表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ空の下で  作者: 桜油
5章
64/140

58話

こんにちは。


今日で汐宮宥視点は終わりです。


では、どうぞ。

いつものように、彼はリスポーンした。


しかし、一目見た瞬間私は目を瞠る。彼の雰囲気が今までとはあからさまに異なっていた。

身の毛がよだつ殺気、比較にならないほど妖しく輝く紅い瞳、それに共鳴するように赤黒く照らされたナイフ。逃げ出すでも、向かってくるでもなく、ただそこに佇んで私の様子を窺っている。


今まで通りの戦い方では私は間違いなく死ぬ。何の抵抗もできずただ犬死にする。そう理解させられる何かがそこにはあった。


『停止』『魔力撃』『魔装』を直ちに展開する。男は口角を更に上げた。


先手を打つ。展開していた魔術式を同時に起動し、弾幕と多くの鋏を複雑に入れ組んだ形で展開。男は当たる直前まで棒立ちしていたかと思えば、まず右半身を後ろにずらして鋏を避け、体勢を戻した後に後続の鋏をナイフで弾く。『風来』も応用して軌道を変えてブーメランの如く私の手元へ戻る最中だった一部の鋏には直撃したけれど、何事もなかったかのように、ただ無傷で立っているだけだった。

男はそのままナイフを振る。『魔力撃』を略式で起動していたのか、紅い斬撃が数発私へ向かってくる。『停止』してから避けようと『停止』を起動したが、その斬撃は止まらなかった。避けきれず、直撃した。

背後の壁へ押し付けられる。


「かはっ」


吐血して、床に落下する。手をついてしまい、更に咳き込んだ。受け身を取っていなければ、『障壁』で威力を和らげていなければ、今頃私の上半身と下半身はお別れしていたかもしれない。6年前に怜くん達と出会ってから、久々に感じた死の恐怖。なんとか立ち上がるけど、正直足が竦みそうで。


……でも。


だからって、ここをただで通すわけには行かない。


自分を奮い立たせ、『停止』を再度起動して大量の鋏、『魔力撃』を展開した。

男は、『身体強化』を瞬時に展開し、ナイフ片手に前へ駆け出した。鋏は的確に弾きながら……私は再度『停止』して鋏を増やす。それも弾きながら、どんどん私との距離を狭め、ついに射程圏内に入った。

男は横にナイフを、私の首めがけてーッ!


「『停止』!」


瞬間、男の動きは止まった。

緊張から解放され、思わず四つん這いになった。激しく息が漏れる。


あと少しで死ぬところだった。別に魔術名を唱える必要などないのに、思わず叫んでしまったほど。

どうしよう……勝てる気がしない。むしろこのままでは殺されてしまう。唯笑ちゃんが言っていた話とは違っていたけれど、彼女を責める気にはならなかった。私が不用意に怒らせたせいかもしれない……。


何はともあれ、逃げないと。

そう思い、立ち上がろうと足に力を入れて……男の瞳が、紅く光った。


「っ!」


ほぼ反射で手元の鋏を構えると、強い力が加わった。

『停止』中であるにもかかわらず、男は動き出してナイフを突き出し、それを私が鋏で防いだ構図だった。男女差が響いてだんだん私のほうへ押しやられていく。『風来』で男を飛ばし、男は転倒しながら『魔力撃』を数発放つ。『障壁』を展開したところに男もナイフを突き出して突進する。『障壁』にナイフがぶつかったと思えば、更に私は驚愕した。『障壁』に罅が入って、ナイフが貫通している。


『障壁』の位置を変更して無理やり押し出し、宙に浮いたところを掴んで床にたたきつけてから鋏を複数投擲、『影縫い』で咄嗟に動けないところに蹴りを放つ。足を捕まれて投げられて床に叩きつけられ、『土遁』で柱を生成して柱で押し出す。更に『身体強化』『風来』に男に追いつきながら蹴っ飛ばし、鋏で追撃。男が着地した後に駆け出すので鋏で牽制するが、今度は狙っている筈なのになぜか当たらない。

