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同じ空の下で  作者: 桜油
5章
67/140

61話

こんにちは。


昨日は27時半まで起きて小説に夢中だったので、眠たすぎて仕事をサボりたい欲が爆発しそうです。

でも転職前の引き継ぎがあるし、明日明後日有給入れているので休んでる場合じゃないっていう。


それはさておき今回は執行寿羽視点です。

主人公にそろそろ焦点当てたいんですけど…もう少しお付き合いください。


では、どうぞ

志瑞神社。

あたしの担当する区域はそこだけで、あたしがやるべきミッションはたった1つ、志瑞司の護衛だ。

とは言っても、あたしも前線から離れて5年以上経過している。一気に押し寄せたり幹部が来たりしたら、護衛できるか分からない。

だからこそ、拝郷には神社の手前で待ち伏せしてある程度間引くようにお願いしたし、志瑞司本人にも前日、当日朝の作戦行動前に事情を説明し、基本隠れておくこと、見つかったら人通りの多いところに逃げること、自分の命を最優先に動くこと、逃げる際は『放蕩の茶会』が開発したGPS付き防犯ブザーを鳴らしながら逃走することを再三忠告した。


……なので、今、あたしは脳内で恨み言ばかりが浮かんでいた。


なぜ拝郷は幹部……それも超やばいと噂の『評議会』所属魔術師、逸見要(いつみかなめ)を通してしまったのか、なぜ志瑞司には隠れていろと伝えた筈なのにあっさり見つかるようなところにいるのか、なぜ祖母の遺体をかばうように彼は倒れているのか……なぜあたしは戦争から逃げてしまったのか。


今思えばいっつもそうだ。あたしは嫌なことから逃げてばかりだ。


采和のことなんて何も言えない。采和に『生きてるだけでいいの』とか言ってる場合じゃなく、とことん傍で戦うか2人で逃げれば良かったんだ。そのせいで、あたしは自身でやるって言った任務さえ失敗するんじゃないか。

そんな自己嫌悪など待ってもくれない。男は意識のなく、腹部が血まみれでぐしょぐしょな志瑞の懐をまず探り、古ぼけた書記を奪い、更に燃えている神社の奥から部下らしき男が出てきて、既に躯とやらの回収を済ませたのかシャーレを男に手渡した。男は満足そうにそれを見て、部下を行かせた後に志瑞にとどめをさそうと槍を突き立てようとしている。


止めなきゃ。そう思い魔術式を展開しようとした時、男はあたしが潜んでいる方を見た。


息が詰まる。正直、今のあたしでは逆立ちしてもこいつに敵わないだろう。圧倒的な格上のプレッシャーが押し寄せた。


「はあ?何見てんだテメェ。クソ雑魚隠蔽してないで出てこいよ」

「……っ」


多分出てこなかったら殺される。それに、志瑞はまだ死んでいない。保護しなければ。そんな思惑から『隠蔽』を解除したあたしの姿に、男はにやりと哂った。


「へェ。『陰成室』室長か。こうやって矢面に立つとは思ってなかったが、何だってこんな辺鄙な神社に来たんだ?」

「足元の少年を返してもらうため」

「ふん。割と妥当な要求か、『軍』と同盟関係だし」

「……」

「いいぜ、こいつの用事はほぼ終わったしくれてやる。ほれ」


男が彼の体を蹴飛ばし、あたしは『身体強化』でキャッチした。


「……あっさり手放すじゃん。絶対殺すと思ったんだけど」

「だろ?オレってば超絶優しいわけよ。なんせ、お前と2人で逝かせてやるってんだからなあ」

「く……っ」


彼を横抱きにし、あたしは男に背を向けた。

男もすぐに後を追い、目にも留まらぬ槍捌きであたしの全身を狙う。時折バランスを崩しながら、しかし決して転倒はしないように避け続ける。このままでは追いつかれるので、『風来』であたしの肉体ごとふっ飛ばした。

空中にいる間に『障壁』『回復』で志瑞の治療をしながら着地し、必死に走る。

せめて他の仲間と合流できる位置へ、と走り続けるが、ふと後ろを見れば男はすぐ後ろにいた。

斬られる。

せめて志瑞だけは守るべく、『障壁』を展開していたけれど、その槍は間に割り行った人物の短剣によって防がれた。

そのままの勢いで少しだけ走り、立ち止まって後ろを見れば、数年ぶりに見た姿があった。


「采和……!?なんでここに」

「とある筋から、司くんが狙われると聞いてね。半信半疑ではあったけれど、悪い予感がして避難指示の中神社に行ってみて今に至るのだけど。遅れてごめん、間に合ってよかった……寿羽、状況は?」

