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同じ空の下で  作者: 桜油
4章
47/140

42話

こんにちは。


前回の続き、日向紗季も加えてのあれこれですね。


では、どうぞ。

有希と怜が組んだ任務から帰り着くと、今日補佐をしていた紗季がラウンジで待機していた。

コンシューマーゲームの最中だったのか、手元のゲーム機から顔を上げた紗季が、有希の顔を見てにぱっと笑みを浮かべた。


「おかえりーゆうくん!無事話せた?」


てててと駆け寄ってくる紗季に、有希がどこか穏やかな表情で「……うん。大丈夫だったよ」と返すと、「ね、杞憂だったでしょ?れんれん、優しいもん」なんて紗季が言う。


「何だ、紗季から提案したのか」

「うん、ゆうくんすっごい心配性でね?あたしが大丈夫だって背中押したんだぁ」

「なるほどな。……唯笑と宥は?」

「まだ帰ってきてないよー?任務は終わってるって提督からは聞いたけど」

「じゃあ帰りが混んでるのか……」


夕飯はもう少し待つべきか、と怜が考えていると、紗季が「ちなみにゆうくん、どこまで話したの?」と尋ね、有希が「僕たちが沼男ってことくらい」と答えていた。


「え、それって触りだけじゃん!もっと重要な情報伝えてたでしょ?何してたの!?」

「仕事だけど……」

「もう、そんなに気負う必要もないのに」

「気負ってなんかない」

「あたしなんかね?提督に『君みたいなのは初めてだ』って褒められたんだよ?えっへん!」

「……多分それは褒めてないと思う」

「負け惜しみなんか聞こえなーい」

「そういうことでいいや」

「なんだ、触りだけって。他にも話したいことあったのか」


有希と紗季の会話に混ざった怜に、紗季は待ってました!と言わんばかりに、曰く『もっと重要な話』をしようと口を開く。


「れんれんはねー」

「ストップ」


が、有希に口を塞がれ、「むー!」と抗議する紗季だったが、有希が耳打ちすると、紗季は「む……?」と大人しくなる。有希が口から手をどけると、プハッと息を吸った紗季は、「そういうことなら……うん、納得したよ!」と話を終わらせた。


