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同じ空の下で  作者: 桜油
7章
91/140

85話

こんにちは。

今日こそ登場人物一覧更新します。

用語集は、そこまで新しい用語出たわけじゃないし良いかなあって。


では、どうぞ。

育のアポ無し突撃から暫く時間を置いて。

俺、唯笑、有希、紗季、有栖の5人で会談を再開していた。


「さて。改めて、自己紹介をば。おれは有栖大登。『教会』……近日中に『協会』にリニューアルするんだが、そこの全権代行を僭越ながら務めている、凡人魔術師だ」

「嘘つけ。凡人が小2の段階で『伝達』の傍聴ができてたまるか」

「それにあの『教会』で10年生き残って、しかもたったの4年で幹部になってるんでしょ?凄すぎ」


有栖のとんでもない自虐に俺と唯笑が総じてツッコんだが、「いやいや2人のほうがおかしいから、本当に」と謙遜していた。

……あくまで『前回』の記憶があるからこその立ち回りなのだが、その辺りは高式から何も聞いていないのだろうか?


「一応きょうちゃんから『前回』がどうとかは軽く聞いたけど、ぶっちゃけ一周目の君等にすらおれは勝てる気しないね」

「そうでもないぞ」


戦い方を見ていないので一概には言えないが、幹部ということは、逆行して間もない頃に俺を襲った魔術師とほぼ互角かそれ以上の実力ということになる。もし『決意』が使えないままなら、そもそも唯笑が駆けつけなかったら、あっさりあの魔術師にとどめを刺されていただろう。その時点で、『前回』の俺よりは彼は強い、と推測できる。


それよりも、気になっていることがあった。


「……というか、れんれん、とか、ゆいっち、とかって何だ?」


そう尋ねた俺に、有栖ではなく有希が答えた。


「怜。ひろは、気に入った相手には独特なあだ名をつけるんだ……」

「独特っ!?おれのネーミングセンスはパーペキだろ、独特とか言うな!」

「いやぁ?ひろ、結構個性的だと思うけど。私たちのこと、合流してから暫くは『ゆーふぉー』『ささき』って呼んでたじゃん。あれ、嫌だから止めさせたんだよ?」

「紗季まで!?」

「うわぁ……」

「れんれん、君に引かれるのが一番傷つくから止めて!」


とやいのやいの騒ぐ中、唯笑が肩を震わせていた。


「唯笑、お前からもなんとか言ってくれ。さすがに裏の界隈でそう呼ばれるの恥ずかしいだろ?」

「ふふ……っ、それだけ気に入られてるってことだよ、れんれん……っ」

「ゆいっち、おれのあだ名にそんな面白い要素ないんだけど!」

「笑ってもらえてるだけマシ説……」

「有希が辛辣すぎる……」


有栖がしょげている間にも、唯笑は爆笑し続けていた。


「れんれん。れんれん。ははは、パンダみたい、あははっ!」

「勘弁してくれ……」


有栖に呼ばれるならまだしも、唯笑からそう呼ばれると一層恥ずかしい。羞恥で顔が異様に暑いのを、手で仰いでなんとか誤魔化していると、3人がこちらを意外なものを見たように凝視し始める。


「何だ、何見てるんだ?」

「いや……れんれん、表情が顔に出るキャラと思ってなかったというか……」

「お前のユニークすぎるネーミングセンスなんぞ誰でも恥ずかしいし香ばしいし痛々しいだろ。文句あんのか?」

「ひでえ!いや、文句とかじゃなくってさあ……」


解った、怜って普通に呼ぶよ、なんて有栖は肩を竦め、俺は「ああ、ぜひそうしてくれ。唯笑からパンダみたいに呼ばれるのは本当に嫌だからな」と返し、唯笑が少し残念そうにしていた。唯笑もそんな顔してないで、頼むから普通に名前で呼んでほしい。そう切に願う。ジト目で唯笑を見返せば、「しゃーないなあ。今まで通り、怜って呼ぶよ」と笑っていた。


「……なあ有希、紗季。怜って前からあんなんだった?」

「……正直、違う気もする」

「少し……んー、何ていうかな?とっつきやすくなった?気もするよね」

「なるほどねえ……これもアリ!更に推せる!ビバ!イナフ!」

「ゆうくん、ひろは何を言ってるの?」

「しっ、紗季……いい子は見ちゃ駄目だよ……」

「まさかの不審者扱い!?」


閑話休題。

同盟、講和については事前の連絡での概要から修正がほぼ不要のため、そのまま締結されたのだが、話題は全権代行の件に移った。


「でさー、怜に唯笑。次の『軍』全権代行って、実際どうなん?」

「弟くんでしょ?刹那さんとなんだかんだ似てるし、悪い方向にはいかないでしょ」

「それはそう。だけど、彼奴、元々精神的な療養で長期休業してたっしょ?肉親ゼロ、大切な仲間の元を去って引き継いで、でもサポートがいるかって言われると微妙。そんなんで長続きすんの?また精神的に壊れるんじゃね?」

