6話
こんにちは。
昨日寝坊がどうとか話してたら早速寝坊です。
フラグ建築した翌日にフラグ回収するのはいつもの事です()
では、どうぞ。
第一回暴露大会も終わった後、しばらく怜たちは小学生としての生活を怜たちなりに満喫していた。
というのも唯笑が「本格的な計画の始動まであと5年もあるから、それまではのんびりしとこ〜」と言ったからである。
「じゃあ何で今俺のとこに来たんだよ」という疑問が怜の脳内に浮かばないわけではないが、早めに行動した結果、怜は自身の状況把握も方針決定もすぐできて、『決意』という強力な力を検証する時間も確保できたし、そもそも『教会』幹部の襲撃を返り討ちにした以上、怜の口からそれが発せられることはない。
そうして迎えた小学1年の冬、クリスマス。
怜が逆行して初めてのクリスマスは小学校も冬休みに入っていた。他の子供はサンタからもらえるプレゼントで色めき立っていたが、怜と唯笑はサンタの正体などわかりきっていて、孤児院におけるサンタ役のスタッフは確実に怜と唯笑にはプレゼントを渡さないであろうと踏んでいた。
「むしろプレゼントをもらったところで盗聴器とか仕掛けられていそうだからもらわないほうがいいな」とは、唯笑の感想である。
怜たちがいるこの孤児院を唯笑は暴露大会の際に「やばいとこ」と称したが、実際どこがやばいのかは一切教えられていない怜だが、怜も盗聴器はともかくプレゼントなど今更いらないのは同意である。
しかし、申し訳程度の暇つぶしである学校すら休みとなれば退屈である。退屈は人を殺せるとはいうが、逆行してからの数カ月間で怜はそれを充分なほど思い知っていた。それこそ、唯笑がいなければ今頃腐っていただろうと予測できるほどには。
こうも暇では、怜と入れ替えられた『前回』の怜にして『今回』の高式暁は暇つぶしの相手もいないことになるから哀れだと、怜ですら同情心が湧いてくる。
というわけで、暇つぶしも兼ねて、面倒を避けるため『隠蔽』魔術で姿を隠しながらではあるが、怜は唯笑と二人で商店街に繰り出していた。
さすがクリスマス、商店街は大いに賑わっていた。
いたるところにイルミネーションが施され、サンタのコスプレをしている店員がクリスマス限定商品の宣伝をしている。更に、あらゆるところにカップルや親子がうろついている。
「いやあ、見れば見るほどリア充ばっかりだね」
唯笑がそう額に青筋を立てながらも笑顔でそう怜に話しかける。
「そりゃあクリスマスだからな。そういうもんだろ」
「そうなんだけどさー」
と怜から周囲へと視線を戻し、視線を右往左往させてはため息をついていた。
「どうしたんだ?」
「はあ……どこかにリア充のせいで私の荒んだ心を癒やしてくれる風景はないかなあって思って」
「ん……あ、イルミネーションとかどうだ?綺麗だとは思わないか」
「怜。心にも思ってないこと言うのやめたほうが良いよ?あんなのたかが電気じゃん、文明の利器じゃん。『光源』魔術のほうがよっぽど綺麗だね。私の知人だって絶対そういうから。なんなら知人のほうが言いそう。あいつ、強火担だもん」
「いや、知らないが……たしかに嘘は良くないな。悪い」
苦笑を浮かべて謝る怜に「ま、近いうちに紹介するよ」と唯笑が返し、「でもさー」と話題が戻った。
「見れば見るほど街にあふれるのはリア充とリア充とリア充ばっかりなんだよ?どこ見渡してもブスと豚が鳴き声を上げながら街を行き交うんだ。耳に入るのだって、怜の声以外はおよそ同じ人間とも思いたくないチンパンジーどもの鳴き声にそれにふさわしくないけど中指立てたいくらい憎たらしい讃美歌なんだよ?」
「お、おう」
「そこに鎮座してるモミの木あるでしょ?クリスマス、あっ違ったクルシミマスツリー通称『リア充集めの木』に待ち合わせやらなんやらで光源に集まる羽蟲のごとくカップルがそこにうじゃうじゃいるじゃん。そんな光景醜悪すぎて正気度減りそうで……クズがクズの顔して生きてるってこういうことなんだなって」
