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同じ空の下で  作者: 桜油
3章
43/140

38話

こんにちは。


今日こそプロセカの映画見に行きます。


それはさておいて、3章は明日で終わります。

明日、併せて登場人物一覧をプロローグの前に挿入します。


では、どうぞ。

怜と唯笑が次に向かったのは、宥と初めて出会った秘密基地跡地だった。

以前と変わりない様子だが、中に人の気配を感じた。もう拝郷がそこに待機しているであろうことは想像に易かった。


「ここって元々、拝郷本音の秘密基地だったのか」

「そうだよ。それを知ったのは『前々回』だったかな?ある人物について調査してもらう時に、成り行きでここのことも教えてもらえたんだ。まあ、最終的に『彼』たちの一時的な滞在場所になったんだけど……」

「秘密基地の割には俺たちはあっさり使えたんだが」

「そりゃあ十数年前にここを放棄してる筈だし」

「放棄したにしても、こんな秘密基地らしいところをよく他の子どもが使わなかったな。『認識阻害』の効果か?」

「それもあるけど、『認識阻害』なんかなくても世間一般で言う『曰く付き物件』だから利用しないんじゃない?」

「おーおー、よくもまあオレが語ったこともない知識が出てくるじゃねえか。さすが『JoHN』の姫さんは情報が早いこって」


という声に前方を見やると、拝郷がそこに佇んでいた。拝郷は薄ら笑いを浮かべていた。


「姫さんは初めましてか?どうも、拝郷本音っす」


と軽く挨拶する拝郷に、唯笑が「姫?私が?」と首をひねった。


「ああ。『軍』の提督直属で、懐刀に等しい立場として『JoHN』は結構有名な部隊だぜ?そこに所属する3人……まあ5人に最近増えたけど、『御伽学院』のモルモット、『教会』の成果物と色々面白そうなメンツ集めてるじゃねーか。その中でも、永世中立で世界中飛び回っててこのオレすら正体が分かってねー実力派の『放蕩の茶会』と個人的につながりがあり、今日『軍』と『陰成室』の同盟も成立させた超絶やり手の美少女姫と、その傍で控える、『国際魔術連合』常任理事のお気に入りな少年兵の王子様ってな」

「姫って柄でもないんだけどな……」

「おうよ。『教会』幹部候補への突撃は腹抱えたぜ?だからオレは敬意を込めて『バーサクプリンセス』と呼んでる」

「あー!もう、さっさと本題入るよ!」


と更に口角を上げて思い出し笑いをする拝郷に唯笑が腹を立てたように先を促すと、拝郷は肩を竦めた。


「へいへい。じゃあ情報3つ言ってみ?」


と本題に入るや否や、唯笑は気持ちをすっぱり切り替えたのか神妙な顔になった。


「……まず1個目。先に質問なんだけど、『ある人物』から『ある少女』について買い取り依頼が君に来てるかな?」

「……そうだな」

「それについて君はまだ何も着手していない?」

「してねーけど」

「そっか。じゃあ私はこの件について情報提供をするから、ここは1つ、その買い取り依頼を受けて欲しいな」


と書類を鞄から取り出し差し出す唯笑に、拝郷は警戒するように目を細めた。


「……オレ的に無駄に金を失うだけじゃん?それに買い取った後はどうすんだよ。オレの立場は分かってんでしょ?」

「むしろ君にこそお願いするんだけどね?だって、『教会』も『評議会』も『御伽学院』も嫌いでしょ、憎いでしょ、鼻を明かしてやりたいでしょ?この情報を見れば分かるけど、私の依頼を遂行すれば、人の命や心をなんとも思ってなさそうなアイツらの計画を最大限妨害できるよ……情報屋として腐ってるよりずっとね」

「情報屋として腐るたァ随分な言い草じゃねえの」

「そうでしょ?君もよく知る通り、聡明なんかじゃ何も出来ないんだよ。希望がないから君は腐っていくだけ。実際私があいつらに関して知ってることの半分も君は知らないだろうね。復讐に燃えても惰性のまま生きてたから」

「……そうだよ、ごもっともだよクソッタレ」


結局拝郷は奪うように唯笑の手から書類を取り、雑に広げて流し読みし始める。読み終えたページを放り捨てるので、怜は拾い上げるついでに目を通す。


『評議会』でのとある計画で実験体にされている少女と、拝郷に依頼をした人物の詳細の情報と、今回の唯笑の依頼で『評議会』にどれだけのダメージを与えられるのか、ということだった。

どうも『不死性』の研究をしているらしく、『克服』の『異常性』を保有する少女に『不死性』を会得させようと試行錯誤しているらしい。それは過激な実験のようで、『同期』である少年が少女を安全な場所に移動させるべく『買取依頼』として情報屋の連絡先を調べて連絡したのだとか。

