75話
こんにちは。
もう少しで、長かった『軍』本部襲撃編も終わります。
黒守刹那視点です。
では、どうぞ。
先に仕掛けたのは魔女だった。
紅黒い光を身に纏いながら魔女は高速で突進する。俺は『魔装』の槍の弾幕を数発放つが、当たる直前で不自然に槍の軌道が逸れて紙一重で外れる。眼前まで迫った魔女に槍の穂先を突き出すも、魔女は瞬時に俺の背後へ回った。俺が振り向いて槍を下から上へと薙ぎ、それも目にも留まらぬ速度で再度俺の背後へ移動して避け、そのままの勢いで上から下に薙ぎ下ろされた槍を身体を反らせて躱す。床に手をついて足を浮かせてキックを繰り出す。早すぎて受け身しか取れずに体勢を崩して後ろに重心がずれ、またその後ろに移動した魔女が『魔力撃』を繰り出す。反応できず直撃を受けて前に倒れるが、更に追撃で拳を浴びせられた。吹っ飛びながらも体勢を整えつつ『回復』を展開していたが、魔女がもう目の前まで飛んできていた。
あまりもの速さに動揺する俺に当然構うことなく、魔女は背後から蹴り上げ、更に追って背中を蹴り、ダメ押しに更に吹っ飛ぶ俺の腹部を上から殴りつける。
「どうしたどうした!その程度か!」
魔女は興奮しているのか頬を紅潮させ、瞳孔も開ききって、そんな表情で大きく叫んだ。
床に叩きつけた後に俺の身体を投げ、紅黒い光を発しながら高速で空間を縦横無尽に飛び回り、防御すらできずに衝突する。やがて着地し、また宙へと浮かび上がって『魔力撃』の弾幕を展開する。こちらも紅黒い、禍々しい光を放ちながら一帯に広がっていく。避ける為に弾幕を見定めて見切った筈だが、不自然に軌道がまたそれて当たってしまう。『障壁』で俺の周囲を囲って内部を弾幕で満たし、『障壁』すら貫通する威力で爆発が連続する。なんとか耐えたもののボロ雑巾のように床に転がった俺に上から魔女が降り、「死ねっ!」と叫びながら『魔力撃』を展開する。
まだ終われない!
そう強く願った瞬間、青白い光が空間を満たし、空間に更に亀裂が入る。魔女が展開していた『魔力撃』は解除され、俺の傷が全て回復する。
「え!?」と強く動揺した魔女がすぐに後退して距離を取り、俺は『魔装』の槍の弾幕と『魔装』の特殊銃弾を同時展開する。
「いいね、いいねえ!?ニヒリティに耐えるじゃないか!」
「お前にむざむざと殺されて経験値になることは無い、ということだな」
魔女も負けじと弾幕を展開する。不自然な軌道の逸らしもあるが、一度それを見てしまえば、それたのを確認して『必ず躱す』と強く念じながら『加速』を使えばいいだけのこと。……『加速』はあまり使いたくなかったのだが、目的を果たすためならば手を惜しむ余裕もなかった。
空間を満たす辺り一帯の弾幕の雨を互いに避けながら、魔女は紅黒い光をまといながら、俺は『加速』『身体強化』『魔装』を併用しながらぶつかりあう。埒が明かないと感じた魔女が、衝突した時に自分からふっ飛ばされ、着地した際に『魔装』で3人分身を生成した。四人とも、全く異なる軌道で距離を詰め、一人目が正面から襲ってくる。槍を振り下ろして前に転倒させて槍を突き刺し『影縫』をしたが、2人目が背後から頭部へ足を振り下ろす。避けた為に1人目の影縫いが解除され、互いに下から交差してXを描くように『魔力撃』で斬りつけ、2回、3回と俺の身体を挟んで衝突する。着地した後にまた衝突し、吹っ飛んで落下する俺の肉体を1人が持ち上げ、1人が拳で腹部を突く。その後2人が距離を取った隙に3人目が『魔装』ナイフで斬りつけ、最後に加わった四人目も加えて『魔力撃』を四方から展開した。
『回復』しつつ着地した俺の横を3人の分身が通り過ぎ、俺が危険を察知して前に移動した直後に魔女が俺がいたところに着地する。槍で突いたがバック転で避けられ、背後から分身が襲ってきたので『加速』で振り向いて槍を縦に構えて防ぐも、再度距離を詰めてきていた本体に『魔装』ナイフで背中を斬られ、更に腹部を他の分身に殴られ、更に上から『魔力撃』で斬られる。最後に分身に両腕と両足を組み付かれ、『影縫い』もされた上で、魔女本体が放った弾幕を一斉に浴びた。
