表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ空の下で  作者: 桜油
3章
38/140

33話

こんにちは。


あまり休んだ実感もないまま休日が終わってしまいました。

なんでやろなあ…。


それはさておき、とうとう最前線での話です。つまり3章も佳境です。


では、どうぞ。

魔術組織間での抗争は、国どうしの戦争や内戦とは違い土地の権利を争うことがないため、基本的に戦闘する場所は定まっていない。また四六時中臨戦態勢でいる必要もなく、ランダムな日時に片方の組織が仕掛けてきて、それをもう片方が迎え撃つ形になる。それにより、市街地が戦闘の舞台になることがほとんどである。

しかし、ただ市街地で戦うのでは一般市民に被害が及ぶ。それを避けるため、原則として、敵対状態にある魔術組織は事前に戦闘を仕掛ける日時と場所を『国際魔術連合』に通達しておく必要がある。

『国際魔術連合』はその通達を受けて、一般市民への被害を防ぐために『認識阻害』効果がある結界や障壁をあらかじめ展開する。


しかし、『国際魔術連合』は作戦の妨害をしない配慮として、攻撃を仕掛けられる側には何も通達しない。

だからこそ諜報部門、所謂オブザーバーの腕の見せ所というわけだ。オブザーバーがなるべく早い段階で情報を入手し、相手に察知したと感づかれないように連絡することで準備と作戦を立てる余裕が生まれ、仕掛けられたとしても有利に立ち回ることができる。逆に情報の入手すら出来なければ、問答無用で不意打ちを仕掛けられたり、警備が対応したとしても圧倒的不利な展開から戦闘が開始されることになる。オブザーバーは責任重大であり、平時よりも非常時の方が多忙を極める部署だと言えよう。

そして、予め通達した日時、その場所に魔術師を派遣するのだが、これを『最前線』と呼称する。尚、それ以外の場所に仕掛ける側が配置した場合は規定違反となり『国際魔術連合』を敵に回すことを指すので誰もしない。


最前線では『国際魔術連合』が審判や周囲の一般市民の保護を行うので、それ以外の派遣された魔術師は集中して互いの攻撃に専念できる。『国際魔術連合』を意図的に妨害した場合は規定違反である。最前線では『総指揮』という臨時では全権代行の更に上の権限を所有する代表者が全体への連絡、指示、撤退時の『国際魔術連合』への通知を行う。これは全権代行の暗殺による終戦、降伏の阻止を回避する為、総指揮と全権代行は兼任できないと規定で決まっている。もし兼任すれば以下略。


他にも規定で色々縛られているので、抗争中だからといって無法地帯とは言えない、が怜や唯笑の認識であったし、経験談を聞いただけの宥、一条、日向も、そういう最低限の秩序が保たれた紛争地帯をイメージしていた。


今回は深夜帯の廃れた市民ホール。総指揮も怜たちに対し、「話は聞いている。好きなようにやってくれ、悪いようにはならないだろう」と言っていたので好き勝手やらせてもらおう、と意気込んでいたのだが。


実際には、地獄絵図でしかなかった。


「……何だこれ」


思わず、怜が口を開く。

一条は閉口し、唯笑は口元を手で抑えていた。

後方支援に宥を行かせてよかった、と怜は思った。間違いなく耐性がない人には見るに耐えない光景が広がっていたからだ。

おびただしい数の死体がそこら中に広がり横たわり、まるで絨毯のようになっている。必死に抗っている魔術師もいるが、至る所から流血したり、重傷な者は臓器がはみ出ている。『魔装』で作られたと思われるマスケット銃が大量に並んでは乱射していて、こうして怜たちが眺めている間にも1人、また1人と命を落とす。


恐ろしいことに、この場にいる『教会』関係者はたったの2人である。他の『教会』の兵がいたが死んだ、とかではなく、最初から、有栖と思しき人物と、その遥か後方で様子を眺めている総指揮らしき少年―遠目でいまいち見えていないが恐らく高式暁だろう―の2人しか派遣されていないのだ。斃れている死体は全て『軍』の制服を身にまとっている。


「……おかしい」


一条はそう呟いた。


「何がだ?」

「……ひろは、無抵抗の人間をあんな残酷な殺し方しない」

「……」


一条の言葉に怜が注意深く観察すると、有栖の胸元で魔術式が起動されており、後方の総指揮が全く魔術式を常に展開しているのが目に入った。視力を『強化』して観察し、怜は推測した。


