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同じ空の下で  作者: 桜油
4章
52/140

47話

こんにちは。


昨日は遅くまでゲームしてたので寝不足です。

風邪引いてるのに、作者の私はアホです。

反省はしていますが後悔はしていません。


それはさておき、今日で汐宮宥の回は終わりです。

では、どうぞ。

魔術組織は、基本的に関係者以外には認識できないように『認識阻害』の効果がある結界が常時貼られている。

これによって侵略を阻止できる他、機密情報の保護や避難所としての運用など様々な用途に活用できるのだが、『軍』は政府機関である一面もあってか、『認識阻害』の結界を運用していない。一般市民が利用するスペースとしてカフェ、託児所、多目的ホールなどがあり、様々なイベントが開催されている。


また『軍』本部以外にも、『軍』や舞月財閥が連携して実施されている催しもある。桜坂駅の構内にはストリートミュージシャンやマーチングバンド、劇団、他アーティストが曲や芸を披露する広場があり、毎年夏には河川敷で舞月財閥の出資により露店が並び、『軍』の魔術師が花火をあげる夏祭りが開催される。

そんな興行が数多くある桜坂市の今年の夏祭りに、志瑞たちのショーユニットが出演するので観に来て欲しい、と怜宛に連絡が来たので、今まではあまり参加していなかった夏祭りに、怜たち『JoHN』は参加することになった。


提督も最初は遠慮していたが、弟が出演すると分かるとすぐに桜乃に仕事を投げ出していた。桜乃は桜乃で息子と娘と一緒に夏祭りに行きたいと渋っていたのだが、話し合いでなんとか夏祭りに行く権利を勝ち取った提督は珍しく感情を前面に押し出してガッツポーズをしていた。決め手は提督の「だが桜乃、お前の息子は既に成人しているし、優秀な魔術師だから自衛も問題ないと聞く。兄妹水入らずで夏祭りに行かせてやれ。そろそろ子離れすべきだろう」「大事なものを後生大事に抱えているだけでは、新しい大事なものは拾えない。手放す勇気が未来を創る」というコメントだった。桜乃の受け売りだというそれは、ものの見事にブーメランとして桜乃夫婦の脳にクリーンヒットした。


そういった経緯で夏祭りに赴いた怜たち6人だが、提督は「俺がいては気を遣うだろう。遠慮せず、皆で楽しんでこい。俺は1人で露店でも見ておく」とすぐに離脱したので、言葉に甘えて、ショーまで時間があるから、と5人で店を廻る。


かき氷屋、たこ焼き屋、数字合わせ、型抜きとある程度廻ったところで、花火が打ち上がるというアナウンスもあり、志瑞が予め送付してくれていた関係者席のチケットを手元に用意して席へ急いだ。

受付を済ませてから指定席に座ると、間もなく花火が上がった。


『ところで、怜さ。この浴衣姿になんか思うとこないの?』

『たしかに浴衣だな。いつもと違う服装だが、やはり夏祭りだからか?』


花火の傍ら、花火に夢中な宥、有希、紗季の邪魔にならないように『伝達』で唯笑が怜に話しかけてきたので、怜も『伝達』で返答すると、唯笑は『むー』と不満げに頬を膨らませた。


『女の子が普段と違う服装をしていたら感想を言うものだよ?それとも、似合ってなかった?』

『ああ、なるほど。疎くてすまなかった。……綺麗だな。似合っている』

『ん、よろしい』


怜の感想に唯笑は満足げに頷いて、花火に集中……と思いきや、手元で魔術式を小さく展開した。瞬間、花火にキラキラとした星のようなエフェクトがつき始めた。


『……唯笑?』

『ばれてら』

『いや、花火に集中してない奴なら誰でも分かるだろ』

『まあ隠してないしね』

『……なんでまた、こんなことを?』

『弟くん、演出家らしいじゃん』

『ああ、たしかにそう言っていたが』

『弟くんは戦場の演出家でもあるんだけど、やっぱこういう晴れ舞台で演出家しててほしいなって思うんだ』

『……』

『で、私は怜が主人公の、セカイ系の物語の演出家な訳』

『……とんでもなく気障なことを言うじゃないか』

『いいでしょ、たまには』

『……なあ。唯笑は将来、どうしたい?』

『何?藪から棒に』

『いいだろ、夢とかは語るもんだ』

『やだ、怜も気障じゃん。本当どうしたの?』

『前から気になっていたんだ』


怜はこの機に、唯笑に前から抱いていた疑問をぶつけることにした。


『世界を救済したとして、唯笑は何がやりたい?』

『……私、世界を救えたその時には、多分もういないんじゃないかな?』

『そうとは限らないんじゃないか?』

『ううん、確実だよ。奇跡でも起きない限りそんなことにはならない』

『じゃあその奇跡、起こしてみせるから』

『やめだよやめ。こんな議論に意味なんて無いって。たとえ私がそこにいなくたって、皆が笑って迎えられる結末があったら、それで充分幸せだよ?だから、いざ私が死んでも悲しまないでね。笑っててほしいなあ』