そのまま距離を詰められて蹴りをくらい、続けて投げられ、私も返しで鋏で背中を斬りつけ、『身体強化』でパンチ、キックを混ぜてダメージを与えるも、男はやはり無傷のままで、『魔力撃』を放つ。避けるのに精一杯で、左に移動する。そのまま男が『魔力撃』を連打し、私は縮地で距離を詰めて背後に移動し、鋏で首を斬りつける。その攻撃は首の皮一枚切っただけだった。男は返しに『魔力撃』を付与したナイフで至近距離から振りかぶる。それも直撃して、再度壁に叩きつけられる。受け身が間に合わず、肋骨が折れていた。動けずにいる私に男はとどめとばかりにナイフを再度振りかぶる。


もう避けられない。魔術の展開も間に合わないし、腕も力が入らない。万事休すだった。

ナイフが私の首元まで迫り、そして、容赦なく、そのナイフは私の頸動脈を切り裂いた。

血が首から勢いよく吹き出しているのを人ごとのように眺めて、視界が回って、そのまま、


暗転。




「……ごめん、待たせたね。育、次に行こうか」

「うん。……暁」

「どうしたの?」

「この子……本当にこれで良かったの?」

「……どういう意味?」

「いや、だって……暁の『昔』の仲間じゃなかったの?」

「たしかにそうだよ」

「なら、」

「でも、今は敵だ。僕たちの目的のためには致し方ない犠牲でしょ」

「……」

「それに、目的さえ達成してしまえばどうせ元通りになる。ここでの生き死になんて関係ない」

「……」

「僕たちには絶対成し遂げないといけない夢がある。経緯、手段なんて問う余裕なんて無い。そうでしょ?」

「……分かった」

「よし。じゃ、行こっか?」

「うん。……ちょっと待って」

「いいよ……あ、ちょっと!何『否定』しちゃってんの!?」

「この子の怪我を無かったことにしたよ。この子、やっぱ悪い人じゃないし」

「いや、そんなこと言ってる場合じゃ」

「でも、この子……最初に暁が死んだ時、凄く心配そうにしてたよ?私の方をチラチラ見て、なんなら私が残ってるのに背を向けたし。私の情報をどこかから聞いてて、私を逃がそうとしたんじゃない?私を逃がすってことは私が蘇生する隙を与えることにもなるでしょ?」

「その情報は……あの女からか。でも、それにしては僕の仕様を知らなすぎる。情報の精査があまりなってないな。拝郷も味方につけたはずなのに」

「『教会』を探るのは厳しかったんじゃない?」

「そういう理屈かな……?」

「暁だってこの子のあの魔術に途中まで打つ手なしだったでしょ。あれは何だったの?」

「多分時間停止だね。『前回』は見たことないし、あそこまで魔術師としての戦闘をこなせてなかった」

「『前回』と『今回』ってやっぱり違うものなの?」

「そうだよ。僕と育の再会(・・)すら有り得なかった」

「なるほど。……まあ、知らないことは互いにあれど、この子には殺す気はなかったんじゃない?初手だって、死んだ瞬間すっごいびっくりしてたし……城月怜なら回避できるから君もできるって解釈していそうだね」

「……いや、でもじゃあ、僕を何回も殺したのは……」

「暁が何回も向かってくるなら自衛ぐらいするでしょ」

「……」

「まあ、そうじゃないとしてもだよ。暁、ちゃんと『決意』使った?」

「使ったよ。ちゃんと」

「この子、死んでなかったけど?」

「はあ?」

「いや、確かにギリギリで、放置してたら多分死んでたとは思う。……そもそも『決意』(・・・・)の攻撃なら魔術なんて貫通するからこんな苦戦しないよね?」

「……」

「たとえ『今回』ですべて終わるとしても。それでも……自分の心に素直でいてあげても良いんじゃないかな」

「……育には敵わないなあ」

「納得した?じゃ、治療も終わらせて、『影縫い』と手足拘束……うん、抜かりなく終わったよ」

「……じゃあ、改めて、行こうか。因縁の相手のところへ。これで、全て終わる」

「……うん」

戦闘シーンって本当難しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