46話
こんにちは。
昨日の続きですね。
また新キャラです。
では、どうぞ。
指定の場所は、舞月財閥が開業、全国的に展開されている大型ショッピングモールの中でも桜坂市に構えている支店の中にある、フードコートの一角だった。
怜たち『JoHN』も買い出しや普段遣いの品を買い物したり、ウィンドウショッピングを嗜んだり、フードコートや休憩スペースで雑談をしたりなどしている。桜坂駅の近くというアクセスの良さも相まって利用者は多く、最近の変化としては桜坂学院の生徒を見かける数が増えたということか。
怜と宥がそこに辿り着くが、拝郷や依頼主の意図を図り損ねている怜は宥に柱の陰で待機するよう伝えて、単身で指定の場所で待機した。なんとなく端末をいじって待機しようか、一旦依頼主に到着した旨の報告でもしようか、と端末を取り出した怜だが、「……君が、『JoHN』の代表か?」と声がかかった。怜は声の方向を見て、思わず目を瞠った。
稲穂のように綺麗な黄金色の髪、若干吊り目ながらぱっちりと開かれた夕焼け色の瞳、威風堂々とした雰囲気を醸し出しているが、着ている制服から桜坂学院の生徒であることが、つけている腕章から生徒会長であることが分かる。
細かい違いこそあれど、怜もよく知る秩佐白星そっくりの人物がそこに立っていた。
怜は秩佐の名前が喉元まで差し掛かっているのを抑え、平静を保って「そうだが。今回の依頼主はお前か?」と尋ねた。
男は裏のことなど全く不慣れなのであろう、酷く緊張したような面持ちでゆるゆると頷いた。
「……汐宮宥は、連れてきているか?」
「ああ、勿論とも」
「その割に姿は見えないようだが……」
「お前がどういう意図で会いたいと思っているのかいまいち分からなかったからな。何、今からする質問に、素直に答えてくれれば大丈夫さ」
「な、るほど」
と彼は戸惑いながら納得していた。
怜は気になっていたことを尋ねることにした。
「まず最初に。名前は?」
「志瑞司。桜坂学院2年で生徒会長をしている」
「そうか。『JoHN』を知ったきっかけは?」
「最近記事を見た。それで依頼して今に至る」
「まあ、そうだろうな。記事で知った情報以上に、俺達について知っていることはあるか?」
「……4人から話を聞く機会があった。生徒会の仲間3人と、本音というオレの友人なのだが」
「4人も?拝郷の他に3人……仲間はどういう人だ?」
「仲間は、君たちも知っていると思うぞ?采和と、宇海と」
「采和……宇海……ああ、あの2人か」
2年前に休職した筈の2人だった。
たしかに桜坂学院に入学するよう唯笑が誘導していたっけ、と怜は記憶を掘り返して納得した。たしかにその2人からなら怜たちの記事を見て話すこともあるだろうと。
残り1人だけが不可解だが、志瑞の挙動から察するに、その残る1人こそが宥に会いたい人物なのだろうと結論づけ、怜は回答の途中ではあるが、「それ以上はお前は答えなくていい。なんとなく分かった」と切り上げた。
なるほどたしかに唯笑の下馬評の通り、善良な一般市民であった。秩佐白星と同一人物なのだから、唯笑も太鼓判を押すはずであった。だが、その宥に会いたいと願っている人物が善良であるとは一概に言えない。
「それで、その仲間の1人が宥に会いたい訳だな」
「そうだ」
「じゃあ、その本人と少し話がしたい」
「分かった。よし、愛。こっちだ!」
と志瑞が呼ぶと、今度は女性の声がした。
「司くーんっ!」
「ゴフっ!?」
そのまま、桜坂学院の制服を着た女子生徒が志瑞に突進し、志瑞がうめき声を漏らした後に「突撃しろとは言っていない!」と叱るが、女子はその説教も何の其の、幸福そうに「えへへへへー」と満面の笑みを浮かべていた。
「あー……彼女は?」
「あー……」
怜の問いに気まずげに志瑞が声を漏らした後、軽く咳払いして答えた。
「紹介する。こいつが、今回汐宮宥に会わせたい人物……オレの仲間の、舞月愛だ」
「舞月?財閥の?」
そんな世界的に有名な大企業の令嬢が何の用なのだろうか、と怜が怪訝にしていたが。
「愛ちゃん……?」
「宥?まだ合図は出してないだろ……」
宥が柱の陰から舞月を見て姿を現していた。怜が、たしかにもう少しで合図しようとは思っていたが、と苦笑しつつ傍観の姿勢に入った。
舞月が声の方向を見て、感極まったように涙を瞳に滲ませ、「宥ちゃーんっ!」と志瑞の時とは比較にならないほどの勢いで宥に向けて突進していく。宥はそれに驚いたように目を瞠って、仕方ないなあ、と優しい顔になり、そのままの勢いで跳びついた舞月を、ふんわりと抱きとめた。
舞月はそのまま抱き着いて、宥と会話を始めた。
それを遠目から眺める怜に志瑞が、「良かったのか?まだオレ達に聞きたいことがあったのでは?」と尋ねる。
怜は、舞月と宥の感動の対面、とも思しき光景を見守りながら、「ああ、問題ない」と答えれば、志瑞は驚いていた。
「舞月財閥なのは分かっていただろう?もう少し警戒されると思っていたが」
