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同じ空の下で  作者: 桜油
6章
76/140

70話

こんにちは。


主人公視点に戻ります。


では、どうぞ。

提督が引き金を引くその直前、提督の手から魔力の弾幕が銃を弾いた。

高式と城月育は満足げに笑みを浮かべ、提督は憎々しげに、「間に合わなかったか」と独り言ちる。


「ふう、なんとか間に合いましたね。時間稼ぎ、ありがとうございます」


乱入してきた魔術師ークリスは高式をそう労いながら、光を斬って拘束を解いた。

高式は笑みを崩さないまま、「遅いっての。死ぬかと思ったんだけど」と返し、「まあまあ、死んでないからいいじゃないですか。結果オーライですよ」「そりゃそうだ」と肩をすくめた。


「じゃ、育。手筈通りにお願い」

「……うん。頑張ってね」


と城月育が頷く。


「そうはさせるか!」


提督が『魔力撃』を城月育と高式、クリス目掛けて放とうと魔術式を展開したが、魔術式が突如消えて何も起こらなかった。


「『否定』か……っ」


提督はまた憎々しげに城月育を見やり、大声で叫んだ。


「城月育。お前、『教会』ではひどい扱いを受けていたんじゃないのか。『教会』側に加担するとは、どういう心算だ?」

「そんなことない。寧ろ、暁は命を賭けてまで私の願い事を叶えようとしてくれているの。クリスだって、クリスの大切な人の為に今まで苦労してきた。その想いを貴方達なんかに否定させない」

「……っ」

「あの銃弾を使っても無駄だよ?その銃弾の存在を無かったことにするから。私にはそれができる」


という城月育の言葉に誰も動けなくなっていた。

そして城月育の力が働いていることを確認した高式がクリスに「……そろそろ、いいよ」と声を掛けたが、クリスは首を横に振った。


「折角です。ネタバラシの時間と参りましょう」

「はあ?さっさと次に進めようよ」

「保険ですよ。アレの心を折って、抵抗できなくしておきます」

「そんなことしなくても、『実現』があれば問題なくない?」

「貴方も心当たりがおありでしょう?万が一はありえますから……」

「……性格悪くない?」

「魔術師界隈においてのそれは褒め言葉ですよ……っと、役者が足りませんね。引きずり出しましょう」


クリスが指を鳴らした瞬間、執務室から提督と通信を繋いで傍聴していた怜と唯笑が、提督のすぐ傍に転移した。


「な、」


と目を瞠る提督に、唯笑は戸惑いながら、「……ネタバラシとか言われても、私は全部知ってるけど」とクリスの方を見る。クリスはくすくすと笑いながら、「さて、それはどうだか」と返して、構わず話し始めた。


「さて。そこの『城月怜』君以外はご存知でしょうが。ワタシは今から十数年前、大切な相棒を喪いました。……結婚までは秒読み、子供だって妊娠していたのです。幸せな家庭を築けるはずだった。……だからこそ、許せませんでした」

「敵の組織にその負の感情をぶつけたかったのですが、自滅しましたのでね……次第に、自身の無力を、運命を、世界を憎むようになりました」

「相棒を蘇生させようとしました。その為にスワンプマン、ホムンクルスなどを開発しましたが……あの人には到底なりえなかった」

「どんな絵空事だっていい。時間を巻き戻せさえすれば、もしくはあの人が戻ってきてくれたなら。ワタシは、今度こそあの人を守り抜いてみせる。だから、手段を探って様々な文献を読み漁りました。……そして、ある日、ある寺を襲った時にその文献を見つけました」

「『実現の魔女』。数世紀前、とてつもない数の死者を出した、大災害。今封印されているそれは、願えばどんな想いだって叶えられる願望機。ワタシはそれに賭けることにしました」

「穏便に情報を集めるべく、『軍』との同盟交渉に応じました。……まあ、交渉は決裂しましたよ。だから、当時の提督を殺しました。その腹いせに……というつもりでしたが、また面白い発見をしてしまったのです。なんと、娘を残して全員即死していた筈が、娘がその兄を蘇生したのですよ。だから、両方攫いました」

「『実現の魔女』に頼らなくても、すぐ蘇生できるかもしれない。そう思ったのですが、……見当違いでした。死んですぐしか蘇生できないようですから」

「でもねえ。この拉致が無駄だったかといえば、そうでもなかったのです。蘇生された方は、もっと面白い力を有することが研究で分かりました。……『決意』。『実現』ほどではなくとも、魔術より、異常性よりも影響力を有する異常性。これがあれば、兵器にできるかもしれない」

「『実現』の研究を進めると、『実現』は人格を持つことが分かりました。きっとワタシの大切なあの人の蘇生にも協力などしないだろうことも、歴史書から判断できました。……『決意』の運用方法の検証。色々考えて、『決意』所有者のスワンプマンを造りました」

「情報を統制し、自我が薄くなるよう育て、いざという時にワタシが操作できる『決意』所有者。敢えて劣悪な環境に送り込み、世界に憎悪を抱かせるように環境のみ調整する『決意』所有者。前者にはコピーを、後者にはオリジナルを充てて、最終的に戦わせ、勝者に『実現』を顕現させる。そして、『実現』に対抗できる戦力がなくなったところで、『実現』に世界を崩壊させる」