『影縫い』を気合で解除し、槍で分身を全て薙ぎ払ってから『加速』『身体強化』で距離を詰め、槍で腹部に穴を空け、横、縦に槍を薙ぐ。魔女は血を吐きながら床に手をつき俯く。
「力を分割しても、通用しない」
「はははははははははははははははははは!」
ダメージを負っていてもなお、魔女は哄笑していた。殺し合いが楽しくて仕方がない、とでも言うかのように。
気味が悪く、槍で魔女を後方へ押しやれば、何事もなかったかのよう……否、無傷の状態で魔女は吹っ飛びながら受け身を取り、着地と同時に『魔装』で槍を展開した。槍を浮かせて自身と並走させ、その過程で『魔力撃』の弾幕を張り巡らせた魔女は俺の眼前まで接近すると槍を振る。槍の軌道に併せて、時間差で『紅蓮』による轟轟とした爆炎が舞った。空中を移動して槍の穂先を床に向け、床一面を炎の海に変えていく。『水流』で消火しながら槍を振るうが、ひらひらと避けた後に高度を上昇させ、槍に紅黒い光をまとわせたまま投擲した。俺は青白い光を激しく放ちながら槍でその槍を薙ぎ払えば、薙ぎ払われたそれはより禍々しく、眩しく光を発して、熱が勢いよく増した。
「なっ」
緊急離脱として『加速』10倍速で『風来』『身体強化』を展開し、可能な限り自分を爆心地から離れるよう吹っ飛ばした瞬間、原爆にも等しい規模の大爆発が起こる。指向性まで持たせていたのか、建物が倒壊しそうなくらいで、屋外には何ら影響していないのをつなげたままの通信から確認した。……が、放射線量が多すぎる。魔術の展開すらままならない中、それでも気合で『魔力撃』『魔装』の弾幕を展開したが、全て魔女の弾幕で破壊される。ならば、と接近してきた魔女にひたすら槍を振るうが、それもすべて軌道をそらされ、懐に入られて蹴り上げられる。
空間を縦横無尽に跳びながら、魔女の『魔力撃』と俺の『魔装』による剣戟の音が響く。身体が思うように上手く動かなくなってきたので、『加速』20倍速で且つ自身の肉体に『稲光』『身体強化』『風来』を使用して、自分をアバターのように無理くり動かす。
そんな中、魔女は更に『魔装』で剣を展開し、振るうごとに夥しい数の弾幕を展開する。それを、やはり身体を無理な方向に曲げて、隙間を縫うように躱しながら近づく。射程圏内に入った後に槍を振り回し、魔女が先程生成した剣で防ぐ。
互いに強い衝撃で後方に吹っ飛び、着地する。
「まだだ!」
『魔力撃』『魔装』弾幕を展開しながら、最早自身に言い聞かせるように、口元のいつ吐血したかも分からない血を拭いもせずに、喉が焼けるような声で放たれた決意に報いるように、より一層、まして青白く輝く槍や弾幕を放つ。魔女は所々掠りながら強行し、『魔力撃』を俺の懐で展開し、それに迎え撃つべく構えて突き出した槍とがぶつかる。拮抗したと思えば魔女が、四方八方に張り巡らされた弾幕を残して姿を消す。青く見える空間の中目を凝らして探せば、果たして対角線上のところに魔女の姿はあった。
俺は弾幕の包囲を抜けて、追尾してきた弾幕を槍で一網打尽に振り払い、また包囲弾幕を抜けて振り払うのを繰り返しながら距離を詰め、槍で魔女のいる場所を全力で突く。魔女は喀血しながらも笑みを深め、「よくわかったな、最早気持ちが悪い」と漏らした。
「わかるだろ。そこにいるんだから」
「『隠蔽』も使ってたのに分かるとはね。どこまでも侮れない魔術師だな、君は。……ならば、最期にこの肉体で出せる術式の中で最大限のもの、全戦力をお見せしよう」
『魔力撃』を幾千も展開し、さらに魔術式を見るだけでも分かるほどの大規模な『紅蓮』を展開。弾幕を発射し、『紅蓮』の波がその後から波紋状に広がっていた。弾幕の隙間をかいくぐりながら槍で切り裂き、自傷覚悟で『紅蓮』の炎の中へ突撃して中心部の魔女へ槍を突きつけたが、拳で防がれる。魔女は再度『紅蓮』を展開した。
その魔術式が赤黒く、禍々しく光を発した瞬間、俺は青白い光を槍にまとわせ、特殊銃弾の効果を『付与』して、全戦力を以て魔女もろとも魔術式を貫いた。
マウスが電池切れなので操作がしづらいです。
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