5話
こんにちは。
年末年始の休みが終わり、今日から仕事です。
基本的に、起床時にこの小説を投稿しています。
最終話まで執筆が完了しているので、エタる要素皆無です。
なので、万が一投稿されない日があったら、
「あ、この人寝坊して仕事遅刻してやんの笑」
とでも思っていただければ()
さて、今話でも暴露大会はなおも続きます。
では、どうぞ。
暴露大会はなおも続く。
「怜はこれから、宥ちゃんとか有希くんとか紗季ちゃんとも会うことになるけど、みんなについてはどう思ってるの?」
「うん?誰のことだ?」
「前回怜の仲間だった、汐宮宥と、一条有希と、日向紗季のことだよ。下調べはしてるでしょ?」
「ああ、『JoHN』幹部の三人か」
唯笑の言葉に、怜は前回追っていたテロ組織について思いを馳せる。
『JoHN』。城月怜をボスとするこの組織には三人の幹部がいる。
汐宮宥は設立当初からいる人物だ。一般家庭で生まれ育つも、両親が互いに絞殺する奇妙な心中事件をきっかけに消息を絶っていた。あまりにも奇妙だったので『異常性』の有無を確認したが、特にそれらしいものは見受けられなかった。鋏を主な武器に戦う魔術師。正直彼女が裏に行った理由は、下調べをした今でも怜にはあまりわかっていない。
一条有希、日向紗季はその点わかりやすい。最初から裏の人間だったからだ。二人共『教会』から逃げ出したホムンクルスである。『異常性』らしきなにかは特にないが、魔術を扱えている以上、魔力は所持しているようだ。ただの仲良しサークルでしかなかった『JoHN』がテロ組織に変化するきっかけを与えてしまった二人とも言える。城月怜は二人から境遇を聞いて、魔術師への憎悪を強く抱いたのだろう。特に『教会』を強く恨んでいたのか、『教会』への攻撃が激しかった。……他にも『教会』を恨む理由がありそうだが、それは情報屋を雇うべきだと怜は考えていた。
なにはともあれ、この世界ではこの三人はまだ生まれていないか罪を犯していないはずだと想定される。
故に、怜としては。
「できれば保護したいところだな。俺が城月怜である以上テロ組織の『JoHN』は生まれないが、似たような組織が発足する可能性は否定できない。防げる犯罪は未然に防ぐほうが合理的だろ?」
「そうなんだ。うん、良いと思うよ」
「あとで情報屋でも雇って、まずは汐宮でも調べさせるか」
「賛成。でも時期は私に一任してほしいかな。ぜひ協力者にしたい情報屋がいるから」
唯笑は怜の方針に一部賛成としながら、情報屋について言及してきた。唯笑が協力者に据えたい、つまりは確実に信用できる情報屋、と怜は少しだけ考え込み、一つ名前が浮かんだ。
「拝郷本音か」
「Exactly」
唯笑はあっさり肯定した。
拝郷本音。怜が物心ついたときにはすでに活動を開始している情報屋だ。怜も『前回』は何度かお世話になった。
諜報を専門としてフリーで活動する魔術師のことを情報屋、企業やサークル、俗に言う魔術組織に所属して組織の指示で諜報活動をする魔術師をオブザーバーなどと呼ぶのだが、拝郷本音はその情報屋、オブザーバーなどの諜報を専門とする魔術師では世界一と謳われる。依頼達成速度、正確性、精度、顧客情報の隠匿において右に出るものはいない。依頼料が大変高価なのが玉に瑕だが、一線級の魔術師であればそれほど目立つ欠点ではないため、ほぼ全員利用する。
もっとも、情報屋として信用できても人間として信頼できるかと言われれば別なので、怜はプライベートでの付き合いは控えていたのだが。
「10年後、彼に用事があるからね。そのタイミングで交渉するさ」
「そんなに信用できるのか?協力する保証はないと思うが」
「大丈夫。今ならともかく10年後なら確実に釣れるよ。まあ、今日もう少し早めて良いかもって思ったけど」
「本当かよ」
「本当。なんなら想定していたよりもっと良好な関係を築けるだろうね」
とあまりに自信満々に唯笑が返答するので、怜は一旦それで納得しておくことにした。
「あと、『軍』にも交渉していくよ。こっちは拝郷より先だね」
「へえ。まあそれはいいんじゃないか?」
「拝郷より信用できるのはわかるけど、そんなに違うかあ……」
「だって、あそこの『提督』は裏にしては聖人だろ」
怜のあまりもの反応の差に唯笑が苦笑いを浮かべるが、怜としてはそうなっても致し方なしなほど、『軍』にはお世話になっていた。
『軍』。国の政治まで担っている、比較的穏健派な魔術組織である。中でも今年『提督』すなわち全権代行に就任した、黒守刹那は善政を敷いていた。違法な実験はせず、少年兵も最低限しか出撃させなかった、まさに聖人。『教会』に戦争を仕掛けられるが、それも一般への被害を全く出さずに終始優勢で進めていた。怜の中での『できる魔術師』とはまさに彼のことだった。
という話を怜はしたのだが、唯笑は異なる印象を抱いていた。
「たしかに怜の知ってる刹那さんはそうかもだけど、正史では本部襲撃で沢山人亡くなるんだよね」
「そうなのか?」
