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同じ空の下で  作者: 桜油
5章
65/140

59話

こんにちは。


行く1月、逃げる2月、去る3月とはよく言ったもので、あっという間に3月になりましたね。

きっと3月もあっという間に終わるんでしょう。


今日は拝郷本音視点です。志瑞神社を守る役割の彼は、どうしてるんでしょうか。


では、どうぞ。

昔、自分を極端な天才と思ったことはなくとも、自分の頭に失望することもなかった。

疑問に思ったことがあれば、それはすぐに頭に答えが浮かんでくるから。

最善策だって思いつくそれは、しかし肝心な時には働いてくれた試しがない。


彼女を亡くした時も、あの人と離別してしまった時も、後悔だらけの人生だった。敵討ちと思っても、戦闘を厭う心は正直で、どうすれば憎き『教会』を潰せるか、なんて全く浮かばなかった。

……いや、正確には理解はしていたのだ。最善策などどこにもなく、オレが望んだ形での決着はできないほど詰んでいたのだと。


だから諦めていた。


だがしかし、一体全体、今現在の状況の真相について何も答えが浮かばないのはどうしてなのだろうか。

知りたくて仕方ないし、答えは存在するはずなのに。


「ここから先に進めば、お前さんは志瑞神社に辿り着く。だが、ここは現在何人たりとも通行止めだ。所属、目的などすべて、洗いざらい吐いてもらおうか」


オレは目の前の魔術師に最終宣告を告げる。

本来これは『教会』『評議会』などの魔術師に問うもので、何を答えようが問答無用で殺すだけなのでこの質問に大して意味はない。


だが、この魔術師についてはそうもいかない事情があった。


はあ、とため息をついた。いくら奥で執行が控えている上にある程度周辺の敵意ある魔術師を潰したとて、目的が不明瞭なこいつには頭が痛い。


「お前さん、一体何が目的なんだ?なあ、ー古白さんよぉ」


『国際魔術連合』の制服を着ているこの魔術師は、『JoHN』と関わり始めて数年の間に幾度も会談をした相手。今回の作戦会議には一度も顔を出さなかったので、永世中立らしく一切手出しをしないものと思っていたのだが、そうは問屋が卸さないようで。

しかも、協力してくれると思いきや、どうもこちらを妨害しているように見受けられる。実際、そのせいで1人魔術師を通してしまった。しかも『評議会』幹部というとんでもヤバい魔術師をだ。執行は、そして司は大丈夫だろうか……。

いや、今は背後を心配している場合でもない。一刻も早くこいつの真意を確認して対処せねば。


古白……いや、燿?はふふ、と微笑む。


「いや何、『決意』にはとても大きな可能性が秘められているでしょう?その力を今、私はとても強く欲しているの。それだけのことよ」

「そういうのは、城月や真白に聞いたほうがいいんじゃねえの?」

「いいえ。貴方、『決意』の運用法について更に知っているでしょう?たとえば、ゲームでいうセーブ、ロードとか」

「知らねーって、そんなの」

「真白唯笑や城月怜は『循環』との併用で成し得る現象だと思っているけれど、城月怜の『決意』が弱いだけ。本来の『決意』は、『実現』は『循環』なんてなくても、『否定』に頼らずともすぐに復活できる。正直、今戦っても城月怜の勝ち目はあまりない。……でしょ?」

