表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ空の下で  作者: 桜油
5章
66/140

60話

こんにちは。


今日で拝郷本音視点は終わりです。


では、どうぞ。

「残念なこった」


その言葉と同時に『土遁』の柱で女を突き上げ、『風来』で壁に叩きつけ、『魔力撃』を放つ。胸部に命中したが、女はすぐにまた異なる術式でオレの背後に転移して杖を振り下ろす。オレは『身体強化』で前に飛び退き、女が浮遊して『魔力撃』を偏差射撃する。『魔力撃』で相殺し、『魔装』で剣を投擲する。

体を前転、後転と避け、また空中を高速で移動し、わずかに体を傾けるだけで『魔力撃』をギリギリ避けていく。包囲するように再度『魔力撃』を展開すると、『結界』魔術で弾かれ、女が着地して急接近する。周囲に弾幕を張り巡らせるが女には無意味で、『転移』して蹴りを放つ。オレが避けると、また詳細不明の術式が起動され、空間に割れ目が生じる。そこから放たれた『魔力撃』をほぼ反射だけで避け、『魔力撃』のビームを発射する。女もあわせて『魔力撃』を放ったので凄まじい爆発が起こった。『障壁』『影縫い』を駆使して互いに爆風に吹き飛ばされないように踏ん張り、爆風や煙が明ける。互い無傷だ。


明確な違いがあるとすれば、オレの呼吸は荒く、女の息は全く荒れていないということだ。


「全く……どんだけ戦えば気が済むんだよ。時間稼ぎももう良くね?マジでダリいんだけど」

「あら、もう音を上げてしまったの。地獄を見せる、というから愉しみにしていたのに。蛇の生殺しじゃない?」

「頭のネジが飛んでんな、お前さん」

「ふふ。だって滑稽でしょう?地獄も天国も存在しないのは科学的に証明されているのに、まだそれを盲信しているもの」

「は?」

「……失礼。少なくともこの世界ではまだだったわ」

「……はあ。戦い続けるの、そんなに楽しいか?」


そう尋ねた瞬間、転移でオレの前に移動して杖を突きつけた女は、笑みを深めた。


「そうね。戦いこそ、私達の唯一の娯楽。特に貴方たちと戦うのはとても面白いわ。人間はいつだって予想を超えてくる。……とは言っても、もう彼我の実力差は充分理解したのではなくて?」

「オレを殺したとて、その先にお前さんの求めるものは本当にあるのか?」

「さあ。利用できるものは使い潰すだけだけど……あると言ったら大人しく死んでくれるの?」

「ねーな。オレの死に方はオレが決める」

「でしょう?まあ、貴方がどう死んでも、使い潰した結果どうなろうとも、知ったことじゃあない。だって、私達は所詮、この世に在す神の機嫌1つで消される塵芥でしょう?」

「……オレは存外、この世界は気に入ってんだぜ?」

「あら意外ね。貴方はむしろ、こんな世界くそくらえ、としか思っていなさそうだったけれど」


オレの言葉に、本当に意外そうに女は目を瞠った。


ああ、たしかに数年前までそう思っていたとも。


……だが。


志瑞司たちのきらきらしさ、城月怜たちの志、高式暁たちの願い、燿が教えてくれた可能性。

その全てが、オレにとっては光だ。

こいつらがいるなら、あの可能性を追っていけるというのなら、案外この世界も悪くないものだと、心境は著しく変化していた。


そして、女の言葉で、より確信に至ったこともある。


……今日の作戦は恐らく失敗する。だが、それで終わりにはならない。少しは猶予ができるだろう。その猶予の間に調整すれば、その先に、輝かしい未来が、きらきらしい光景が広がっている。オレはそれを見ることは叶わないだろうが、ならばオレはオレなりに無謀な挑戦をしようか。


そうと決まれば、こんな時間勿体ない。


「オレにはこんなことに付き合ってる暇はない。さっさとお前さんを追い返そう」

「……御託は結構」

「へいへい、そうかよ。じゃ、消えてくれ」


瞬間、オレは脳内で解析していた詳細不明の術式をアレンジし、重力を操作して地面に押し付けた。『土遁』で柱を生やし、それを浮遊して避けた女の重力を再度操作して今度は横へ、再度生やした『土遁』に当たるように誘導をかけていくが、女はそれに抗い、『魔力撃』の挟み撃ちも難なく回避していく。

その後女は『身体強化』もあわせて縮地し、杖を振りかぶる。転移術式でワープし、続けてワープを駆使して放たれた『魔力撃』の弾幕も転移術式で躱す。

『魔装』による投剣と『魔力撃』を併用して攻めていく。女はそれを『障壁』でガードしながら弾幕を放つ。その応酬が続き、キリがないのでオレはもう一つアレンジした術式を『魔力撃』に組み込み、わからないように略式で展開した。


