


「……ごめん。志瑞司が『どうしてもここを通りたい』って、強引に出て行っちゃって……」

「止めたんだけどね……『あんな切羽詰まった表情をするなら、彼奴はまた遠慮していることがあるだろう。最近どこか違和感はしていたのだ。それが嘘か真か、この目で確かめてくる!』って……」

「はは、志瑞くんらしい」


唯笑がそう笑い声を漏らした。

俺も「そうだな」と苦笑していたら、宥が少し驚いたように俺を凝視していたが、有希や紗季から耳打ちをされて「ああ。……それは良かったですね」と目を細めていた。


……そんなに前と違うか、俺。

……や、違うんだろうな。俺も心做しか、世界が違って見えるし。

世界を救えば、もっと色んな場所を巡れば、更に違って見えるかもしれない。そういう意味では、どこか楽しみですらある。その時は一人旅もいいが、唯笑と2人でというのも面白そうだ。今度、唯笑に訊いてみようか。……いや、黒守の問題を解決するのが先だし、俺や唯笑がその後任で提督にならない前提だが。


脳内でそう考えていると、宥が「ちなみに、どういった話なんですか?」と質問した。そういえば、宥は新しい提督のことを知らないのだったか。


「簡潔に言えば、志瑞司たちが控えている次の舞台が終われば、黒守采和が『提督』に就任することになっている。その件についてちょっとな」

「そ、そうなんですか?!」


案の定、宥はひどく驚愕していた。


「それはまた、どうして……?」

「他に何の問題もなく就任できる適任がいない。彼奴も、自分の本音をどこかで捻じ曲げてしまったのか、割と本気みたいだ」

「そんな……愛ちゃんたちのユニット、すごく楽しそうなのに……いや、だから総帥も愛ちゃんたちを広告塔にする企画を取り下げたんでしょうか……」

「そんな企画があったのか。……いや、まあ、十中八九、その件でユニットが解散になるからだろうな。新しい演出を仮に入れても、黒守らしい演出はきっとできない」

「……」


俺の返答に、苦々しげに顔を歪めた宥は、しばらく黙り込んだ後に覚悟を決めたような顔つきで口を開いた。


「なら、私が提督に」

「相当の覚悟を決めてるところ悪いけど、それは無しだね」


しかし、それを唯笑が遮った。俺も全く同じ意見なのだが、「どうしてですか?」と宥は納得できないようだった。

唯笑は語る。


「だって、今の宥ちゃんは舞月財閥と、護衛としての雇用『契約』をしてるでしょ?提督の条件に該当しないんだよね」

「なら、その契約を破棄しましょう。財閥に所属しなくても、『軍』の提督なら愛ちゃんたちを守れます」

「いやいや、そりゃないよ。契約破棄してみてよ、財閥からの心象はスッゴイ悪くなるじゃん?財閥は『軍』のスポンサーだよ?財閥の企業理念を考慮すれば流石にスポンサー契約破棄とまではいかないだろうけど、それでも、財閥より『軍』を優先した魔術師がトップって印象には変わりない訳よ。いざと言う時にスポンサーに何も補填しない可能性があるトップ、という穿った見方もされちゃうかも。それで出資額を下げられたら割としんどいよ?印象勝負なんだから」

「それはそうですけど……それを言ったら、彼だって似たようなものでしょう?企業戦略を1つ潰していますし、愛ちゃんたちの

ユニットを解散に追い込むに等しい所業ですよ」

「そうだけど、前提条件が違うよ。拝郷が本気でサポートしてる。企業戦略の1つくらい簡単に代案を用意してるだろうし、残された3人の将来の進路も絶対何か策を用意してるとみた。その時点でデメリットはほぼ無視できるよ」

「私だって、護衛は代えがきくじゃないですか」


と、あまりにもあまりな反論を宥がするので、俺が助け舟を出すことにした。


「あのな、宥。たしかに護衛は代えがきくけど、お前の場合は少し事情が違うだろ。何だ、『互いの両親と挨拶を済ませ、婚約まで交わしたけど、職場の都合で婚約破棄しますね。嫁は代えがきくでしょ?』って言うつもりか?」

「そんな訳無いじゃないですか、極論が過ぎません???」

「ところがそこまで極論でも無いんだな、これが。財閥は本来、どの職種であっても大卒以上じゃないと雇用されない。だが、宥は高校卒業すらしていないのに、『軍』で幹部をしていたという実績と、舞月愛とは親友同士だという理由から、護衛として雇ってもらえている。今の状態は縁故雇用に近い。そんな状態で、『軍』の提督になるとかいう理由で雇用の話を蹴ってみろよ、心象最悪になるぞ」

「……」

「それに、宥が提督になったら、俺たちも、舞月愛も心配するし、黒守はそれはそれで罪悪感を抱えながら演出家を続ける羽目になる。結局、誰も幸せにならない。だから、大人しく自分の夢を実現させてくれ」


そこまで言えば、宥は納得したらしかった。

その後、黙って様子を眺めていた有希が、「……僕も、紗季も、『教会』に入ったから無理になるの?」と訊いてきたので、それにも答える。


「ああ。そういうことになるが……まさか、提督になろうと思っちゃいないよな?」

「当然。僕たちはひろに恩返しをしたい。横流しされた『実績』らしいものはあっても、後ろ盾がほぼ無い状態での就任。まだ納得していない勢力もある以上、傍で支えないといけないから」

「ああ、安心した。提督になると言い出していたら、まさにその観点から説得しようと思っていたところだ」

「れんは、どう説得しようとしてたの?」

「うん?そうだな……」


『軍』『教会』は長い間争い続けてきたから、講和こそ結んだものの、それを無視して無断で戦闘を仕掛ける輩がいないとも限らないし、講和を無かったことにしようと、全権代行の暗殺を考える奴までいるかもしれない。有栖の傍を離れたら、『教会』でそういったことが起こって、抗争が再開されるかもしれない。そうでなくても、『軍』内部には、『教会』に流れた有希、紗季を『裏切り者』と考える魔術師がいるらしい。そんな2人が提督に就任すれば、『軍』のそういった勢力を刺激しかねない。

せめて、その悪感情を整理、解消できた後なら、元々『教会』に所属していた魔術師でも『提督』に就任できるとは思うのだが。


俺が紗季の質問にこのように答えると、「うわあ……」と思いっきり顔を顰めていた。一応、『軍』から『教会』に同盟締結のために出向している、ということに表向きは処理しているからこれで済んでいるだけで、正式に『教会』に加入したことを公表した暁には間違いなくもっと荒れる事間違いなしだ。俺も想像するだけでげんなりしてくる。


まあ、背景はどうであれ、3人とも『前回』よりは間違いなく幸せだ。世界が滅亡しなければ本当にハッピーエンドってやつである。裏に否応なく巻き込まれた立場である3人だからこそ、表に居場所を見出したなら表で、裏に留まりたいと心底願う理由があるのなら裏で、自分らしく充実した人生を謳歌してほしいものだ。


『前回』、3人を殺そうとしていた立場の俺だからこそ、そう切に願うのだ。

唯笑は更に強く、そう願って止まないんだろうな、なんて考えながら。

これで、『教会』と志瑞司たち、『JoHN』の仲間の話は終わりですね。

他勢力についてもちゃんと触れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