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同じ空の下で  作者: 桜油
6章
83/140

77話

こんにちは。


暫く他視点からの後日談が続きます。

今日は真白唯笑視点ですね。


では、どうぞ。

『軍』提督の殉職から、数日が経過した。


『軍』本部襲撃、倒壊、提督の殉職。このニュースは世界中を震撼させた。『国際魔術連合』が残存人員などの戦況から『軍』を勝利としたが、それでも混乱は収まらなかった。

犯罪率の上昇、魔術師の引退の増加、失業率の増加、海外からの攻勢など社会情勢は不安定で、提督の業務を代行している桜乃さん達が駆けずり回っていて、数日間一睡もしていない。

当日、刹那さんの遺言は全構成員に伝えられた。また、刹那さんの最期の命令に従い、『軍』本部の残骸を隈なく捜索。身元が判別できないほどの焼死体で溢れていたので、漏れなく全て火葬され、遺骨は全て秘匿された。亡くなった構成員のご家族に事情を全て明かすこともできず、こちらもまた桜乃さんが東奔西走して頭を下げまくっていた。


『JoHN』という提督直属の部隊として何か手伝えないか、と私は提案したけれど、桜乃さん夫妻は、二人して、


「大丈夫。貴女たちはまだ子供なのよ?それに、もう少しで独立するって話だもの。こんなこと、しなくていいから。……世界を背負わせて、本当に情けない大人よね」

「バーカ。こういうのはオレ達大人の仕事なわけよ。んな事心配してないで、城月をなんとか立ち直らせてやれ。お前さんのほうが近いだろ?」


といって譲らなかった。


そんな中、頻繁に仮の拠点に足を運ぶ黒守采和の姿を頻繁に見かける。彼は思い詰めたような表情で桜乃さんたちに頭を下げ、あしらわれ、追い払われていた。


一度、私から「話を聞こうか?」と尋ねたことがある。

彼は少し表情を歪めた後、ぼそりと、


「……俺が、『軍』の提督を引き継ぎたい」


と口にした。


「は……?どういうつもり……?」

「今更だ、俺も理解している。存分に笑えばいい」

「嘲笑うというか……だって、刹那さんは弟くんが戦うの嫌いだからって」

「兄貴の気持ちを踏み躙る?そんなの分かりきっている。けれど、」


黒守采和は、私をまっすぐ見据える。その目は、本気だと物語っていた。


「理由は色々ある。今回の件で、表裏問わず司が注目されすぎている。このままじゃ裏から狙われる……彼の体質を考慮しても、彼の進路の邪魔であることには間違いない。だから、俺が後ろ盾になって彼が光のまま、汚れずにいられるようにしたいんだ」

「それは、」

「それに、……兄さんのこと、全然分かってなかった」

「……」

「兄さんは、国の未来も、俺の未来も案じてくれていた。色々なものを背負っていた。知っているか、真白。昔、兄貴が提督になって間もない頃、こんなことを言っていた。『どのような人間であれ、己が幸福のために人生を賭けられるのであれば、俺には尊い光に見える』って。何いってんだこいつ、って思ってたけど、今思えば、『軍』創始者や元提督の想いを肝に銘じていたんじゃないか」

「……」

「未成年とかなんとか遠慮されるけど、桜乃さんたちも大切な息子さんたちがいる。こういう時こそ、家族に寄り添ってほしい……俺たちにはできなかったことだ」

「……そうだね」


君にも大切な仲間がいるんじゃないの?とは言えなかった。

大切な仲間の為に、彼は覚悟を決めた。ただそれだけの話だったから。

その話を聞いた翌日、彼は再度私の前に現れた。


「来週、急遽僕たちがライブをすることになったんだ。僕の最後のステージだ。君たちは忙しいから観に行けないだろうけれど、成功を祈ってて欲しい。……これが終わったら僕が『軍』提督に就任する。よりよい方向に変えて、裏から司たちを支えてみせるとも」


それだけ言い残し、私の返答を待つこともなく彼は去った。


他にも変化はあった。


『JoHN』の集まりが、ひどく悪くなった。

とはいっても深刻な理由ではなく、宥ちゃんは舞月財閥の護衛の仕事が多くなったらしい。黒守采和が話していたライブにも、護衛としてついて行くみたいだった。有希と紗季ちゃんは『教会』に赴いて立て直しの手伝いをしているとか。


『教会』については、暁が話していた通りに有栖大登が解放され、今までの実績から、殉職した全権代行のクリス、次期全権代行筆頭候補だったけれど消息を絶っている暁、城月育から繰り上がって、全権代行に就任したとの知らせを小耳に挟んだ。有栖は2人の部下を連れ、『教会』の違反行為を全て詳らかに白日の下に晒し、やましい一面のあった魔術師はほぼ全て処分して、と大々的に改革しているとか。