……少年も恐らく自由に動ける立場ではないだろうに、よくもまあ拝郷なんて情報戦最強の魔術師の連絡先を調べ上げたな、と怜は少年に感心していた。


そして、『買取依頼』とはしたものの、『評議会』は間違いなく拒否するだろうから、どちらかというと誘拐して安全なところに幽閉することになるという唯笑の予測、この依頼が達成できれば『教会』『評議会』『御伽学院』が提携してここ十年ほど始動している作戦を一部掻き乱せるのは確実だということだった。

拝郷は最初こそ不機嫌そうに読んでいたものの、次第に落ち着きを見せ、読み終えた後に口を開いた。


「……あいつら、何を企んでんだ?」

「私と有栖っていう魔術師の戦闘は見てた?」

「聞き返すんじゃねえよ」

「見てて、違和感はなかった?」

「……有栖の戦闘スタイルが全くちげーな」

「うん。『心象破壊』、まるで別人のような戦い方、『不死』……胸糞案件だと思わない?」

「……クソだな」


そう吐き捨てた拝郷が、「……わぁった。何が何でも分捕って、幽閉してやるよ。で、次は?」と促した。


「2つ目。来年の春、桜坂学院に入学してみるといいよ。普通科でね。潜入なんてちょちょいのちょいでしょ」

「なんだ、未来予知か?で、それがどうしたよ?」

「怜から話を聞いたけど、『放蕩の茶会』のことは相応に気に入ったらしいじゃん。なら、そこに入学すれば君はもしかして真の友を得るかもね」

「……?」

「まあ、意味はわからなくていいよ。ただ、『放蕩の茶会』の面々の正体のヒントが転がってることと、そうでなくても舞月財閥とのつながりは作れるから、今の時点でも行く意味がないでもないとは言っておこうか」

「……まあ、件の少女を拉致するなら、たまに土産話するネタにはなるか。いいぜ、1年で廃校になるだろうしちょうどいい。暇潰し程度にはなるだろ。で、最後は?」


とまた次を促した拝郷に、唯笑は『令呪』が刻まれた手を見せた。


「『異常性』は、所有者じゃなくても使える場合があるんだ。『令呪』と私は呼んでるんだけどね……この『令呪』の力で君はもしかしたら復讐できるかもしれないぜ?」


「私も実際、世界を今度こそ救済できるかもしれないんだ」と少し嬉々とした様子で唯笑が付け足すと、拝郷は少し黙った後、「……お前さんたち、本当に世界を救う気か?」と尋ねた。


「勿論。約束もあるし、何より私が関わった全ての人に幸せであってほしいからね……綺麗事かもしれないけど、できる限り頑張ってみたいから」

「……お前さんは?」


と、ここで初めて拝郷は怜に話しかけた。

怜はあまり迷わずに答えた。


「……少なくとも、俺は唯笑の敵になることはないな。俺のやりたい事をしようってなったら、結果的に世界救済することになるだろう」

「え、怜に個人的な目標あるの、っていうかできたの!?何、何!?全力で手伝うから教えて!」


とずずいっと怜に詰め寄って興味津々に尋ねる唯笑に、怜は苦笑を浮かべて、「いや、そういう問題じゃない。世界を救った後にちゃんと自力で達成してみせるさ」と返した。


拝郷はそれを興味深そうに眺めた後、ふう、とため息をついた。


「別にその考え方についてどうこう言う気はねーけど、世界なんかクソだろ。クズみたいな奴が圧倒的に多いじゃねえか。そしていい奴から先に死んでいく。誰も傷つかないとか、関わった人すべてが幸せになるとか……人間なんて犠牲がなきゃ幸福になれねー生き物だ。救うとかバカバカしい、性善説もそこそこにしとけよ」

「……まあ、そう思うよね」


拝郷の言葉に唯笑は苦笑した。

唯笑は唯笑なりに、自身の考え方について思うところはありつつも変えられない葛藤があるのだろう、と怜は最近感じていた。

そして、苦笑は段々と、切ないような薄く儚い笑みに変化し、拝郷を一心に見つめるのだった。


「でもね。この2つだけは頭の片隅に置いておいて欲しいかな。人は『善行』をしたいんじゃなくて、自分にとって良い明日の為に最善を尽くすんだよ。そして、だからこそ、人の世は苦しく、されども美しく、愛しいのさ」

「同じじゃないのか?」

「怜、違いが分かる日はきっと来るよ」

「そういうものか」


と納得する怜を後目に、拝郷は「……まあ、クズどもと組むよりお人好しと組む方が百倍マシか。これ連絡先な。で、まず最初の依頼はあんの?」と交渉成功を告げた。


「有栖の連絡先をくれ。最終的に『教会』のトップにそいつを据えたい」

「おいおい。確かにそれは面白そうな計画だとは思うが、『評議会』と『御伽学院』は変わんなくね?」

「問題ない。契約の都合上どうしても理由、詳細は言えないが、『御伽学院』に関しては潰す、失敗しても大幅に影響力を下げて落ちぶらせることができる。『評議会』も単独で俺たちに接敵はしたくないだろ」

「……面白そうじゃん。いいぜ、乗った」


そう言って拝郷はその場を後にした。

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