「私の協力者と、その友人たちがすごく頑張ってたからあの平和はあったんだよね。あの人達が『教会』をほぼ無力化してくれてたの。今回もそうだととても助かるけど、今回は難しいかなあ」
唯笑は心底残念そうにつぶやいた。
「『教会』無力化って、そいつらがいれば世界救済も百人力だな。……あれ?今回は難しいってなんでだ?」
「それは……あの人達はあまり裏稼業好きじゃないし、それに、今はちょっと目立つわけにはいかなくなっちゃったんだ。理由はまだ言えないけど」
「うーむ……まあ、わかった」
「安心してよ。君も知ってる人だから」
「あ、俺も知ってる人か。誰だろうな……」
「びっくりすると思うよ。近い内に顔合わせしようと思ってるから楽しみにしてて」
そう唯笑が締めくくり、怜が質問する順番になった。夜も更けてきた、怜はある程度情報を隠される前提で尋ねることにした。
「唯笑はどうして世界救済を目指しているんだ?良ければ、答えられる範囲で俺と出会うまでのすべてを教えてほしい」
「……答えられる範囲でいいの?」
「ああ。充分だ。答えたくない範囲はあとで教えてくれればいい」
唯笑はそれにほっと胸を突いて、深呼吸をしてから語り始めた。
唯笑は、かつては『教会』の魔術師だった。
小学校低学年の自分でも食い扶持を稼げるところを探し、『教会』に加入したが、『神父』……『教会』の全権代行が子供心に不信感を覚えて、そこまでの忠誠心はなかった。
そんな中、『教会』で実験体にされている少女と親しくなった。
その少女をいつか助け出そうと思って『教会』に所属し続けていたら、『教会』が『評議会』という魔術組織と共同で『軍』本部を襲撃した。しかも、それは『教会』が開発中だった秘密兵器を運用するための準備でしかなかった。その準備は進み、いよいよ運用が開始された秘密兵器によって世界は滅んでしまった。
「いや、じゃあその秘密兵器をもう今すぐ壊したほうが良いんじゃないか?」
「それは無理なんだ。その秘密兵器は魔術じゃ壊せない」
という会話を途中に挟んだものの、唯笑の語りは続く。
生き残ったのは高式暁と唯笑のみ。高式暁は、唯笑に世界の命運を任せると『決意』の令呪を付与。暁は記憶を代償に『決意』で世界が壊れる前まで巻き戻した……もしくは世界を自分の記憶の限り創造し直した。
「『決意』って俺の『異常性』じゃないのか?」
「そうなんだけど。えっとね。原理は不明なんだけど、多分『決意』の応用……なのかな?城月怜と高式暁が戦闘したら、勝利したほうの人格をベースに統合?されるんだ。これは『前回』を除いて毎回だね。大抵は暁が勝って、暁をベースに統合されるから、暁が『決意』を使えるようになる感じだよ」
「はあ?!」
怜が衝撃の新事実に宇宙を背負った猫のような表情になるが、唯笑は説明をやめない。
一回目は、観察を徹底した。何も干渉しなかった場合はどうなるのか、また関わっている人物について、できる限り調べ上げた。
二回目は原因の対処にあたったけれど、無駄足だった。
三回目は別の原因について干渉してみたところ、手応えを少し感じたけど、次回以降の協力者を得たこと以外収穫はほぼなかった。
四回目にその協力者と情報共有をした結果今回の作戦が浮かび、もう猶予がないので検証をせずに本番として実行した。
「といった感じだね」
「すごくぼんやりしているな」
「今はまだ話せないんだ。詳細は12年以内にちゃんと話すから、今はこれで納得してほしいな」
と眉を下げて唯笑が笑う。顔が割とくしゃくしゃだった。
「まあ、答えられる範囲で、といったのは俺だしな。しゃーない」
そう怜が返すと、唯笑は「ごめんね。ちゃんと話すから、待っててね」と言った。
そこで館内放送で消灯するよう指示が入った。
いずれこの孤児院を出るとしても、今は一応命令には従っておいたほうが良いだろう。怜はそう判断し、消灯して「じゃあ、次で最後だな」と言った。
「そうだね。じゃ、最後に怜の将来の夢でも聞いておこうかな?」
「夢?」
「そう。全部終わった後、私は怜を手伝いたいんだ。今もう決めてることがあるなら聞いておこうかなって」
唯笑はなんでもいいよと微笑んでいるが、怜にとっては一番の難問だった。今まで親の言う通りにしておこうとしか考えておらず、自分で進路を決めた試しがない。
「まだ決めてないな。考えておくよ」
「お願いね」
怜の適当な返しに唯笑は文句をいうこともなく了承した。
逆に唯笑は考えているのだろうか?と怜は聞いてみることにした。
「俺も最後の質問いいか?」
「どうぞ」
「唯笑の将来の夢はなんだ?」
「世界をすく「それが終わった後な」……」
怜の予想通り、唯笑は黙り込んでしまった。
流石に意地悪すぎたか、と怜が質問を撤回しようとした時、唯笑がぼそりと一言。
「……夢っていうのも変だけど。怜と同じ空の下で笑えたら、きっと幸せだと思うな」
どこか焦った様子で「おやすみっ!明日からよろしくね!」と布団を頭から被った唯笑に、怜は「こちらこそ」と返答するので精一杯だった。
それぐらい、なぜか、心が温まったのだ。
長かった暴露大会はこれで終わりです。
次回からは日常回です。
評価・感想などいただけますと幸いです。