「すげーな。何でも知ってんじゃん」

「何でもは知らない。知ってることだけ」

「どっちにしろオレはもういらねーだろ」

「理屈が分かったとて、実践はまた別でしょう?」


若干の違和感を残しながら会話は進む。


「何はともあれ、お前さんが来たならオレはいらねーよな。むしろ執行の支援だってできるんじゃね?それでいい、それがいい。じゃ、オレはやることあっから」


そう言って燿?の横を通り過ぎる。

そのすれ違いざま、彼女はこういった。


「協力的な姿勢を見せないというのなら。……奥の志瑞司を、護衛の執行と、貴方の保険も含めて殺すしかないわね」

「……へえ、つまんねー上に物騒なジョークだな。もう少しユーモアを増やせよ」

「ジョークかどうかはすぐにわかるわ」

「言ってる意味わかんねーの?今ならジョークってことにしてやるって言ってんだけど?」

「嫌、と言ったら?」

「地獄を見ることになるな」

「へえ。興味深いわ。地獄とやらを是非とも見てみたいわね」


こいつ……多分、燿心白じゃない。

そう確信したオレは、先ほどのそれより深い溜め息をついて肩を竦める。


「やれやれ。最初からこういう筋書きだったのか?そんなにオレと戦いてーのかよ……誰かさんは」

「別に。寝転がってうまくいくならそれに越したことはないわ。でも、面倒でも働かないといけない時ってあるのよ。人も、神も、天使も」

「ふーん?」


オレはそう相槌を打ちながら魔術式を複数展開する。燿?も同様に魔術式を展開した。

正直、目の前のこいつの話がはったりかどうか、オレには分からなかった。別の意味で真意を確認する必要がありそうだ。

女は笑い、嗤い、哂った。


「ようやく本気を出す気になった?結構。貴方の力、見せてもらうわ……くれぐれも、失望させないでね?」


瞬間、女は『魔力撃』を大量に全方位に放出し、跳躍して追加で『魔力撃』を展開した。最小限の動き、最適なルートを瞬時に見切り、『身体強化』を付与して回避する。


「物量でどうにかなると思ってんの?」


オレも負けじと展開していた『魔力撃』『土遁』を繰り出す。

迫りくる『土遁』の隆起を跳躍して避け、『魔装』で杖を生成して回転させることで『魔力撃』を弾き飛ばし、女は着地して『魔力撃』をおびただしい数展開した。その『魔力撃』は分散して複数の『魔力撃』に分かれていく。それも同様に見切って躱し、ついでに距離を詰めて懐の十徳ナイフを突き出し、杖に防がれた後に差し向けた『魔力撃』も杖で弾かれる。杖の突き攻撃が迫るが後方に移動して避け、『土遁』で高速で等速直線運動をする柱を形成し、追い打ちに『魔力撃』を展開した。

『土遁』を上に避け、『魔力撃』の射線上にきたものの、詳細不明の魔術式とも呼べない奇怪な術式が展開された後に女の姿が消えてスカった。

背後に女は現れて杖を振り下ろしたが後ろに避け、その足元から標識が飛び出したのもジャンプで避けて、更に背後に女が現れて蹴りを放ったがそれも前かがみになって躱し、女を狙って『魔力撃』のビームを放つ。そのビームが途中で軌道が消え、オレに直撃するような軌道に捻じ曲げられ、『障壁』で防御した。


「なんだあれ。魔術じゃねーだろ……だりいなあ。長引く予感しかしねーわ」


そうぼやいてすぐに『魔装』のナイフを数本投擲し、『土遁』で追い打ちをかけ、女が全てかわして空中にいる間に壁に『土遁』を展開して壁から柱を生やす。女は『土遁』に衝突する前にまた詳細不明の術式を展開して、壁から遠ざかるような軌道で着地する。着地点を見定めて放った『魔力撃』を蹴飛ばして、女は再度哂った。

 

「さすが『全知』の『異常性』。楽しいわね、いくら攻撃しても当たらないなんて」

「はっ、冗談。聡明なんかじゃ何もできやしねえのさ」

「私はずっとこのままでも一向に構わないわ」


そして再度『魔力撃』の魔術式を数え切れない量展開して放出した。


「おいおい、勘弁してくれよ。ただ疲れるだけじゃねーか」


そう避けながらぼやき、お返しに『土遁』と『魔力撃』を起動すると、女は魔術式など何もなく飛び上がって、空中を飛行して難なく避ける。


「あらあら、楽しめていないのかしら?」

「お前さんだけだろ、そんな特殊な趣味してんの。もうなんでもありじゃねえか。宇宙人かなにかか?」

「ふふ」

「……おいおいおい、これは?」

「だったら見せてあげましょう。美しく、激しい、『宇宙人』の弾幕をね」


そして再度、世界に存在しない無茶苦茶な術式で弾幕が展開された。


「さあ。この全てを貴方は避けきれるかしら」

「全部避ける必要なんかねーだろ。最適なルートさえ見つけられるなら、それで十分なんだぜ?」


見つけた最適ルートを参考に、オレがするすると弾幕の雨を難なく避けていく。

女は着地すると、なんてことなさそうに嘲笑う。


「驚いたわ。まさかそんな容易に私の弾幕を攻略するなんてね?」

「あっそ。必殺技を回避したようなもんだろ?無駄な時間だしさっさと諦めてくれ」

「ん……、それとこれとは話が別ね」

「残念なこった」


この生産性が微塵も感じられない、いわば女の時間稼ぎのような戦いはまだまだ続くのだった。

拝郷本音視点はまだ続きます。

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