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同じ空の下で  作者: 桜油
4章
48/140

43話

こんにちは。


前回から少し時間が飛びます。

今更な説明ですが、4章は基本的に、主人公が15才から17才くらいの出来事をまとめています。


では、どうぞ。

某日。

日が沈む時間も早くなり、重ね着をしないと気持ち寒く感じるようになってきた、紅葉が見頃になっている頃、しばらく音沙汰なしだった拝郷から『有栖の連絡先を入手できた』と連絡が入った。

文面には、『ゆっくり話したいから、直接会えないだろうか?』といった誘いもあったので、唯笑の提案もあり、なじみの喫茶店『ソーサリータクト』での待ち合わせとなった。普段であれば、怜と唯笑がペアになっている任務の日の空いた時間に設定するのだが、最近提督は別々でペアを組ませようとすることが多い為、休息日に待ち合わせることになった。拝郷は唯笑の助言通り桜坂学院に入学したらしく、土日か平日の夕方以降が都合がいいと話していたので、土曜の昼頃に待ち合わせである。

他の3人とラウンジでボードゲームでも嗜んでいる最中に一言断って抜け出し、『ソーサリータクト』へと向かった。


「最近任務一緒になんないけど、調子どう?」


唯笑がなんとはなしに話題を振る。


「ああ、結構いろいろな発見があったな。唯笑はどうだ?」

「私はあんま変化ないかな。パトロールとかって実際どんな感じ?」

「些細な悩みに対応してる時間の方が長いぞ。暇なときは暇だが、色々やりようはある印象だ。『関わる全ての人が幸せであってほしい』という理想に近いと思う」

「……うん。とても、素敵な任務だね。私もそういうのがしたいなあ……世界を救った後だろうけど……」


そう言って、青く澄んだ空を見上げた唯笑に、怜が「今後のことも考えるべきだな、そろそろ」なんて言うと、唯笑は怜の方へ顔を向けて「やだ、気が早すぎでしょ」とけたけた笑う。

そして、


「……まあ、もう二度と繰り返さない以上、これから先もそりゃ考えないとだけどさ」


と言って正面を見据えた。


「……そういや、五感の完全催眠だっけ?あれはどうなったの?」

「ああ、あれな。もう少しで略式が開発できるから、それで実戦にも使えるだろうな」

「おー、いいじゃん。やっぱ寿羽ちゃんとか綴ちゃんたちいると解析はやいね」

「解析と言えば、最近『心象魔術』の対抗策として『精神障壁』開発できたし略式も調整終わったから、近い内にスクロール渡すな。ちゃんと使えるようになっとけよ……まあいざという時は俺が展開するけど」

「凄いじゃん、ありがと」


そうやり取りしている間に『ソーサリータクト』前に到着し、特に何もなく入店する。

程なくして、「よお、お二人さん。こっちだ」と声が上がる。声の方向を怜と唯笑が見れば、拝郷が手をひらひらとさせて誘っていた。店員に会釈し、その席へと足を運ぶと、拝郷は桜坂学院の制服の姿でそこにいた。


「今日は学校休みじゃないのか」

「ああ、本来なら1日休みなんだけどな。オープンキャンパスで午前中だけ登校だったもんで」

「オープンキャンパス?来年廃校だから生徒募集する意味はないんじゃないのか」

「ところがどっこい……超おもしれーことに、廃校は無しになった訳」

「はあ?」


怜が困惑する中、1人納得した様子の唯笑がニヤニヤしながら、「ね?収穫あったでしょ?」「おうとも。『放蕩の茶会』の正体は勿論、舞月財閥ともコネクトができたし、それに……姫さんの言ってる意味が充分理解できた」と話していた。


「……何だ、つまり、拝郷はその『真の友』が桜坂学院廃校を阻止したとでも言うのか」

「モチのロン。今度王子さんも見に行ってみろよ、すげーおもしれーことやってるから。何なら気が合うと思うけど?」

「益々気になること言われたんだが……唯笑、そういやいつか見に行く話だっただろ。いつ頃なんだ?」

「んー、来年の春とかかな」

「遠いな……」


怜が靄々しているのも構わず、拝郷は「まあ。その礼を言いたかったってこったよ」と話を切り上げ、次にメモをテーブルの上に裏面を上にして置いた。


「で、依頼されてた件な。……正直、あまり期待はしない方が良さげだぜ?」

「何かあったか」

「まだ囚われの姫さんなんだ、彼奴。余裕で高式が幽閉してんだけど……ぶっちゃけ、連絡とるのはあまりおすすめしないね。下手すると、こっちが情報取られかねん」

「そんなに……『教会』との停戦とかも厳しいかな?」

「ん、それはどうだろな」


唯笑のコメントに拝郷は首を捻った。


「何でそんな曖昧なんだよ」

「高式はどうも、『教会』にそこまで忠実じゃないらしい……あ、これ連絡先入手にあたって直接高式と対談した結果ね。ボイレコとってるから証拠にこれやるわ」

「は、」


と雑に差し出されたボイスレコーダーを何とかキャッチした怜だが、まさか高式と直接対談してくるとは思ってなかったため思考がフリーズしたままだった。唯笑もしばらく固まっていたが、はっと我に返ってすぐにボイスレコーダーの再生ボタンを押した。