「まあ、名前だけならたしかに警戒しただろうが……志瑞と話してる様子を見たらそんな気は失せたな」
「いや、こんな短時間でなぜそんな信頼をされる……?」
「俺は俺なりに情報の伝手があるし、あの拝郷が『真の友』って認めているなら、ある程度は信用に値するんじゃないか?」
「あの、って拝郷は割と人懐こい性格だろう?」
「いや、あれほど人間不信な人もいない。そもそも、いつから仲良くなったんだ?」
「入学式初日に、オレの想像と桜坂学院の実態があまりに異なっていたから、何とか出来ないかと悩んでいたら声をかけてきたのが最初で……だからもう1年以上前になるか」
「割と初期じゃねえか。……何はともあれ、あんな仲睦まじい様子だったら良かった」
暫く2人の様子を見守っていると、2人が戻ってきた。
仲良く手をつないで戻ってきた2人は、すっきりしたような表情で笑っていた。そのまま歩を進め、志瑞と怜の前で立ち止まった。
「志瑞さん。この度は愛ちゃんに会う機会をくださって、本当にありがとうございます」
と丁寧に礼をする宥に志瑞が、「いや、礼には及ばない。愛が会いたがったからそうしたまでだ」と返す。舞月が「うん、記事を見た瞬間ね、絶対会いたいなって思って……司くん、本当にありがとー!」とまた志瑞に突進しては、「うおっ!ええい、いちいち突撃しなければ礼もできんのかお前は!」と一喝こそしていたが、しょうがないとばかりに優しげな表情になっているのが窺えて、怜は微笑ましい気持ちになった。
抱き着いたままの状態で舞月が怜に視線を向けた。
「城月くん……だったよね?」
「ああ、そうだが」
「宥ちゃんのこと、ちゃんと守ってくれてありがとー!」
舞月の素直な感謝の言葉に、「や、別に。俺は小学校卒業してからしか付き合いなかったし……」と照れくさくて苦笑した怜だったが、舞月が「たしかにそーかもしれないけど、」と話を続けた。
「宥ちゃんがちゃんと笑えるの、きっと城月くんたちのおかげだと思うから!」
「……!」
舞月はそのまま過去を語った。
舞月と宥は、幼稚園の頃に親しい間柄だった。しかし、宥が1日だけ幼稚園に来ない日があって、それ以降周囲がおかしくなってしまった。舞月の家族からも宥との付き合いをやめるようにと言われ、周囲の大人に引き離されながら、それでも仲良くしようとしていたが、宥の両親の訃報を最後に会えなくなってしまった。他に目的はあるものの、宥を見つけ出したいという思いもあって、現在生徒会として活動している、とのことだった。
「生徒会の活動がどう関わってくるんだ?」
怜のその問いに答えたのは、志瑞だった。
「オレたちは、皆を笑顔にするスターになるため、桜坂学院を再興して廃校を阻止するために、定期的にイベントを開催したり参加したりしてステージの上でショーをしている。機会があれば、是非、観に来て欲しい」
「……もしかして、誰も傷つかない魔術の使い方をするのか?」
「ああ、魔術で人が笑顔になればいいという采和の夢のことだな。彼は最高の演出家だ。あ、
あと、宇海の作る機械も素晴らしいぞ!彼女は采和に似て『自分の作る機械で人を笑顔にしたい』という目標があるからな!愛の発想力と積極性、実行力にはいつも助けられている」
「うん、うん!采和くんも宇海ちゃんも凄いよね……!そうそう、司くんも凄いんだよ?脚本とか曲とか歌詞を司くんは作ってるけど、読んだり聴いたりしてると、あたしも頑張ろーって思えるんだー」
志瑞も舞月も互いを褒め合い、同じチームの仲間のことまでアピールする様子に怜と宥は少し顔を見合わせ、くすりと笑った。
「うん?いきなり笑ってどうした?」
と怪訝そうな志瑞に、「いや。いい仲間を持ったんだな」「そうですね。とても素敵な関係だと思います」と怜も宥も返した後、怜は懐から名刺を取り出して志瑞に差し出した。
「今後は直接連絡してくるといい。提督と拝郷に毎回内容を確認されると、急ぎの依頼も反応が遅れるからな」
「なっ……1週間前には依頼を出していたのに音沙汰がなかったり、本音が少し余裕を持って日時を設定しろと言っていたのもそれが理由か?」
「ああ。今日この依頼を知った。偶々俺が事務局の端末を見ていなかったら、見ていたとしても拝郷が優先順位を最高位にしていなかったら、間違いなく埋もれて、すっぽかされていただろう」
「……そういうことなら、今後はそうさせて頂こう。格別な配慮に感謝する」
と名刺を仕舞い込んだ志瑞が、「オレに連絡する機会があるかは分からないが……いつでも桜坂学院に連絡してくれて構わない。来賓として迎えるよう準備もしておこう」と話して、その場はお開きになった。
志瑞司たちの活躍は、基本的に番外編で書こうと思ってます。
モチベーションとか次回作のスケジュール考慮で、ダイジェストにはなるでしょうけど。
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