「そして世界が崩壊し、世界の再創造をした先が、あの人が生きている世界線である可能性に賭けました。……もう、それしか手立ては残されていなかったのです」

「もっとも、その作戦を開始した数日後にその計画はおじゃんになりましたけれど。なんせ、どういった方法かはわかりませんが、オリジナルとコピーが入れ替わったんですから」

「すぐにコピーを処分しようとしましたが……他勢力からの妨害もあって失敗。悩ましかった案件ですが、オリジナルは妹を餌にすれば良いのでは、と考え、その胸中はどうあれ協力を取り付けることができました」

「そして今に至るのです。ネタバラシは以上ですけど、なにか質問でも?」

「……コピーである証拠?」

「5歳より前の記憶はありますか?と言っても納得しないんでしょうね。なら……そうですね、これなら信じますかね?」

「腹部に、いつまで経っても消えない、模様にも見える痣のような何かが、ありますよね。それ、実は貴方のお仲間の2人にもあるんです。ホムンクルス、スワンプマンだって見分けがつくように設定しているものなんですよね」


クリスの言葉に怜は一瞬絶句した。


痣の話は唯笑にも打ち明けていない。現に唯笑から、「え、……それ、ホント?」と尋ねられている。提督も動揺している。高式と城月育は知っていたのか、退屈そうにクリスを見ている。

……ここまで来ると、少なくとも怜が……否、『城月怜』として生きている自身は、目の前の、本来城月怜として生きるはずだった、『高式暁』を名乗る魔術師のコピーであることは真実なのだと、嫌に理解させられた。

有希や紗季から打ち明けられたことがある、スワンプマンの話。あの時、怜は綺麗事のような本心を語ったが、自分がそうだとは思っていなかった。

口を閉ざした怜に唯笑は顔を顰め、クリスに向き直って「だから何なの?今更そんな話して、何がしたいわけ?」と咎めた。

クリスは冷笑した。


「『決意』の所有者はもういらないんですよ。彼の協力、様々な実験を経て、もうオリジナル1人でワタシの夢を叶える手筈は整いました。……たとえ、世界の全てを敵に回したとしても、やめるわけにはいかない」

「人の心を弄んでおいて……っ」

「ははは……まったくそのとおりだ。ワタシは、最期まで世界の掌の上だった」


自嘲気味にそう漏らしたクリスは、皆の注目を浴びる中、高式に向き直った。


「さて。……始めましょうか」

「いいの?まだネタバラシしてない範囲はあると思うけど」

「いいのです。ワタシは語り部になどなれない……続きは、貴方か『実現』が語るべきでしょう?」

「……」

「覚悟はよろしいですか?」

「勿論。覚悟なんか、とっくの昔に決めている……何があっても、必ずやり遂げるさ」

「そうですか。……最期にこれだけ。ありがとう、友よ」

「へいへい。こちらこそどうも、世話になったよ。あんたのことは嫌いだけど、死んでほしいってほどでもなかったさ」

「良い親ではなかったと想いますが、そんな評価をいただけただけでも幸いですよ。……では、」


クリスはそう言って手元から得体のしれない物体を取り出し、『心象破壊』を展開した。唯笑は顔を青ざめさせて、「だめ!」と『精神防護』魔術を放ったが、城月育により『否定』された。


「おやすみなさい。いい夢を」

「あんたも、来世では心から笑えるといいな」


高式に『心象破壊』が起動され、高式の身体が力なく倒れる。クリスはそれを優しく抱きとめ、高式の胸にリンクの魔術式を埋め込む。続けて、謎の物体に魔力を付与し、それを高式の脳に埋め込んだ。そして、高式の肉体にクリスが魔力を譲渡する。


そして、『リンク』はあっけなく、起動された。

起動されてしまった。

やっと伏線回収です。

主人公に人間味がないのも、『前回』主人公の周囲が奇妙だったのも、主人公が『泥男』または『クローン』と呼ばれる存在だからでした。


つまり、まとめると、


・現在『高式暁』と名乗っている方が本物の城月怜で、『城月怜』と名乗っている方が偽物

・本当は5歳の頃に人格の入れ替えが生じるはずだったが、5歳の頃は『偽物』に人格が芽生えていないので、人格が芽生えた6歳の頃に入れ替えが発生←一章1話より、『一年間失踪していた』

・更に、人格の入れ替えではなく、身体ごと座標が入れ替わっている←一章13話より、『髪の色が『前回』から変化していない』

・本来は本物と偽物を戦わせて、勝利した方に『実現』を顕現させる予定だった←四章52話より、『『高式暁』をクリスが操ってでも高式暁、城月怜は強制的に戦わせられる』『決着がつくと、その勝者を乗っ取るように『実現』が顕現する』

※クリスとしてはできれば偽物に勝利してほしい。偽物を作る時に使った素材の関係。だから本物を敢えて劣悪な環境において充分な教育を受けられないようにしたし、偽物には徹底的に監視・教育。更に偽物を『実現』が乗っ取りやすいように、偽物の自我・情緒を極力薄くなるよう環境を調整。一応、本物が勝利しても魔術の技術的な観点で『実現』に抵抗しきれなかったが。

・『今回』はクリスと高式暁の利害が一致しているため、わざわざそんな工夫をしなくても、高式暁の肉体に『実現』を顕現させるだけで良かった



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