「俺が心配してるのは正にそこなんだよな……」


有栖の問いに、俺は頭を抱えた。


全権代行に就任する条件は各組織によって異なるが、中でも、国を背負う組織として『軍』のそれは一等厳しい条件が課せられている。

『軍』または『軍』と同盟関係の魔術組織で幹部、あるいは幹部候補生としての経験があること。

『軍』から課せられた任務や依頼を除く犯罪歴が全く無い、もしくは犯罪歴があっても、情状酌量あるいは正当防衛が認められる範囲であること。

『軍』所属の魔術師と交わした『軍』に直接利益やメリットを齎す契約以外で、『国際魔術連合』を除く全ての個人、組織との契約を既に満了済みかそもそも締結をしていないこと。

この3つを満たしていなければ、『軍』の『提督』を務めることはできない決まりとなっている。


そして、現在それに確実に該当するのは桜乃夫妻、俺、唯笑、黒守である。

宥はもう舞月財閥と雇用契約を内定させている状態、有希と紗季は『教会』の有栖大登と個人間で契約をしている状態、拝郷は様々な魔術師と契約を交わしていることから条件に該当せず、『提督』候補からは除外される。


経歴を鑑みれば、前任者、その前任者の頃から幹部の業務をこなしている桜乃夫妻がもっとも相応しいし、何度か『国際魔術連合』からも打診を受けていたはずだが、桜乃夫妻は思うところがあるのかその一切を断っている。

俺と唯笑は将来の進路を考えると、『軍』をいずれ抜ける必要があるだろう。

そして黒守刹那は既にそういった手続きをほぼ完了させていて、後は俺達が自主的に『軍』脱退、『国際魔術連合』への組織結成の手続きを行うだけとなっていた。今からその話を覆すのはだいぶ厳しいものがある。


そういったわけで、確かに黒守しか就任できる魔術師はいないといっていい。黒守采和の精神衛生や、ここ数年でできた彼の親友を気にしたところで、代役がいないわけだ。


……厳密に言えば、もう1人いないでもないのだが、無理強いは良くない。

散々裏に振り回されてきた中、『軍』の全権代行をやりたがるのだろうか、と問われれば否と答えざるを得ないだろう。それに彼女の立場は、今の情勢ではあまり良くないとも言えるし。

そも、彼女に無理強いをするくらいなら俺自身が『提督』を務めるべきだと考えているし、そうなれば桜乃夫妻が俺から無理やりその地位を奪うだろう。


……最悪、提督が前にしてくれていた処理を全てひっくり返してでも、俺が黒守を無理やり追い出して就任するしかないのかもしれない。


有栖も同じ思考に至ったのか、「難しいなあ。いっそ他の組織みたいにゆるくすればいいのに」と愚痴を漏らし、「国を背負うんだからそんな気軽に決めれるもんじゃないでしょ」と唯笑が窘めていた。


「うー。あ、そうだ。きょうちゃん。あとつーさんとか、ことっちはどうよ」

「高式は犯罪歴に情状酌量も正当防衛も適用できないってこの前『国際魔術連合』が見解を述べてたぞ」

「綴ちゃんは裏とか大嫌いだし、多分やんないだろうなあ」

「……執行さんは『陰成室』で忙しいでしょ……」

「えっと……ほら、『放蕩の茶会』って他にも3人いるでしょ、そいつらは?」

「それこそ綴ちゃんについてくでしょ、やらないと思うな」

「あーもう、じゃあ最近話題の、桜坂学院?だっけ?そこの生徒会とか」

「黒守采和が死んでもやらせないだろ」

「じゃあじゃあ、『国際魔術連合』にもう任せちゃえ」

「「「「それこそ論外」」」」

「おうっふ、めっちゃ息揃うやん……じゃなくて、あれもだめこれもだめってじゃあ一体全体どうしたらいいんだ!」

「それを今悩んでんだよ!」


その後も意見を激しく交換しあったが、『軍』の全権代行についていい案は出ないままお開きとなった。

閲覧ありがとうございます。


『ここが良かった!』『これってどういう意味?』など、お気軽に感想、評価、ブクマをしていただけるととても嬉しいです。

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