怜は、少し快復した。とはいっても元通りではなく、ずっとうつむいていて、居室に引き篭もりがちになっているけれど。私が頻繁に声をかけ続け、部屋に通い続けて、それでやっとその程度。『実現』の『心象操作』は根深いところまで食い込んでいて、干渉力が強すぎて未だに解除に至っていない。……刹那さんの戦闘映像に、この解決策のヒントも隠されているのだろうか?桜乃さんたちは気付いたらしいけれど、私はまだ答えを見つけ出せていない。


「……ここが事務局?随分とがらんとしてるね」


この先の未来について頭を悩ませていると、『今回』はともかく『前回』以前に何度も聞いた、鈴のような声が耳に入る。

入口の方を見れば、城月育……城月怜の実の妹が佇んでいた。


「は、え、」

「困った時にはこっちに行ってね、なんて言われたからこっち来たけど……兄さん?は今どこにいるの?」

「へ、は、いやいや。何当然みたいに話してるの……?困った時こっちに、とか誰が言ってたの?」

「暁から。事前に言われてたんだ、『作戦成功したら、暫くまともに会話できないと思うし、『偽物』のとこにでも逃げとけばいいと思うよ』って」

「そ、そう……」

「突然でごめんね。アポイントは入れようと思ってたけど、提督不在、代行も不在にしてるから全然連絡つかないから、凸しちゃった」


そう言って城月育は申し訳無さそうに眉を下げていた。

……暁もこの子も、どういう心境で仮想敵組織を頼ろうとしていたんだろう……?

困惑しつつ、「あ、うん。なんか、こっちこそごめん。今、すっごい人手不足でね……」と返す。


城月育は続けた。


「兄さんがいないなら、折角だし、私も手伝うべきかな?私達のせいでこうなってるんだし」

「いや……手伝おうとは思ったけど、桜乃さんたちが未成年は働くなって」

「え?いや何で?真白さんみたいな優秀な魔術師を遊ばせておくなんて勿体なくない?」

「むしろ未成年が前線に出ることを『軍』は……というか、他の魔術組織は大体悪しき風習だと捉えているよ」

「そうなんだ……」


と1人納得する彼女に、私はでも、と続ける。


「桜乃さんたちも、弟くんも、白星も、宥ちゃんたちも、皆頑張ってる。拝郷達も、連絡はないけどきっと大事な理由があるんだと思うから……私は私なりに、今私にできることを積み重ねたいんだ」


私の言葉に彼女はぽかんとして、くしゃくしゃに笑った。


「私もそう思う」


年相応な笑顔のまま彼女は私が観ていた画面を脇から覗き見た。


「それで、今は何観てるの?」

「刹那さんと『実現の魔女』の戦いだよ」

「え、すご。『実現』に干渉できてる……」

「でしょ?この原理が分かれば大きな一歩になると思うけど、全然分かんなくてさー」


彼女のほうへ視線を向けると、彼女は小さくうなずき、「……暁やクリスが言ってた通りのことが起きてる……提督って、本当に凄い魔術師だったんだね……」と呟いた。


「嘘、分かるの?!」


驚きの余り、がたん!と大きく音を立てて席を立ってしまい、少し赤面しながら再度腰掛けた。軽く咳払いし、口を開いた。


「ね、お願い。なんとか教えてくれないかなあ……」

「ごめん、それは無理な相談だよ」

「だよねー……」


暁の夢の妨害になるようなことを彼女が望むわけもない。

ダメ元でした質問だったからと話を終わらせようとしていた私に、彼女は「なんて言えばいいかな。えっとね?」と話していた。


「これ、自分で気づかないと意味ないよ。真白さんと兄さんとで明日気分転換に出かけたらいい発見もあるんじゃないかな?」

「それってどういう、」

「これ以上は言えないから。とりあえず今日は『教会』の仕事もあるし帰るね。毎日顔出すからこれからもよろしく。じゃ、ばいび!」


と足早に去っていった。

背中を眺めながら、ふと、「そういや、何でヒントくれたんだろ?」という疑問が増えた。

が、私には与り知らぬこと。一旦その疑問をさておいて、育の言っていた通りに怜を誘おうと、怜の居室へ歩を進めた。

こんな自己満足の塊みたいな小説ですが、閲覧ありがとうございます。

PV数、少しずつでも着実に増えてるの見ると、とても嬉しいです。


あと30話くらいで完結予定(唐突なネタバレ)ですので、そこまでお付き合いいただけますと幸いです。

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