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同じ空の下で  作者: 桜油
3章
40/140

35話

こんにちは。


今日も今日とて窓際社員みたいな暇スケジュール。

出勤しなくても良くね?と悪魔、当番があるでしょ、と天使。

今日はただひたすら虚無なんだろうなあ。


それはさておき、もうそろそろ戦場での会話シーンも終わりです。

戦闘シーンよりその後の会話が長い小説です。


では、どうぞ。

「『JoHN』の姫さんは今おねんねしてるとこか。まあ、王子様でも充分だな」

「拝郷が、一体何の用だ?」

「おいおい、フリーの情報屋がやることなんて1つだけだろ?」


怜の質問に戯けて肩を竦めた拝郷は、笑みを浮かべたまま取引を持ち出した。


「『放蕩の茶会』から聞いたぜ。お前さんたち、色々困ってるんだって?」

「……」


たしかに、『JoHN』には課題が多いと怜は感じていた。

今回の最前線では高式の人柄を把握することは怜にはできたが、有栖の連絡先を入手できていない。『心象破壊』『心象掌握』の対策も早急にしなければならない。そもそも、一条たちの立ち位置は結局どうなるというのか。あと、今後の諜報担当の人員補充。

一条たちの立ち位置については高式が処理してくれる可能性があると怜は想定していたし、『心象魔術』の件も後に控えている『陰成室』や『国際魔術連合』、『放蕩の茶会』と連携すれば対応可能だという目処は立っている。有栖の連絡先、諜報担当は眼の前の情報屋を上手く勧誘できれば、または協力関係に持ち込めたら解決が見込めることと以前からの唯笑の計画に組み込まれているということもあり、拝郷との交渉が早まる分にはむしろ助かるが、唯笑がいつ復帰するかによるだろう。


そこまで思考を整理し、怜は拝郷の話に集中する。


「『放蕩の茶会』もなかなかおもしれー連中だ。だけど、あいつらは来年から遊べないって話してて、そいつらの紹介でお前さんたちを見てきたわけだ。まあ、『JoHN』には前々から興味はあったけどな……さっきの戦闘や会話、そしてお前さんの反射速度を見て、益々興味が湧いた」

「はあ」

「つまり、これから先に『投資』する価値があるってこった」

「『投資』……ねえ」


『前回』、金をとことん積まないと情報提供を受けられなかった記憶しか怜にはないが、『前回』から気に入られた魔術師は『投資』としてそこまで金額を用意しなくても情報提供を受けられたという噂が拝郷本音にはあった。怜は微塵も興味がなかったが、『今回』、その『投資』の対象に択ばれるとは夢にも思っていなかった。


「とは言っても、ただで『投資』するわけにもいかねーのよ。そこで、1つ提案」

「何だ?」

「……面白そうな情報を3つオレに提供してみろ。真偽はどうでもいいけどオレが既知の情報はなしで、チャンスは1回。どうだ?」

「面白そうな情報……まあ、それなら用意がある。数日後にまた会えるか?」

「ん?たった数日でいいのか?」

「ああ。唯笑が握ってる情報は充分面白いはずだ」

「へえ……情報屋、いらねーんじゃねーの?」

「いや、必要だな。どうしても誤差が生じる。裏とり、イレギュラーの有無の確認と、色々動ける駒が欲しい」


怜がそういい切ると、拝郷は少し考え込んで、踵を返した。


「……じゃあ、3日後、オレの秘密基地で。本当に用意できたら、『放蕩の茶会』が話してた通りオブザーバーになるのもありだが、クソしょうもねー情報なら取り立ててやる」


怜はその背中を見送り、また怜も『総指揮』の元へと帰投した。


「……ということがあったんだが、どうすればいいと思う?唯笑」

「いやいやいやいや、色々進展しすぎてない???」


そして数時間後の現在。意識を取り戻した唯笑に怜が報告をしたところ、唯笑は困惑していた。


「確かに白星が色々事前に調整してくれるって聞いたけど、そんないい感じに接触できるとか思ってなかったし……暁も完全に敵になったわけでもないならまだ交渉の余地あり……?ええ……っと」


と必死に思考を整理する唯笑に、「すまん、もう少し回復して落ち着いてからが良かったか」と怜が軽く謝意を述べたが、唯笑はひらひらと軽く手を左右に振って、「いや、結構大切な報告じゃん。それに私は無傷だし、寝てただけだからむしろ元気だよ?」とけたけた笑っていた。怜はいまいち晴れていない表情だった。


「うーん……ま、大丈夫!その条件ならあまり準備はいらなそうだね」

「……本当か?俺にできることは何かないか?」

「怜は何もしなくて大丈夫だよ。孤児院の件……はちょっとまずいか。じゃあ『評議会』の件と、彼たちの件と、『異常性』の件で何とかなるって目処立ってるし。あ、あと綴ちゃんにも連絡入れなきゃ!って言うわけで、怜も今日疲れたでしょ?頭脳戦は私にまかせて、しっかり休んでて!」