「……志瑞は見ての通り重体。すぐ治療を始めないとマズイね」

「司くん……」


采和は心底心配そうに志瑞を見た。

采和をここに向かわせたのは十中八九拝郷だと確信していた。提督はなんだかんだ弟思いだし、『JoHN』は契約とか私情とかで采和を巻き込むような真似はできないし、『放蕩の茶会』はどこか采和や志瑞との関わりを避けているように感じられたから。

こんな、人の死が当たり前な世界に二度と関わってほしくないと、そう切に願っていたのに、あたしの実力不足のせいで。

自責の念を押し殺し、あたしが口を開いたところで采和は言葉をかぶせてきた。


「寿羽。司くんの救護に集中して、ここは僕に任せて欲しい」

「采和、何を言ってんの?今あんたは一般市民だし、裏の事情に巻き込むわけには」

「けれど、寿羽は僕より戦闘から離れて久しい。しかもこの魔術師は相当な手練れだ……僕のほうがまだ勝てる可能性が高い」

「でも、」

「いいから早く!」


采和は声を荒げた。あたしがはっとして彼を見たら、苦しそうな顔であたしと志瑞を見ていた。


「僕は、僕の我儘で、親友も相棒も喪いたくないんだ……っ」


そう言ってあたしの肩に縋った彼の手は酷く震えて、汗ばんでいた。

……あたしのこと、まだ、親友とか相棒とか、そんなふうに見ていてくれたんだ……。

場違いながらじんわりと目が沁みてきて、目尻を拭った後に少し距離を置いた。


「ごめん……絶対勝ってよね」

「……ああ」


そうして采和があたし達に背を向け、「お前の相手はこの俺だ」と宣言したところで、あたしは『結界』を貼ってから志瑞を寝かせ、『回復』を志瑞に施しながら止血など始める。


「いいねェ、そう来なくちゃ。やっと手応えありそうな奴が来たじゃねェの。たかが魔術も禄に使えねェ猿の処分とか退屈だと思ってたけど、楽しくなってきたなァ?」

「逸見要。『評議会』幹部ともあろう魔術師が普通の神社にお出ましか」

「いかにも。破壊という言葉が人の形をしているだの、ぶっ壊してぶっ壊しても手を緩めなくて嫌われる魔術師だの言われるオレよ。そういうアンタは『史上最悪の殺人鬼』だっけか。ヒャは、マジで今日最高じゃんか……1回、壊して、壊して、壊し尽くしてみたかったんだぜ?」

「……」


逸見の言葉に采和は答えることもなく、『魔装』『身体強化』を同時に展開し、短剣を両手に2つ装備していた。


瞬間、彼の姿が消えたことで逸見は槍を穂先を下に構え、槍の柄を前に突き出す。采和が逸見の鼻先まで迫り、短剣と槍の柄が大きく火花を散らして衝突する。続けて左、右の短剣での采和の追撃を逸見は槍で防ぎ、そのまま槍を横に薙いだのを短剣で受け流す。槍を構え直して勢いよく突かれ、采和は後ろに跳んで射程圏外まで逃避した。


逸見が雄叫びをあげながら『身体強化』の速度で急接近し、走った勢い、慣性も利用して槍を大きく横へ薙ぎ、采和がそれをかがんで避け、更に側転して追撃の薙ぎ攻撃を躱し、手元の短剣で穂先を受け流す。もう片手の短剣を振り下ろして采和も攻撃するものの、槍で防がれる。暫く剣戟が響き、突き攻撃に対し采和が後ろに大きく跳躍して避けることで剣戟が少しおさまる。

逸見が着地点へ縮地で高速移動し、再度、槍と短剣の音が大きく響く。

なんとか止血や怪我の治療は終わったものの、内臓の損傷もありまだ不安定な状態の志瑞の上半身を支えながら、戦闘の様子を見ていたあたしは思わず、「これが戦線に立つ魔術師の戦い……」と呟いていた。

正直、あたしの目では追いきれない。こんなにも実力差がある。


……今のあたしにできることは、志瑞を死なせないこと、守ることだ。そう思いつつも、容態が安定した以上助太刀すべく様子を窺っていたけど、これじゃ足手まといだろうな。


……でも、あたしなりになんとかできないのかな。


戦闘と志瑞の様子を観察しながら、あたしは策を巡らせた。

明日は別視点です。

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