ピシャリと言い切った唯笑は怜の言及を妨げるように、『それにほら、夜空を飾る流星って感じで綺麗じゃない?』なんてごまかして夜空を見上げる。星明かりに照らされる唯笑の横顔はやはり綺麗だ、と怜は感じた。


だが、どこか、儚く感じて胸が締め付けられるようだった。


そして花火が終わり、いよいよショーが始まった。

ビーチや海の家をイメージした舞台で、水着をイメージした衣装の4人と、宇海が造ったであろうアンドロイドが登壇する。位置につくと音楽がなり始め、識名のソロから歌が始まる。サビの後に間奏が入り、フラダンスのような踊りが展開される。

間奏が落ち着くとAメロでラップ部分が始まる。


「今回、広く一般向けでショーをするのは初めてだからな。オレ達の今までをラップにまとめてみた」


とは、事前に曲について語りたい、と電話でマシンガントークをしていた志瑞の言である。アンドロイド、舞月、黒守弟が主に歌っている。

そしてラップが終わると、引き続き今までのことを歌詞に書き起こしたらしいBメロが始まる。志瑞がメロディーを担当し、途中から舞月がハモリを入れてきたところでサビに突入した。識名やアンドロイドが主旋律を歌いつつ、他の3人でハモリ。和音が心地よいが、それと同じくらいに目を瞠るのが、全員の指から小さい星が瞬いて線を描いているような景色になったことである。魔術での演出だろうとすぐに理解したが、周囲の観客からは歓声が上がっていた。


サビはあっという間に終わり、最後に冒頭と同じフレーズが繰り返されて曲が終わった。盛大な拍手が巻き起こる。怜たちも拍手で称え、声をかけようか悩んだが宥の様子を見て、志瑞にメールを送るに留めた。

宥は終わった途端に客席から姿を消していたので、怜が慌てて探すと、少し外れた一角に佇んでいた。


「舞月には声をかけなくていいのか?」

「……とても、きらきらしくて。私、声をかけてもいいんでしょうか?」

「友人だろ、いいに決まっている」

「私、裏の人間ですよ?」

「もっと裏側の魔術師が仲間として同じ舞台で踊ってるんだ。何の問題もないじゃないか」


そう怜が反論していくと、宥は空を仰いだ。


「……私、ずっと恨んでました。何で助けてくれなかったのかって」

「……」


舞月のことか、なんて、怜は確かめなかった。


「子どもにできることなんか限られてるって分かってますけど……怜くんたちに会うまでそう思わずにはいれなかったんです」

「……」

「怜くんたちに会ってからは、あまりそう思わなくなりました。けれど、今度はずっと気がかりでした。私のせいで巻き込まれたんじゃないかって」

「……」

「でも、愛ちゃんに会えて……愛ちゃんとお話して、今日の舞台を見て。やっと、その胸の支えが取れたんです」

「……そうか。今は、どう思うんだ?」

「……多分、時間を巻き戻せば、より良い選択ができるとは思います」


怜の問いに返ってきた答えの冒頭は予想外だったので、怜は宥の方をじっと見つめる。

続きは案外すぐに発された。


「そしたら、両親は生きてたかもしれませんし、愛ちゃんと生き別れることなんてなかったでしょう。もう少し普通に女の子として生きられたでしょうね。桜坂学院に2人で入学して、なんてのも楽しそうです」

「……そうかもな」

「でも、そうなった時、怜くんたちとは出会えていないかもしれない」

「……」

「それに、愛ちゃんも、あんな素敵な仲間たちとちゃんと会えていたのか分からないですよ。愛ちゃん、私に言ったんです。『ある男の子の言葉を聞いて、宥ちゃんのために歌おうと思ってスターを目指し始めた』って。そんな未来が来ないのって、寂しいじゃないですか」

「……」

「だから、私は今、満足です」


ありがとうございます、と宥はそこでようやく空を仰ぐのをやめた。目元が赤い理由は怜は聞かなかった。


「私、決めました」

「決めた?何をだ?」

「世界救済後の進路ですよ。私、舞月財閥で護衛として働こうと思います」

「……そうか」

「大切な友人の明日を守りたいんです」

「でも、舞月愛が舞月財閥で働くとは限らないんじゃないか?」


という怜の指摘に、宥は想定済みだったのか特に動揺もなく返答した。


「そんな未来があれば尚いいですね。その時は心置きなく集中できるよう、実家を守ってみせますとも」

「舞月財閥が宥と舞月愛を引き離したとわかっていてもか?」

「むしろ私が巻き込んで悪影響が出ないように守ってくれていたんでしょう?それに、拝郷さんから聞きましたよ、財閥も私を保護する方法を検討してくれていたって。なら、その恩に報いたいじゃないですか」


一切の迷いもなくそう言い切る宥に、怜は肩を竦め、「『JoHN』には残らないんだな、寂しくなる」と言う。宥が少し申し訳無さそうに眉を下げるのを制止し、怜は純粋な気持ちで、「応援するよ」とそう言った。

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