67話
こんにちは。
いきなり戦闘描写から入る6章です。
尚、用語集、登場人物一覧は水曜日に更新予定です。
では、どうぞ。
初手に動いたのは城月育だった。
『魔力撃』を複数展開し、弾幕が怜を目掛けて迫ってくる。その後ろから高式が『魔装』のナイフを手に跳躍、上からナイフを縦横無尽に振る。怜は対抗して『魔装』を展開、ナイフで斬撃を受け流し、バック転などで躱しながら後退。壁際に追い詰められ、ナイフの投擲と弾幕を『障壁』で防ぐ。
続いて唯笑が『土遁』を展開し、至る所から柱を隆起させるが、高式は自身に迫る柱を土台にしたり、ナイフで受け流し、柱に着地して立ったままの状態で滑り降りてくる。城月育が『魔装』で大量の槍を生成し、再度怜目掛けて迫るそれをナイフで弾いていたが、途中で手に当たりナイフを弾き飛ばされる。唯笑がそちらに意識を向けた瞬間に高式がナイフを投擲し、唯笑が咄嗟に白刃取りで受け止める。
再度怜が『魔装』展開、今度は剣を生成し、『稲光』を付与。城月育が放った『魔力撃』の弾幕を、剣で切り、受け流し、躱す。そのまま彼女に斬り掛かったが、彼女は『障壁』を展開、瞳が赤く光り、『否定』の『異常性』の効果で剣が砕けた。唯笑が『土遁』を怜の足元に展開し、怜が『土遁』で隆起した床を折れた剣で切り離し、『浮遊』を付与する。『風来』を併せて自身に追い風になるよう展開し、高式に目掛けて突進した。
高式はそれを見て横に跳んで避けようとしたが、折れた剣を影を狙って投擲、影縫いで身動きを取れなくする。城月育が『光源』を使用し、高式の影縫いは即座に解除され、既のところで回避される。
大きな爆発が起こり、その爆風を逆手に取って唯笑の隣に怜が着地、煙が晴れた頃には高式が城月育の隣に戻っていたので、戦いは振り出しに戻った。
長い間、沈黙が流れた。その沈黙は、高式に破られる。
「……世界救済って言うけど」
「なんだ?」
「具体的にはどうするんだ?」
その質問には、唯笑が答えた。
「世界救済のためには、最低でも2つは条件を達成しないといけない。『実現の魔女』の無力化または再封印、『実現の魔女』を利用しようと企む勢力の撲滅」
「……」
「その上で、更に理想的な結末は、『世界を再生する』こと」
「はは、『世界再生』の伝手はあるわけ?」
高式が鼻で笑った。唯笑がむっとした顔で言い返す。
「あるよ」
「へえ。ないと思ってた。……けど、それをやって君の望む結末になるの?」
「可能性は……ないわけじゃない」
「低いんだね。情報の取り逃し、行き当たりばったりにも程がある作戦、世界の命運を託す無責任さ。君は本当に世界を救う気はあるのかな?」
「……」
「世界救済、というのは建前で、本音はもっと別のなにかを求めているってことね。ああ、やっと納得できた。僕の推測が正しければ、僕と君って気が合いそうなもんだけどなあ」
そう言った後、高式は更に続けた。
「前提として、『実現』の再封印、無力化、それを利用しようとする勢力の撲滅と言ったね。再封印、無力化はまあできないこともないと思うよ?けれど、勢力の撲滅をしようったって、僕は死なない限り諦めることはないし、そんなあっさり死ぬこともない。殺しても、植物人間にしても、君が望まない展開には間違いなくなる。僕が敵対してる時点で詰みだよ。何なら、奇跡が起きて僕が降伏の意思を示したとしても、君たちは既に詰んだのさ。だから、もう、今までの全ては無意味さ」
「……そうだな」
唯笑ではなく、怜が答えた。
「お前が、唯笑が、何を知っていてそんな話をしているのか、俺には分からない。ただ、『世界救済』を考えるなら真っ先に『教会』を潰す方が合理的だったんだろう。だから、今までは結局遠回りしただけだ」
でも、そうだったとしても。怜は今までの全てを思い返した。
「でも、真っ先に『教会』を潰していたら、俺は普通を知ることもなかったんだろうな」
だから、と怜はまとめた。
「俺にとっては、無意味じゃなかった」
高式は目を瞠る。そして、どこか諦観を感じさせる笑みを浮かべたが、その評定とは裏腹に、「だからって譲れるわけでもない。僕は、僕の計画を成就させる」と再度身構える。