女は平然とそれも躱していたが、1つだけ弾幕が掠った瞬間に少し顔をしかめた。


「……なるほど。相手の過去に干渉するのね。この戦闘だけで術式をここまで解析するとは、やはり人間は面白いわね」

「キッショ、なんで分かんだよ」


更に弾幕の応酬は続く。重力を操って床、天井、壁に女を叩きつけたが、女は再度転移した。


「じゃあ、これのタネは分かるかしら?」

「別に初見じゃねーし分かるっての。おおよそ境界でも弄ってんだろ……マジで人間業じゃねーけど、あいつらが知ったら研究したがるだろうさ」


主に城月怜とか、椎名たちとか、執行とかが。

そんな心中を察したか、「教えたらつまらないじゃない?この状況をトップ解決できかねないもの……まあ、トップ解決に近いことをされそうだけれど」と返答した。


「はあ?じゃあそいつ連れてこいよ」

「あら、それは詰まらないじゃない?この物語はここの登場人物だけで終わらせるべきでしょう」

「うっせ。言われなくともオレらの世界はオレたちだけでどーにかするに決まってんだろ。そうじゃなくてオレが個人的に聞きたいことあるから連れてこい」

「ふふ、頼みたいことがあっても貴方なら自力で答えを見つけ出せると思うのだけれど?」

「もう少し欲張りたいんだよ、こちとら」

「貴方にそんな解答しか浮かばなかったなら、同じ結末しか辿らないけれど」

「……だりいなあ……さっきから弾幕のワンパターンだし、さてはもう戦い飽きただろ?時間稼ぎも充分じゃねえの?」


オレの言葉に女は弾幕を放つ手を止めずに少し考え込み、「……ええ、どうもそのようね。むしろ少し悠長にしすぎたかしら?」と弾幕をすべて消す。オレもあわせて弾幕を消した。


「で?お前さんは誰で、こんな長時間戦った理由ってなんだ?調整ってなんのことだ?クッソ巻き込まれたんだから、ちったあ教えてくれても良いんじゃねえの?」

「ああ、少し待って……これで大丈夫ね。さて、普通なら何も答えないのだけれど、貴方には答えてあげましょうか。貴方、もう覚悟決めたみたいだし」


そう言うと、女は独りでに語り始めた。


「私は、古白曜。副人格よ」

「城月怜や真白唯笑の話とは違う?ええ、そうでしょうね。主人格の燿心白は厳密に言えば、『本来主人格になるべき者』だもの。即ち私も厳密に言えば『本来副人格であるべき』……否、『存在しない』人格ね」

「もっとも燿はそんな真相知らないけれど。まあ、だから、あの子は責めないであげて?あの子に真相を隠しているのは私ですもの」

「私はとある目的の為に、古白曜の肉体を利用している。肉体を利用しようとしたら、乗っ取ってしまって本来の人格は消滅。さすがに支障があると判断し、推測される限りでの元の人格を再現し、その人格が基本的に表に出るよう調整したわ。それが燿心白という人格ね」

「私の存在は認知しているわ。だって、あの子の協力は欠かせないものよ……そのためなら私の知識だって与える。作られた人格であること、本来主人格であるべきことはさすがに伏せているけれど」

「もっとも、最近はその作戦に動きがありそうだったから、観察に徹していたわ。おかげであの子を心配させたのは申し訳なかったわね」

「もう少しで私のやりたかったことは完結する。……あの子にも自由があっていいと思うから、そしたら解放しようかしらね」

「目的とは何か?ふふ、それは秘密」

「ええ、それで調整の意味だったかしら?志瑞が致命傷を負いつつ死亡はしない未来が欲しかったから時間稼ぎをしたわ。そうしないと見たい光景は見られないもの。無事終わったみたいだけれど」

「……結局正体はって?」

「それも、規定で言えないわ。言ったら、目的も芋蔓式でわかっちゃうもの」

「代わりに、それ以外なら1つだけ何でも教えてあげるわ。どうかしら?」

「……彼女がいる場所?」

「電子、トリガー、暴力性、政党、アイドル。言えるのはこれだけよ」


オレは感謝を述べた後、これからやることを脳内に列挙して思考を整理する。

古白は志瑞神社とは逆方向に歩き始めた。オレはそれを見送ることもなく思考に没頭していたが、ふと呼び止めた。古白は振り返るでもなく立ち止まった。


「お前さん、さっき『この世に在す神の機嫌1つで消される塵芥』だと言ったな。この先どうなるのか、お前さんには分かるのか?」


古白の表情は窺えない。

だが、背中はどこか愉しそうだった。


「未来は誰にも分からない。分かったとして、それは移ろいゆくもの。今を生きる者は、今に精一杯肩入れすることしかできないわ」

「……そうかよ」

「また、いつか、どこかで」


そう言って、今度こそ彼女はその場を去った。

2章で適当に出しただけの敵ではありますが、背景が複雑になってきたのでここで一旦整理。


???・・・本来の主人格。古白曜が憑依?依代にした際に消えてしまった。

燿心白・・・???を古白曜が復元したもの。魔術の知識、周回している間の情報などは共有されているが、自分が本来主人格であること、復元されたものであり???とは別人であることは知らない。そのため、最近の周回で出てこなかった古白曜は、『周回の間に精神が擦り切れてしまった』と解釈している。また、自身の胸元の核?は古白曜を守るためのものだと認識している。『御伽学院』での活動時はこちらの名前、『国際魔術連合』での活動時は古白曜の名前を使用している。

2章の時は人格が入れ替わったとかではなく、『国際魔術連合』として古白曜の演技をしていたら地雷を踏みぬかれた(核を壊されそうになった)ので、演技をやめて本性を現した。

古白曜・・・『どこか』から『この世』にやってきて、ある目的を達成するために???の肉体を利用しようと憑依。???の人格を復元した燿心白という人格を作り、それが表に出るよう調整した。核は燿心白を制御するためのもので、核を壊せば古白曜ではなく燿心白が消える。最近の周回で変化が生じていたので観察しており、前話〜今話で少し介入すれば目的を達成できそうだったので、燿心白の人格を消して前に出た。


こんな感じです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