3話
こんにちは。
この1章は、ヒロイン真白との会話がメインになります。
では、どうぞ。
真白唯笑との出会いの後。
真白は同じ孤児院に入ると言い出した。
怜は、「お前の両親はどうするんだ」「どうしてまたそんな唐突に」と、孤児院がボロいこともあって真白を止めたのだが。
「私の両親はもうすでにネグレクトを始めてるよ。子供でも食い扶持を稼げる仕事って魔術組織の少年兵くらいだから、それで魔術師始めたんだ」
「唐突じゃないよ。怜が『教会』に命を狙われるのは初めてなんだ。正直、今更殺そうとしてくる理由が私もわからない以上、対策は君を護衛するくらいしかないんだよね。怜も『決意』を使えるから滅多なことじゃ死なないと思うけど、一応『決意』を使いすぎるのはまずいからね。誠心誠意、怜を守らせてもらうよ」
「孤児院がどうとかどうでもいいよ。怜といられるなら、絶対楽しいし」
と悉く反論を受け、怜も本人が納得しているなら、と孤児院へ招き入れた。
怜のここ数日の行動と、今日無傷にも関わらず血まみれな服装、同じく血まみれな少女一人という状態での帰寮。施設は子どもの悲鳴と施設スタッフの困惑で一気に騒がしくなった。怜は自室から着替えと貴重品を回収するよう指示をされ、真白は予備の子供服と合わせて大浴場に追いやられた。怜も数日前隠蔽したノート、財布、着替えを素早く準備し、大浴場へ向かって入浴を済ませる。
真白と怜が入浴を済ませてラウンジに戻ると、施設のスタッフがおどおどとしながら、怜と真白の部屋をひとまとめにした件を報告してきた。
なるほど、もはや問題児扱いになり、問題児はまとめて管理しようというわけらしい。
「……俺の計画早速壊れたが?」
「なんのこと?」
怜のぼやきに真白が反応したが、怜は静かに首を横に振って、新しい自室へ向かう。
「あ、ちょっとー」と後を追う真白と共に新しい寝室へ入ると、前までの寝室より広くなっていた。比較的新しい家具が並び、ベッドも二段ベッドではなくシングルベッドが2つになっている。
「へー。結構いい感じの部屋じゃん」
怜を追い越して、真白が真っ先に片方のベッドに腰掛けた。
「お、おい」
「え、こっちのベッドが良かったの?」
「いや、違うが」
「ならいいじゃん。ほら、さっさと入ってドア閉める」
と真白にジェスチャーで促され、怜が扉を閉めると、続けて「ほら、あっちのベッドにでも座りな」と言われ、なぜ真白が部屋の主のように振る舞っているのだろうかと首を傾げながらも空いていたベッドに腰掛けた。
それを見て真白が「いやー、本当良かったよ。お陰でふたりきりで会話できるね」と本日二度目の防音結界を張っていく。
「何もよくないだろ。問題児扱いだぞ?このままじゃ前回みたいに孤児院を出ていく羽目になるかもしれない」
「大丈夫。むしろそうなったほうが良いよ。それくらいこの孤児院はやばい。怜……今は暁か。彼もそれで出ていってるし。12歳になって準備してから出ていこう」
「そうなのか?いや、それ以降はどうするんだ」
「そのへんも考えてるよ。ホームレスには絶対ならない以上、どっちかといえば隔離されるくらいには嫌われてたほうが好都合だから、本当最高!しかも今日早速隔離!内緒話し放題だよ、ひゃっほう!」
とニチャニチャする真白に、まあそういうことなら、と怜はノートに書きなぐった今後の方針①を横棒で消した。
孤児院を追い出されない、出てもなんとかなる保証ができた以上、怜も不干渉でいてくれたほうが助かるのである。
真白は「それに、昼は切羽詰まって結局何も答えてないから」と続けた。
「よし。じゃあ暴露大会を始める!司会、進行は私、真白唯笑!交代交代で互いに気になる質問するから、世界救済ができなくなる可能性がある質問以外はしっかり答えるように!」
