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同じ空の下で  作者: 桜油
7章
90/140

84話

こんにちは。


昨日は夜ふかししすぎたので、ろくに頭が回りそうにないです。

でも仕事はいかなきゃ……


では、どうぞ。

城月育。

『城月怜』の戸籍上の妹に該当する、『教会』幹部の魔術師。高式暁の直属の部下という立ち位置の彼女は、有栖とは数年の付き合いらしい。


目的を果たす為に自由に動かせる人材が1人ほしい、と考えていた高式と城月育は、有栖の、清濁併せ呑みつつもあまり後ろめたいものを好まない善良な性格と、それでも『教会』で長期間生存して実績を積み上げることができる実力の高さを評価した。有栖が有希、紗季を逃がすように唆し、2人の脱出を陰ながら支援し、クリスに殺されかけている有栖を無理やり回収。そしていざという時の為に『心象魔術』『リンク』を仕込んだ後、『教会』を作り変えたいからそれに協力してほしい、とだけ告げて有栖を仲間として引き入れた、という経緯であった。


それもあって有栖は2人に対しては味方にも敵にもなりきれない微妙な立場で、複雑な感情で悶々としながらも、全権代行として有栖が思う最善を実行していたところで、城月育が乗り込んできた為のあのカオスな光景だと話してくれた。


俺たちが『光』だと言っていたのは、幼少期の有栖にとって『凄い魔術師』の象徴は俺と唯笑であり、小学2年の頃に『伝達魔術』と覚えたての傍聴の技術で俺たちの雑談を聞けたのは今でも誇らしい思い出なのだ、と嬉しそうに語っていた。多分しょうもない内容しか話していなかったと思うが、それでいいのか『教会』全権代行。


「いや、『教会』全権代行という仰々しい立場にはなったけど、こうやってれんれんとゆいっちと対等に話せるなんて思ってもなかった。有希と紗季も生きて、沢山幸せな経験をした後に、おれをサポートするために戻ってきてくれた。最&高。ここだけはそーちゃんときょうちゃんに感謝してる」


と独特なあだ名を用いながら感慨深そうに何度も頷いては腕組みをする有栖。相当友好的な態度だし、これなら講和、同盟については問題なく進みそうだ。とはいえ、結構大事な契約がかかっている会談。いずれ、俺たちは『軍』を抜けるので、対等に話せる機会も限られているし、後任者が契約をおじゃんにする可能性もないではないということを忠告したが、それについても彼はそこまで問題視していなかった。


「んー。まあそうだよねって感じ。寧ろ、おれの『光』らしく表社会で仲良く平穏に暮らしてくれ。それだけで充分……それに、君たちが選ぶ後任者でしょ?なら全く問題ないね。絶対そいつも良い奴なんだ、そうに決まってる」

「俺達に脳灼かれすぎでしょ」

「綴ちゃんや弟くんにとっての志瑞司みたいなもんなんじゃない?」

「ああ、なるほど、理解した」

「ああ、またこうやって以心伝心してる。これだよこれ、コレがずっと見たかった。頼むから世界終わらないでくれ、この光景が消えるとか何が残んのさ、いや何も残らないけど。もう無だよ、無。っていうか『陰成室』のことっちもそうだし、『放蕩の茶会』のつーさんもそうなんだけど、まじで何?尊い魔術師の周りには尊い魔術師が集まるの?なるほどこれは定理だな、類は友を呼ぶってやつだ。え、今からこの尊すぎて浄化されますゾーン同盟におれも加わるの?解釈違いというか蛙化現象というか、いや嫌うわけ無いんだけど何と言うか、おれ場違いがすぎない?そういや黒守采和とかいう魔術師が最近話題にまたなってるけど、後任者ってもしかして彼?うわあ、悪評が圧倒的だけど、ことっちもれんれんたちもそんなに気にかけてるなら絶対聖人魔神妖怪じゃん、いや当たり前だよな超弩級の聖人魔術師の弟だったわあの人。それにあの激推しユニットのメンバーだし。え、あ、でもつまり解散の危機ってこと?うわ最悪、解散とか世界滅ぶよ余裕で。とーくん頼むからこっちくんな!」

「うわ……キッショ……強火担だ……」


と引いている城月育に、すん、と「でもねそーちゃん、おれはそれでもそーちゃん達が夢を叶えるのだって応援したかったんだ」と真顔で言って、更に彼女をドン引きさせていた。