「おい、俺がどうしたんだ。気になるじゃないか」

「れんれん、ごめんねー。ゆうくんがこれはあたしたちから言うべきことでもないっていうから、唯笑ちゃんがすっごい頑張って情報とるのに期待しててー?」

「紗季の馬鹿……僕が情報伏せた理由までペラペラ話さなくても……」

「?よくわからないが分かった」

「嘘、納得した……」

「というかそれだけなのか?他にいいたいことって」

「んー……あ、ゆうくん、これとかどう?」


とまた耳打ちし合う2人に怜が苦笑していると、何もネタが浮かばないのか2人が頭を悩ませ始めた。怜も少し考え、ああ、と思いついたことを口にした。


「じゃあ、『教会』にいた頃の話とかどうだ?」

「「『教会』にいた頃?」」

「そうだ。『教会』で有栖に出会ったきっかけとか、『教会』で実験体だったにしても、お前たちは何で2人で抜け出せたのかとか、色々気になることはあるからな」

「「んー……」」


しばらく2人で考え込み、異口同音に「「じゃあ、それで」」と返す辺り、仲いいなあと怜は感心した。


「元々は別々の研究室で管理されてたんだよね」

「隣ではあったから、壁越しに会話はしてたけど……一緒に管理されるようになったのは、ひろがきっかけかな」


という言葉から語りは始まった。


「「……(あたし)はその日も壁のすぐ近くまで寄る」」

「「名前も知らない少女(少年)と、与えられた食糧の、パサパサになった黒パンを齧りながら、他愛の無い雑談を交わし、何物にも代え難い時間を共にした」」

「「彼女()に会いたい。そんな気持ちは確かにあって」」

「「……(あたし)にとっては簡単なことだよ」」

「僕は壁を簡単に壊せる。檻も、鍵も、扉も、研究員も、何もかも壊してしまえばいいと思う」

「あたしなら、監視カメラを切ることも、解錠することも、トラップを解除することもできる筈だから」

「「でも、それはしなかった」」

「どうせあたしは偽物。……名前もないし、もう望まれない命だって思ってた」

「呪われた命なんて呟いてた彼女は悲しそうだった……きっと僕も同じなのに」

「「だから、我慢して、会話だけを重ねてた」」

「「けれど、そのかけがえのない時間は終わり、後戻りなんてできなくなった」」


そこまで語り終えると、有希は紗季に視線をずらす。紗季はそれに頷いて、怜を見据えた。


「……ひろは、数年前にあたしの担当になったの。ひろは優しかった。それに、優秀だったよ。あっという間にあたしを超えた……あたしに研究員としての存在意義なんて無くなってた」

「ひろは、隣のゆうくんと話し始めた。あたしが代わりに仕事しようにも、全部仕事終わらせちゃってるから……あたしって、何の意味もないのかな……って……そのまま、生きてる意味も何もなく、あたしは近日処分されちゃうかなって……怖くて」

「見慣れた白に、虚無な時間に、頭がおかしくなりそうで……耐えきれなくなって、あたしは、ひろを襲った」

「ひろは、強かったよ。ううん、あたしが戦闘経験も無くて弱かっただけかもしれないけど……あっという間に、あたしが追い詰められちゃった」


有希が続けた。


「勿論……その騒ぎは僕も分かってて……正直、彼女が隣にいないなんて、きっと僕も頭がおかしくなると思ったから、僕は必死に抗議した。壁を殴ったし、大声を上げた」

「けど、それじゃ助けられないって思ったから……もういっそ、大きな間違いだったとしても構わない、彼女を、彼女を笑う顔を閉じ込めるようなものは全部壊してやろうって決めた」

「壁を壊した先で、ひろは笑ってた。……『これで、2人一緒に監視する理由ができた』『おれは研究員、君は戦闘員、君はその支援役。やっと、無理やり施設を脱出しなくても堂々と2人でいられるよ?』……この時初めて、計算だったと知った」


そこで言葉を切った有希は、はあ、とため息をついてから「で、僕たちの処分前日にひろは開発した魔術を使って一時的に僕たちを死亡偽装して逃がしてくれた」と言って懐からUSBを取り出し、怜に差し出した。


「これは?」

「あたしが知ってる限りの情報をまとめた資料と、ひろが使ってた魔術のスクロールだよー。あ、れんれんに話せない範囲は抜いてるよ。口でちゃんといいたかっただけだけど……結果オーライだね」

「情報とか資料は分かったが……魔術スクロール?」

「五感の完全催眠が効果なんだけど」

「何そのチート魔術。是非欲しい」

「変わり身早」


呆れる有希に構わず、怜が慌てて自身の居室までUSBを持っていき戻ると、唯笑と宥が既に帰り着いていた。


「お、先に任務終わってたんだ。お疲れー」

「紗季はサボってたし、僕らも大したことしてないけどね……おつかれ」

「お疲れ様です……紗季さん?」

「有希は余計なこと言わないの!おつかれー」

「怜は?」

「ちょっと僕たちから渡したものがあったから自室に仕舞ってるところだし、すぐ戻ってくると思う」

「あとで唯笑ちゃんも目を通しといてー!すっごい為になるやつだと思うんだよね!」

「あ、うん、ありがと」

「仕事サボって内職してたってことですか?」

「ちょ、違うよ?前々からUSBは準備してたもん。あたしはただ、ゲームの感想言って提督をリフレッシュさせてたんですー」

「余計質が悪いです……っ」

「あー痛い痛い痛いギブギブギブ!頭ぐりぐりやめてー!」


和気藹々とそんな会話で盛り上がっている四人を遠目に見て、怜はどこか笑みを浮かべながらラウンジへと早足で戻っていった。

どうやら、主人公について2人が知っている情報があるようです。

が、2人の判断で明かされませんでした。

主人公が知らなくて『教会』実験体だった2人が知っている、主人公に纏わる情報って多分ろくでもないでしょう。厄ネタです。


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