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同じ空の下で  作者: 桜油
3章
42/140

37話

こんにちは。


今日は有給とったので、私用を終わらせてプロセカの映画を見に行こうと思っていたのですが、雪が少し積もっててげんなりしてます。


一旦出て、私用済ませて、その私用が終わったときの状況で映画見るか決めますかね。


では、どうぞ。

翌日。

怜と唯笑は、拝郷本音との件を済ませてくるように、と提督から指示を受けて2人だけで街を散策することになった。ついでに『陰成室』との同盟契約も済ませてきてほしい、という指示もあり、唯笑は任務を受けて早速秩佐を通じて執行を呼び出していた。

準備を整えてから寮を後にした怜と唯笑は、まず先に『陰成室』との待ち合わせ場所に指定した、なじみの喫茶店へ歩を進める中、怜がふと気になって尋ねた。


「唯笑、拝郷との待ち合わせ場所は分かるのか?」

「うん、分かるよ。なんなら怜も一度滞在したことあるんじゃないかな?」

「孤児院?」

「冗談。彼ほど『教会』が大嫌いな人もいないと思うなあ」

「じゃあ……ああ、あそこか。宥と初めて会ったところ」

「Exactly」


そこまで話して少し沈黙が流れる。どこか気まずいように感じた怜だが、臆さず別の話題を探そうとして、


「ねえ」


という唯笑の声に口を噤む。


「……あの、さ。一昨日は、私が油断というか、慢心してたのが悪いだけだから。怜は何も悪くないからね?」

「……そんな筈はない」

「いや、そうだよ。だって、『前回』までならこんなヘマ絶対しなかったもん」

「違う。俺が唯笑なら大丈夫だろうと楽観しすぎていただけだ。戦場では何が起こるか分からない……ましてや『教会』相手など、最悪に備える必要があったのに、俺は怠ったんだ」

「それを言うなら私だって勝手に突撃して、」

「違う。俺がそのフォローにちゃんと回るべきだった。せめて『心象破壊』の対策をちゃんと立てるべきだった。それだけだ。……だから、今度こそ失敗しない。何が起こっても問題ないように立ち回る。俺がひたすら頑張ればいい。俺が世界を救う英雄ならば、そうあるべきだろう。だから、唯笑は気にしなくて良い」


そう言い捨てて怜が先を歩こうとすると、背後から唯笑がはあ、とため息をついた。


「こんなんじゃ、駄目だよね」


と唯笑が怜に『影縫』をした。唐突すぎて怜が解除も忘れて唯笑に見入る。


「ごめんね。怜はずっと、私と最初に会った時の言葉を意識してくれてたんだよね」

「……」

「本当ごめんね。その時は、私も心からそう思って言ってたわけじゃないんだ」

「……はあ?」


唯笑からの思いがけない告白に怜の思考が停止するが、唯笑は続けた。


「勿論、『世界救済』したいとか、そういったことは本当だし、怜がその夢についてすごく重要な立ち位置にいるのも本当。だから、英雄って言葉自体は嘘じゃないんだけど……別に目論見があった」

「……」

「君に賭けたかった。でもそれだけだよ。多分、相棒とか楽しみとか思うこともなかっただろうね……怜の言葉がなければ」

「俺の言葉が?」

「うん。……言ってたでしょ?『こんないい天気なんだ。笑わないと損だろ』って」

「……懐かしいな」


唯笑の瞳が湿った感じで、曇天や雨空になるのが嫌で言った言葉だった。今も変わらず、当初から唯笑に抱いていた、まだ名前をつけられそうになかったそれ。いつか、怜がこれに名前をつけられる日はくるのだろうか。

その日こそ、今の唯笑との関係性が決定的に変わるだろう。怜はそんな確信だけしていた。

唯笑の言葉は続いた。


「あの言葉があったから、私、すごく楽しみになったよ。そして、時と思いを重ねて、ずっと近くにいて……怜のこと、今なら信じられるようになったんだ。まだ伏せている情報については、私に勇気がなくてまだ言えないけど。心の準備ができたら、ちゃんと伝えるよ。だから、一緒に頑張らせてくれないかな。改めて、怜の気持ちを貸して欲しい」