「あーわかった。お前さてはクリスマス相当嫌いだな?」
唯笑が一頻り言いたいことを言い終えたのを確認してから、怜はそう言った。
唯笑は、「そうだよ、嫌いだよ」と肯定し、先程よりは冷静になったのか小声で語り始めた。
「だって、私にとってクリスマスは禄な思い出がないんだよね」
「そうか。ちなみにどんな思い出なんだ?」
「クリスマスにサンタ……ううん、両親から一回もプレゼントもらえたことないし、何なら家で一人きりだったこともあるし、『教会』は頭おかしい信者どもが讃美歌を頭がいかれそうなくらい歌ってるし、しまいには毎回決まって世界滅ぶのクリスマスの日だし。まあその数ヶ月前にはすでに詰んでるけど。マジウケる。クリスマスは本当無理」
「それは……まあ、嫌いになるよな。外に連れ出すのはよくなかったか。俺の暇潰しに付き合わせてごめんな」
「いや、あそこにいたってトラウマ再現されそうだからむしろナイス。クリスマス限定でKYノンデリカシー女になっちゃうけど、それでもお願いだから私と一緒に外に出よ?」
「KYノンデリカシーの自覚あったのか……」
はあ、と怜はため息を付きながら、「まあ、唯笑が良いなら来年以降もそうするけど」と近くのちょうど空いていたベンチに唯笑を座らせ、その隣に腰掛けた。
「俺にとってはクリスマスって楽しい行事だったんだ」
「まあ、そうだよね。怜は普通の家庭で育ってるだろうし」
「ああ。クリスマスプレゼントはくれたし、ケーキも食べたし、豪華な食事が並んでたし、クリスマスツリーもおいていた。良い両親だったと思う」
「……私もそんな家族がいたら良かったのに」
「そうだな。でも、過去は変わらないよな。子供はどうしたって親を選べないし、一回滅んだ世界も戻せない」
怜はそこで言葉を切り、立ち上がって唯笑の正面に移動して向かい合った。
「けど、今や未来は変えられるだろう。だから、俺と一緒にクリスマスを過ごさないか?」
「……、」
唯笑が少し、今までうつむきがちだった顔を上げた。
「まあ、俺も今は孤児だし。豪華な食事とか、ケーキとか、そういうのは無理だが。でも、そんなのなくても祝うことはできるんじゃないか?」
怜はそう苦笑いしながら、懐から小袋を2つ取り出し、唯笑に差し出した。
唯笑は首を傾げて、ただその小袋を見つめていた。やっぱ自分で忘れてるよな、と怜は想いながら口を開いた。
「メリークリスマス。そして、誕生日おめでとう」
唯笑は、「……あ、覚えててくれたんだ」と恐る恐るとその小袋を受け取った。
怜が唯笑に贈ったプレゼントは、キーホルダーとヘアピンである。どちらにもお守りのような効果の魔術を付与されている。怜がなけなしのお金で唯笑に似合いそうなものを購入し、怜なりに心を込めて魔術を付与したのだ。怜にとっては生まれて初めての人への贈り物でもある。
しかし、怜が唯笑にそれを語るのはどこか照れくさい。だから、黙して、唯笑が開封しては愛しいもの、尊いものを見るようにヘアピンとキーホルダーを見て、大事そうに鞄にしまっているのを見つめていた。
「ありがとう」
と先程よりは穏やかな表情を浮かべた唯笑に、釣られるように怜も表情が緩むのだった。
なお。
その後慌てて雑貨店へ駆け出した唯笑は、「ど、どうしよう?初めて仲いい人からプレゼントもらったから、何返したらいいかさっぱりわかんないじゃん?!」と焦っていたので、怜は唯笑の様子を興味深く観察しながら、唯笑の買い物に付き添ったのだった。
真白ちゃんの言う『本格的な計画の始動』までの待機時間の日常が1章なので、季節はどうしても飛ばし飛ばしになります。
評価、感想などいただけますと幸いです。