「そうだな。だからこれは、負けと思った方の負けだ」
「ふーん。中々いい提案だね。乗った、それでいこうか」
「青春するのは結構だが、そこまでだ」
聞き馴染んだ声が、威圧感を以て放たれる。
この場にいる四人全員が一斉に声の方向へ向き直れば、果たしてそこには提督が佇んでいた。
「これ以上、恩師の忘れ形見を傷つけるつもりならば、この俺とて容赦しない」
提督がそう言って高式を睨むと、高式は更に歪に嗤う。それとは対称的に、城月育の表情が強張る。
「……助けてくれやしなかったくせに。よくもぬけぬけとそんな綺麗事が言えるね。私は……私達は『普通』が欲しかっただけ。その邪魔をするんでしょう?」
憎々しげに提督を睨む城月育に、提督は視線を向けると眉を下げた。
「城月育、と言ったか」
「……」
「全て、俺の責任だ。ご両親を護れなかったのも、君を拉致されてしまったことも、怜の保護すらままならなかったことも、君を見つけて保護するどころか『教会』に利用されてしまったことも」
「……」
「ああそうだとも、心底恐ろしかったさ。俺の無力が、優柔不断が事態を悪化させた。君を絶望の淵に立たせ続けてしまった。その報いが今の状況なのだろう」
「……謝罪はしないんだ」
「謝罪など、許されたいと願う人間のエゴでしかない。すべきは謝罪より贖罪だろう。許されも償いきれもしない大罪を犯したからな」
「あっそ……」
そっぽを向いた城月育から、高式に視線を移した。
「君には感謝している。彼女の身を、心を守ってくれてありがとう。絶望に染まりきっていないのは、君のおかげなのだろう」
「……支え合って生きてきたからな。僕も、育には何度も助けられてきた」
「だが、それはそれ、これはこれだ」
提督は『魔装』を展開し、銃を手に持った。
「怜、育。大切な忘れ形見を、二度も喪う訳にはいかない」
「……」
「だから……すまないな、高式少年。俺は今ここに1人の人間として、立ちはだからなければならない」
「……」
高式はただずっと黙って、提督を見据えていた。
「待ってよ、刹那さん」
唯笑がそこに待ったをかける。
唯笑の顔を窺うと、顔をくしゃくしゃにして、唇を固く結んでいた。
「……戦っちゃ、駄目だよ。お願いだから、戦わないで」
「……なぜだ?」
「さっきから凄く悪い予感がしてるんだ。『駒』もそろそろ回収終わったでしょ?早く撤収しよ?」
「回収はたしかにしたが、もう少し距離が必要だろう。殿としてはもう少し時間稼ぎをだな、」
「違う、時間稼ぎを寧ろさせられてる気分なんだって……っお願い、早く撤収しないと、本当に詰んじゃう」
「そこまで言うならお前達が先に撤収しろ。それなら問題ないだろ」
「ううん、そういう問題でもなくて、このまま撤収してもそれはそれで詰むって気がしてて」
おかしい、唯笑の主張があまりにも支離滅裂だ。怜が肩を支え、「おい、落ち着け」と声をかけるも、主張は止まない。
提督も顔をしかめ、怜に「……兎に角、一旦執務室にでも入って落ち着かせてこい。こいつを身動き取れなくすれば少しは安心だろうさ」と指示を出す。怜はそれにうなずき、嫌がる唯笑を無理やり執務室へ押しやった。
高式暁の話す通り、『教会』を3章が始まるまでに潰すのが最善のルートでした。
ただ、『教会』も大きく、実力者が集まる組織です。
実行しても成功したかどうかと言われると難しいし、成功したとしても多く犠牲が出てしまう。
しかも『心象破壊』の防御が難しい。主人公が喰らえばほぼ負け確になります。
2章以降だと高式、城月育も敵になるし、無力化がほぼできない以上殺すしかないけど、
高式を殺したら蘇生します。主人公がとどめをさせば蘇生しませんが、それをやると即ゲームオーバーです。倒せない敵がいる以上潰すのはほぼ無理→クリスを殺せば『計画』自体は阻止可能。
特に真白唯笑が生き残れる可能性が低いです。主人公を庇うので。
そして、そうなってしまえば主人公の『本当の夢』は絶対叶わないものになります。
どの時期で作戦を実行するかによってその理由は違いますが……それについては追々。