『有栖大登の連絡先くれね?』

『……依頼主は誰だ?』

『それは教えらんねー』

『ふむ。……伏せる意味はないよ、大凡の予想はつくから』

『へえ?』

『城月怜、真白唯笑。この2人だろ?』

『……お前さんにも『投資』したくなってきたね。おもしれーじゃん、お前』

『そりゃどうも。『投資』するっていうなら……あることを伝えてもらえれば充分だけど』

『このまま話せば、伝わるけど?』

『……ああ、なるほど。用意周到だね、さすが世界一の情報屋といったところか……じゃあ、このまま話そう』

『へいへい、世辞とかどうでもいいから、言ってみろって』

『……『教会』は、ある計画さえ実行できれば、あとは『軍』との戦争の勝敗などどうでもいい。僕たちの敗北ということで弁償する用意もあるから、それで話を進めても結構さ。計画実行後、今の全権代行は結果はどうあれ、執務を継続できない状況になるだろう。いや、僕がそういう状況にしてみせる……理想は計画が実行される前にそうすることなんだが、どうもそれは無理らしい』

『無理?そりゃどうしてまた?』

『それは、……あとで資料を渡す。必ず、『教会』から出て安全圏に行ってから目を通し、そこから察してくれ。……話を戻そう。その後釜に、僕は有栖を据える。そのために、僕の実績をある程度こいつに譲渡する必要があるし、こいつが在籍している年数の条件も考えれば、今こいつを『教会』から出すわけにはいかない』

『ふうん……で?お前さんは『教会』を好き勝手動かせる権力はいらねーってことになるけど、そうまでして自由を得てどうすんの?』

『……普通に生きたい。そのために必要なことをするつもりだよ』

『なるほどねえ……お前さん、下手したらそれで世界が滅ぶかもしれないらしいぜ?』

『君たちに1つ、いいことを教えてあげよう』

『はあ?』

『魔術師なんて頭おかしい奴しかいないし、いい人から死んでいく下らない世界だけど……結局、皆、誰か、何か救いたいだけだよ。真白は世界を救いたいし、『神父』は特定の誰かを救いたい。不特定多数の誰かを救いたい奴だっているだろうし、皆救いたいっていう酔狂なお人好しだって絶対いる。彼奴は……予想はつくけど、言わないでおこうかな。結論、たったそれだけだと思うんだ。僕にとっての救いたいそれは、世界じゃないし、僕が救いたいものを救うためなら世界にとっての悪にだってなるし、『教会』だってどうでもいい……むしろ潰れてしまえ』

『そうかよ……『教会』なんかクソッタレだという点は激しく同意するけど』

『違いない』


そこで音声が途切れた。


「んで、資料な……マジで胸糞だったぜ。マジで解析しとけよ?洒落にならねーから」


呆然とボイスレコーダーを手に持ったまま固まる怜たち2人に構わず、机上にファイルを置いた拝郷は顔を顰めてそういった。怜は呆然としながらも、そのファイルにも目を通す。


『操作』という魔術の概要だった。『心象』魔術の時は『陰成室』に一応スクロールを公開していたが、これに関しては何も公開していない、正に機密情報のようである。

通称『リンク』。Aの意識を消失させ、Aの胸にリンクの魔術式を埋め込み、BのDNAに魔力を付与し、それをAの脳に埋め込むことで下準備が終わる。後はAの意識が消失した状態で、BがAの肉体に魔力を譲渡するだけでリンクが起動、BがAの肉体を半永久的に使用可能になるという効果。尚、一度リンクを設定されてしまえば、『異常性』が無い限り解除はできない。

普通であれば再現性が低いと一笑に付すレベルの、本当に実戦に全く使えない魔術の効果だが……『心象魔術』があれば容易に再現できてしまうだろう。そんな結論に至るまでそう時間は要さなかった。

戦々恐々としていた怜は、唯笑はどうなのか、と唯笑に視線をやれば、唯笑は思いの外冷静だった。予想通りらしい、と怜は少し落ち着いた。


「……まあ、色々察したと言うか、知ってたよ、うん。……準備がほぼ全部整った以上、『軍』本部襲撃は避けられないだろうけど……」

「様子見てはいたが、やっぱり想定内か?」

「うん。『毎回』、大体そうなるし、『今回』確定しただけだよ」

「……大丈夫か?」

「大丈夫。だって、まだ希望はあるよ。いつもならあそこの防衛ができてなければ即詰みだったけど……『今回』はそれが失敗しても、『精神障壁』が間に合えば、確実に回避できるはず」

「なるほど……あそこの防衛って、その人員は足るのか?」

「『放蕩の茶会』『陰成室』を動かすわけにはいかないから少しキツイかな……うん、素直にお願いしようっと」


そこまで言うと、唯笑は拝郷に『伝達』魔術を使用した。

怜には聞き取れない仕様なのでどういったやり取りをしているかは分からなかったが、おそらく『あそこの防衛』を依頼したであろうことは分かった。拝郷は少し驚いた様子だったが、神妙な顔で頷いたことから、無事承諾を得たということまで推測はできた。


その後は、他愛もない雑談をしてからの解散となった。

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