「そうか。……唯笑」

「何?」


唯笑は怜の声掛けに、何でもないように首を傾げる。

怜は口を開いては何を言おうか躊躇して閉口し、やがて頭を振り、「……いや、何でもない。唯笑も『心象』喰らったんだ、ゆっくり休んでくれ」とだけ言って病室を後にした。


「もしもし、綴ちゃん?白星くんのお陰で凄く有利に交渉進められそうだよ!本当にありがとう!」

『あんた、『教会』との戦争中に単身で突っ込んで『心象破壊』されたって本当なの!?大丈夫なの!?悪影響、後遺症は!?』

「うっわ、声大っき。耳がキンキンするから落ち着いて声抑えて……」

『はあ!?落ち着いてられるわけないでしょうが!のほほんとしてるんじゃないわよ!?単身突っ込むとか馬鹿なの?死ぬの?おかげで城月のやつ、すっごい苦労したみたいじゃないの!』

「え、あ、それは申し訳ないと思ってるけど」

『どう苦労したかも分かってないくせしてそんな上っ面の謝罪なんか無用よ!どうせあいつは何もあんたのこと責めなかっただろうし、私が代わりに色々言ってやるんだから』

「し、心配してくれてたんだ。本当ごめんって、次から気をつけるから」

『次から次からって。前にもあんた、城月を助ける時にも言ったわよ。あれは緊急事態だったから私も何も言えなかったけど、今回は緊急事態でもないじゃない』

「でも、私が突撃してなかったらあのひとは死んで」

『また他人優先したの?あんたの考え方を否定する気はないけど、自己犠牲的になるなら誰も助けないほうがマシよ?だって助けられても命の恩人を犠牲にしたんじゃ後味悪いじゃない』

「……」

『あんたが死んだら、あんたがその後の人生で助けるはずだった多くの人の命まで犠牲になると思いなさいよね』

「……うん」

『それに。……城月、今回すごく落ち込んでたし、自分を責めてたでしょ』

「……えっ?」

『何、その反応。確かにあいつ元々感情が薄いけど、最近は割と分かりやすい奴だと思うけど。まさかそれすら気づいてなかったとか言わないでしょうね』

「確かに、何でか元気ないなとは思ってたけど」

『まったく。帰投するや否や電話かかってきて、『伝達』でもいいはずだけど『伝達』魔術式を練るのが難しいほど焦燥しきった感じで、『心象破壊』を術者が解除した場合に意識を取り戻すまでにかかる時間を聞いてくるし。知らないながら何とか答えたら、あいつ通話を切るのも忘れて1時間放置して。切ってやろうかって思ったけど、なんかすすり泣くような声が聞こえるからほっとけなくて切るに切れないし、それが落ち着いたと思ったら突然『放置してすまん。今から『心象魔術』を最初から防げるような魔術式について考察したい』ってグループ通話始めてきて、あんたが起きてすぐに通話ぶち切るし。全然冷静でも何でもなかったわ』

「……怜にもちゃんと謝らなきゃだね」

『謝るぐらいなら次からあいつに頼ること意識しなさいよ』

「それもそっか。……ごめん、その怜が開発してほしいって言ってた魔術、引き続き開発をしててほしいんだけど」

『心配しなくてももう開発したわ。……私たちは少し助言しただけで、ほとんどアイツが1人で開発したようなものだけれど』

「そういえば怜、魔術理論も得意なんだっけ。……ねえ、綴ちゃん」

『何よ?』

「……怜は凄く変わったよね。これなら、私は今度こそ世界救えるって、奇跡は起きるって、信じていいかな?」

『……それこそあいつに聞きなさいよ。今のアイツなら、上っ面じゃなくて本心で言ってくれるわよ』

「そりゃ後で怜とも話してみようかなって思うけど、あの事を話す勇気はまだなくって。それに、綴ちゃんがどう思ってるかも知りたいなって」

『はあ。……信じてって言ったのはあんたでしょ?私は信じることにしたわ、あんたも覚悟決めなさい』

「……」

『ほら、あんたが使おうとしてる情報のデータも確認取れたし、後で裏取っといてあげるから。あんたはさっさ寝なさい。余計あいつが心配するでしょ』

「そうだね。……ちゃんと話はしておくよ」

『ええ、そうしなさい。このままじゃ絶対ろくなことにならないわ。ソースは『前々回』の私』

「説得力抜群だね。……うん、頑張るよ、私」

『じゃ、お休み』

「うん、お休み!」

信頼できない語り手、私は好きです。

これは3人称視点で書いているので該当しないかもしれませんけど。


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