「『教会』を変える。そして、『教会』をやめて表で、幸せに、平穏を謳歌する。素敵な夢だと思ったさ。手段をその時は知らなかったし、手段を知った今ではとても全面的な味方になれそうやしないけど、応援したいって気持ちは本物だったと断言できる」

「……」

「まあ、思ってた内容の斜め上だったし、何なら今離れ離れだから情緒は死んだけど」


なんて諦観漂う有栖に、城月育は「……私、それについて我儘を言いに来た。って言ったらどうする?」と問いかけた。


「内容によるな。どうしたいんだ?」

「私、どうしても暁に伝えたいことがある。けど、私には今の暁は止められない。……だから、『お兄さん』。君はもう解った筈、だからその方法で暁を止めて。そして、ひろ。君1人に背負わせることになるし、今更なお願いだけど。『教会』を、私の故郷をよろしくおねがいして、いいかな?」

「……まじで今更かよ。最初からそう言っとけよ馬鹿」


有栖は深くため息をつき、肩を落としながらそうぼやく。

一方、俺は暫く考え込んでいたが、唯笑が「止めても育の夢が叶うとは限らないよ。それでもいいの?」と俺も疑問に思っていたことを口にした。城月育はそれに一瞬返答を躊躇し、それでもしっかりとした佇まいで、「……覚悟の上だよ」と答える。


「なら良し」

「……あっさり認めてくれるんだね?」

「まあ高式を止めるのは必須だからな。どういう結末になったとしても、お前と高式が会話する時間は設けるようにする。無論見返りはいらない」

「暁を止めた後、とんでもない作戦を打ち立てて、世界をぶっ壊すかもよ?『お兄さん』の力を悪用して、」

「その時はその時で止めるだけ」


そう断言し、ついでに「あと、俺を無理に兄として見なくていいぞ。血縁関係はともかく、兄妹らしい要素どこにもないだろ。俺もお前を妹として今更見れないし。互いにほどよい距離感でいようじゃないか。お前が俺を利用するなら、俺もお前を利用する……多分」といえば、彼女は、ふ、と声を漏らして破顔した。

今までの、自然なようでどこか不自然、歪んでいるような笑顔ではなく、純真な少女、という有り体だった。


「変なの。暁が言ってた通り、君ってなんだかんだ優しいんだ」

「高式が?俺を優しいって?いやそりゃないだろ」


高式の『前回』の仲間を殺そうとしたし。情けなんてかけた試しなかったし。様々な魔術師を無感情に殺してきたし。

空っぽな人間とは俺のことだろう。流石に今は違うけど。

そんな俺の自虐に、唯笑が、有栖まで口を開いたが、城月育が更に笑った。


「嘘つきだなあ。本当に殺そうとしてたら、律儀に暁の一騎打ちの提案なんか受ける意味ないし。情けをかけてたら魔術師なんてあっという間に殉職するから当然。というか、クリスの操り人形になってたら生かしててもどうしようもなかったんじゃない?寧ろさっさと殺してくれただけ救いかも。無感情だって、暁の環境見てたら分かるよ、そりゃ感情なんて育たないに決まってんじゃん。今だって、私を利用するとは明言しなかった。真白さんはともかく、君はお願いしたいことがあるはずなのにね」

「……」

「真白さん。ありがとう。真白さんの企みは失敗かもしれないけど、暁さんに出会えたこと、『お兄さん』が少々特殊でも平穏な生活をして感情豊かになったのも、きっと真白さんの計画がなかったら叶わなかったことだから」

「……お礼なんて言われる筋合い、ないよ」

「ただの自己満足だから受け取らなくてもいいよ。最後にこれだけ。『実現の魔女』が無意味だのなんだの言ったけど、少なくとも私にとって無意味なんかじゃなかった」


そう言うと、育は俺達に背を向けた。


「おい、どこに行くんだよ?」

「……行きたいとこ。私の好きなようにさせてくれるんでしょ?」

「そうだが、」

「やだ、心配してくれるんだ。殺し合いまでしたのに、やっぱお人好し」


育はまたくすくすと笑う。

もう、育の中で俺は善人説は覆らなそうだし、有栖は首が千切れそうなほどに頷いているし、唯笑も俺と育を尊いものを見るような視線を向けてくるし。

どこかむず痒くて、「ああもう、ほっとけ」と雑に言い捨てた。

育が上機嫌な様子でその場を去っていった。

どうでもいいですが、実は今日が私の誕生日だったりします。


祝わなくてもいいですが評価、感想、ブクマなどしていただけるととても嬉しいです(強欲)

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