「『心象掌握』?いや、対策でスクロール確認したけど、あんな精度高く肉体の操作ができないはず。ならば、単純な『心象掌握』ではないと見るべきか……」

「『心象掌握』?」

「ああ、……あれは、お前の知る有栖じゃない。多分、操られているだろうな」

「……ッ助けなきゃ」


唯笑が顔を青くする中、横でそう怜と一条が話している間にも、眼の前で1人の魔術師がまた殺されそうになっている。

奇しくもそれは、怜と同年代の少年兵。息も絶え絶えなその少女に、有栖は笑みさえも浮かべてマスケット銃を突きつけている。

唯笑が、徐ろに後退し、壁際の消火器―一般市民も消火できるように設置されたものであろう―を手に取る。『強化』の略式が展開され、唯笑はそれを投げた後に更に『魔装』を展開してナイフを生成、それも素早く投擲する。2人の真上で消火器にナイフが刺さり、勢いよく蒸気が吹き出した。

追い詰められていた少年兵はその隙をついて脱出するが、すかさず煙の中から魔術式が展開され、その魔術の光を避けきれず直撃した少年兵が倒れ込みピクリとも動かなくなった。


怜にも魔術式は見えていた。『心象破壊』だ。

怜がその少年兵を拾って担ぐ間に、唯笑が有栖に対して言葉を発した。


「らしくないなあ、暁。弱いものいじめなんて」


唯笑の言い草から、『心象魔術』には気づいていそうだ。怜はそう結論付け、サポートに回るべく複数の魔術式を展開した。一条が陰から怜に視線を送るが、『伝達』で、『お前は周辺に生存者がいたら保護してほしい』と指示を出し、一条が頷いてその場を離れる。


それを有栖は静かに見送り、唯笑の言葉に何を返すこともなく『魔装』のマスケット銃を夥しいほど展開する。数え切れないほどのマスケット銃が並び、一斉に乱射を始めた。唯笑も負けじと『強化』『魔装』を展開して手に剣を取り、マスケット銃から乱射される『魔力撃』を効率よく撃ち落とす。怜も背負っている少年兵が傷つかないように『障壁』を展開しながら後退し、『魔力撃』の魔術式を展開して相殺した。そのまま大規模な『魔力撃』を放つが、有栖も同じ大きさの『魔力撃』を2つ起動して1つで相殺、もう1つが高速で怜たちの元へ迫る。

唯笑がその前に出て『魔装』2つを両手にクロスさせて食い止めた。威力があまりにも強く、出血の後に左腕が一度ちぎれるものの、唯笑は咄嗟に『回復』で左腕を再生させ、ちぎれた際に落とした剣の片割れを拾って再度クロスで食い止める。今度は右腕から出血し、唯笑が力んでなんとかその『魔力撃』を跳ね返す。

凄まじい衝撃波が走るも、有栖は動じることもなく更にマスケット銃による『魔力撃』の乱射はやまない。怜は『障壁』を多数展開し、唯笑に目で合図する。唯笑は魔術式の並び方から察したか、「ナイス」といいながらその『障壁』の上を駆けていく。『魔装』で『魔力撃』を弾きながら、地道に距離を縮める。

やがて至近距離まで唯笑が辿り着くと、総指揮も焦りを感じたのか援護射撃に『魔力撃』を数発放ったが、唯笑は冷静に回避する。有栖のコントロールが疎かになっているのか有栖の弾幕も減少していた。

まずは上から剣を振って叩き落とし、次は横に薙ぎ払い、3発目と4発目は先に戻るように横にまた薙ぎ払い、すぐに来た『魔力撃』を斬り上げて、体勢を整えるためにバック転、5発目も再度斬り上げる。その後6発、7発目も薙ぎ払う。そのままその剣を有栖の影に深く刺し『影縫い』、唯笑は魔術式を書き換えて『心象掌握』の解除を試み―瞬間、唯笑も崩折れた。


「ッ、唯笑!」


慌てて駆け寄った怜が唯笑の体を支えると、『心象掌握』の効果が切れたのか同じく脱力する有栖の肉体を、後方の総指揮の男が回収に来た。

……総指揮の男は、怜の予想通りの人物だった。そして、総指揮の男は怜が向ける殺気に気づき、少し口角を上げた。


「やあ、久しぶりだね」


そう、高式は口にした。

ずっと前から名前だけは出ていたライバル枠、満を持して主人公と再会です。


評価、感想などいただけますととても幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