「また唐突だな。まあ、俺の質問にある程度答えてくれるなら是非もないが、真白はいいのか?多分俺のほうが聞く回数多くなるぞ」
真白の提案に怜がそう返すと、真白はあっけらかんとしていた。
「大丈夫大丈夫。だって、私も君のことあんまり知らないし」
「はあ?でも普通に俺の名前を当ててたじゃないか」
「そりゃあね?ずっと前から知ってるもん。でも、『前回』の君はあまり知らないから。君が協力するって言ってくれた以上、君は私の相棒なわけ。じゃ、パートナーのことくらいちゃんと知りたいじゃん!」
あとね、と真白は続けた。
「私は君を怜って名前で呼んでるのに、君は私を真白って呼んでるよね?でも相棒同士なんだから私のこと、唯笑って呼んでほしいな」
真白って名字もそんな好きじゃないしなー、と話す真白に、怜が「相棒って、いつなったんだよ。せいぜい協力者でしかないじゃないか」と突っ込めば、彼女は「んー、一理ある」と腕を組んでうなずきつつも、「でもね、」と切り返す。
「私の計画が失敗したら、私も君も消えるよ?まさに一蓮托生、運命共同体なのであります」
「……いや、それは他の人もそうだろ」
「あら、そうだった。てへぺりんこ!」
でもやーだー、名前で呼び合いたいー、とうだうだと駄々をこねた真白に、怜は苦笑いして、「ああ、わかったわかった。もうそういうことでいいよ、唯笑」と観念したように言った。唯笑はすぐに地団駄をやめて、「お、よろしくねー怜!」と目をキラキラさせる。元の瞳の色が相まって、青空に浮かぶ太陽のようであった。
表情豊かだ、と感心している怜に、唯笑は「じゃ、早速私から!」と口を開いた。
「一個目の質問!好きな食べ物は何?」
「待て、俺が答えるのはそんなことでいいのか?」
唯笑の質問に怜が異論を唱えると、「もう、しつこいなあ」と唯笑が口を尖らせた。
「こういう質問がいいんだ。言ったはずだよ、私は怜のことをちゃんと知りたいって。何回もの繰り返しを経て、最後の周にして未来あるこの世界で、私は君に漸く出会えたのさ。君は世界を救う英雄になる。言わば私は君のファン第一号なんだよ。それに、怜と二人三脚で頑張っていくこれから12年間が、すっごく楽しみだから!」
とますます目を輝かせる唯笑に、怜は若干気圧されつつも、どこか嬉しくて、恥ずかしくて、少し顔に熱が籠もっているのを自覚しつつ「そうか、じゃあ、えっと、ポテチかな」と返した。
「あー、美味しいよね。風呂上がりとか夜中に食べるのとか本当最高だよね!何味が好きなの?私はやっぱシンプルに薄塩だよね」
「あ、っと、のり塩……?」
「のり塩!いいじゃん!男は黙ってのり塩!ってね。よっ、良い漢!」
「いや初耳なんだが?」
「そりゃ今考えたもん」
「造語かよ!?」
思わずノリツッコミする怜にケタケタ笑っている唯笑を見て、今まで緊張していたのが馬鹿らしくなった怜は、強張っていた肩をほぐすように自分で揉んだ。
そして、怜自身も聞く質問の優先度を脳内で切り替えた。本当は唯笑に『逆行』やら『異常性』やらについて尋ねようと考えていたが、こうも表情をころころと変える、いい意味で魔術師らしくない彼女個人への興味が出てきていた。怜にとって、特定の個人に対し、仕事以外の理由で興味を抱くのは『前回』も含めて初めてのことだった。
「じゃあ、次は俺か。好きな飲物ってなんだ?」
「あ、そういうこと聞いてくれるんだ」
「そうだな。本題の前に唯笑本人のことを聞いたって良いだろうと思ってな。どうせ時間はある」
「いいね、わかってきたじゃん。そうだな、私はー」
と、たわいない雑談が数時間ほど続いた。
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