「……」

「今こそ同じ言葉を返すね。怜、こんないい天気なんだし笑おうよ」


唯笑がそう満面の笑みを浮かべる。怜は肩の重荷が下りたような胸の軽さを覚えながら、それに頷く。

その瞬間。


「なに真っ昼間からイチャイチャしてんの?最近人前でイチャイチャするのが流行りなわけ?」


脇から執行の声が聞こえ、怜と唯笑が揃って肩をビクリと振るわせて声の方向を見た。

数年前とあまり変わりはないが、たしかに執行だった。じとっと怜たちを見る目はそのままに、端末の録画を切って執行は呆れたようにひきつった笑みを浮かべている。


「……待ち合わせ場所はここじゃなくない?」

「そうだけど、向かう途中で見かけたからそりゃ合流するっしょ。2人が仲いいのは数年前から理解してるつもりだし、せめて人目につかない場所で防音結界貼ってからいちゃつけば?」

「至極真っ当だな。ぐうの音も出ない」

「いちゃついてたんじゃなくて、ちょっと話し合いしてただけだっての……」

「……唯笑、風邪気味なのか?」

「顔が赤いのは別の理由だからもう何も聞かないで……」


閑話休題。目的地に一緒に移動、入店して席についた後、数年前と異なり執行からの雑談から始まった。


「采和の件はどうも。正直、真白の言ってたことは眉唾物だと思ってたから、まさか実現するとは思ってなかったよ」

「手はず通り、桜坂学院の方を勧めてくれたかな」

「まあね。桜坂学院は舞月財閥が運営してるだけあってセキュリティーは万全だし、裏社会もほぼ関わってないから、確かに隠居先には勧めやすいとこだったとも。少なくとも1年は落ち着けるだろうけど……あそこって廃校寸前でしょ?本当にいいわけ?」

「うん。あそこじゃないと困るよ……あそこなら、旧友くんの夢だって叶うかもしれない」

「黒守采和に夢があったのか?それも裏から離れたほうが実現できるような夢が」


怜にとって黒守采和とは常葉綺人のような魔術好きのイメージなので、思わず口を突っ込む。唯笑は特に気にしていなそうに怜に返した。


「凄く素敵な夢だよ。桜坂学院……そこに来年入学する予定のある人物となら、『世界一キレイな魔術の使い方』ができるはず。怜、いつか見に行こうよ」

「興味深いな。その時は誘ってくれ」

「……あの夢を、実現するわけ?」

「うん。……私はあの夢、とても素敵だと思うな。これから数年後の平和な世界には欠かせない、誰も傷つかない魔術の使い方を広めるべきなんだよ」

「……はあ。まあ締結するけどさ……」


執行はそういいながらもどこか嬉しそうに表情を朗らかにしていた。


「締結する契約の内容は同じでいいわけ?」

「うん。戦力としての参加は原則強要しない。ただ、『緊急時における『軍』所属の兵の救護』をお願いしたい。あと、一部資料についての開示を『軍』の一定階級以上の者が依頼した場合、開示請求者の情報の通達、審査を一切行わずに請求者に提供してほしい。『国際魔術連合』への通達はしても良いものとする」

「おーけー。じゃ、数年前に1回見たけど、ちゃんと資料として保管したいからあのファイルくれる?」

「どうぞー。私が味方と認識している、またはできる範囲の人だけが閲覧できること、そこから抜ける場合は記憶が処理されることを前提にしてくれれば、これからもデータは提供するね」

「勿論!ああ、やっと手に入れた待たされましたぁ……!」


と唯笑が書類の入ったファイルを4つ差し出し、執行が小躍りし始めたのを見て怜が苦笑を浮かべた。

そしてふと思い出した。


「ああ、そういえば執行。『心象シリーズ』に対して予め防止する魔術障壁を今開発中なんだが、その論文とスクロールの作成に付き合ってほしい」

「ファッ!?」


怜の言葉にぎゅるんッと首を回して怜の方へ鋭く視線を向けた執行が、そのまま怜の肩をがっしりつかんでグラグラと体を揺らし始めた。


「ちょ、え、そもそも『心象シリーズ』のスクロール入手してんの!?『御伽学院』はスクロールすらこっちに渋りやがったのに……!ってか、防止策とかあんの!?すごい面白そうなんですけど!絶対参加させろください!」

「お、おう」

「よっしゃ!あんたただの空気か金魚のフンくらいにしか思ってなかったけど意外とやるじゃん!」

「えっと……その、『循環』は怜が開発したやつだよ……?正直私より魔術詳しいと思うよ……?」

「……は、マジなのそれ」

「……うん」


執行が唯笑の言葉に神妙な顔で聞き返したが、それも唯笑が肯定したのを聞いて完全に固まる。まずいことを言っただろうか、と身構える怜だったが、「なにそれ、最アンド高!Enough!」と再度興奮した執行が絶叫したことで杞憂に終わった。

その後、なんとか宥めて落ち着かせ、契約書に署名してからデータを提督に送り、そこで解散となった。

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