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同じ空の下で  作者: 桜油
3章
36/140

31話

こんにちは。


2月も2月でリアルは忙しいですが、なんとか投稿していきます。


では、どうぞ。

衝撃の事実を知ることとなった暴露大会は、怜、唯笑の困惑の中、燿の「そろそろ秘書が戻る時間だからビデオ通話を終了させてもらう」という一声を皮切りに続々と抜ける人が続出することで終わりを告げた。

残った面々も2人の動揺を察してか宥が2人を連れ出した為、怜の居室には唯笑と怜の2人きりになった。


しばらく沈黙が続く中、唯笑の独り言でその沈黙は破られる。


「暁……どうして……?君は、仲間を守りたいんじゃなかったの……?」

「……宥たちのことか」

「……うん」


怜の言葉に、どこかか細く震えた声で唯笑が答えた。


「怜と暁を入れ替えようって思いついて、世界が終わる前……正確には、世界が詰む前に時間遡行と入れ替えをやったんだけど」

「……」

「『前回』の怜……今の暁には少しだけ事情話したんだ。そうしないと、『高式暁』は幸せになれないかもしれないから」

「……」

「暁、乗り気だったよ?仲間の傍にはいられないけど、仲間に危険が及ばなくなるならって。なのに、どうして仲間に危険が及ぶような組織に志願して入ってるの……?」

「……彼には彼なりの考えがあるんじゃないか?『教会』の動きをコントロールしたいとか、仲間を守る以外に別の目的があるとか」

「だったら!」


唯笑は突然語気を荒げて怜を睨んだ。その瞳はどこか湿っていた。

ここ数年は落ち着いていたのに、あまりもの情報、衝撃で酷く取り乱している。怜は唯笑の現状をそう分析した。


「……だったら、どうして、どうして育を直属の部下になんかしてるの?真っ先に解放すべきなんじゃないの?」

「……それは……」

「こんなの、今までになかった。暁がこの時期に『教会』に加入するなんて……これじゃ、私の作戦が無意味じゃん……」

「……」

「結局、何をやっても無駄なのかな?こんな私じゃ無理だったのかな?もう何がどうなってるか解んないや……ごめんね」


唯笑が謝り、「……頭、冷やしてくる」と怜の居室から出ていこうとするので、怜は慌てて呼び止めた。それでも止まらないので、立ち上がり手を取った。唯笑はぴたっと止まり、徐ろに怜へ振り返る。

呼び止めたはいいものの、怜は何を言えばいいのかわからず言葉が出てこなかった。

きっと、「諦めないで」という言葉では全然足りないだろう。というか、今はどんな言葉をかけてもその場しのぎにしかならないような気さえして。

唯笑がわずかに目を瞠った。


「なんで、そんな泣きそうな顔してるの?」

「……どう言えばいいのか、わからなくて」

「どうしてさ。怜は怜が思うように言えばいいと思うけど」

「でも。それじゃ……唯笑は、心から笑えないんじゃないか?」


怜の言葉に唯笑は少し黙り込んだ後、軽く息をついた。


「これじゃ、どっちが辛いか分かんないじゃん。……あー、もう。ほら、気晴らししよ?」


そう言って怜の手を引き、唯笑は居室の外へと歩いていく。怜は逆らうでもなく唯笑に手を引かれるままついていき、寮の屋上に出たところで唯笑が手を離した。怜はそこで立ち止まったが、唯笑は屋上の端まで歩を進め、柵の手前で立ち止まった。


「いいでしょ、この景色。私は結構好きだよ。この世界を救うんだーってちょっと元気になれる」


そう言う唯笑に、怜は景色に意識を向けた。

暗闇に光が点々と輝く空、その光より低く人工的でカラフルな色のそれがいたるところに敷き詰められていて、車のライトがまるで血管のように張り巡らされているように見える。

特に感慨深いと思ったことは怜は『前回』含めても今まで無かったが、こうして久々に夜空をじっくり見れば、何だかその人工的な光が邪魔なように思った。藍色の暗闇と点在する光、白く映える大きく欠けた月だけが綺麗に感じる。

特に怜の感想を聞くでもなく、唯笑は「特に夜が好きだな。外国の言葉でユエって月のことらしいし、私って結構単純なのかな?」と苦笑を少し浮かべる。


「いや。俺も夜は好きだな」

「意外。どっちかというと日中の方が好きなイメージだった」

「たしかにそうだな。晴れやかな気分になるし、どこにだって行ける気になれる。……夜は嫌いだったが、今好きになったんだ」

「へー。ここ気にいったってこと?紹介した甲斐があったね」


誇らしげに胸を少しだけ張った唯笑に怜が「……まあ、そういうことにしておこう」と苦笑し、しばらく沈黙が場を支配した。怜も唯笑の隣に並んで星空を眺める。

少し心地の良い沈黙を破ったのは唯笑だった。


「……何回もこの世界は繰り返している。その記憶は、『決意』を以てしか保持されないようになってる」


唯笑の声に、怜は星空から唯笑に視線を移した。

唯笑は星空を見ながら語っている。瞳の色も相まって、まるで昼間の晴天の青空に星が廻っているようだと怜は思い、見惚れた。

怜の様子などいざ知らず、唯笑は続けた。


「けど、綴ちゃんみたいに、『決意』を介さなくても記憶の保持ができるって気づいた。だから、例えば、暁と怜の立場を入れ替えてしまえば?怜も暁も『前回』の記憶を保有していたなら?怜も暁も最後、戦いを回避できるかもって思ったんだ。まあ、勿論他にも色々仕込む前提だけど」

「……そこまでして暁と俺の戦闘は回避されるべきなのか?」

「うん。それが、世界の終焉を招く引き金だから」


そこで言葉を切った唯笑は、深呼吸を1回してから再開した。


「バタフライ・エフェクトというより、これは歴史の修正力と私の怠惰が原因なんだ」

「歴史の修正力……いや、それより唯笑の怠惰って」

「私、育も助ける予定だったんだ……大切な親友で、普通の女の子になりたいって夢を知ってたから、その夢が叶う優しい世界があったっていいと思った」

「優しい考え方だな。唯笑らしい」

「でも、怜が狙われているって、殺されるかもしれないってイレギュラーが起こった」

「……ああ」

「それで。私は、世界と親友を天秤にかけて、親友を切り捨てた」

「……より多くの人を救うため」

「そんな綺麗事じゃ済まされないよ。こんなのただの言い訳だし、そのせいで、暁がもしかしたら敵対する……ううん、ほぼ確実だろうね。そうなったら、誰も救われない……」


唯笑がそう言って俯く。星が輝いていた瞳の中の青空が途端に曇った。


「なら、俺が救いたい」


気づけば、怜はそう口にしていた。

唯笑が怜へ顔を向けた。さっきまで全く何も浮かばなかった言葉が、次々と怜の心に溢れ、怜はそこから四苦八苦して取捨選択して言葉に紡いだ。


「城月育のその夢も、高式暁の想いも、宥の旧友との和解も、一条と日向が恩人と再会するのも、きっと唯笑は全て背負って、でも世界のために諦めて切り捨ててきたものがあっただろう。掬い上げても世界が壊れる度に無駄だと感じたことだってあるだろうさ。俺が今後似た経験をしたとしても、似たような喜びを感じても同じ悲しみはきっとないから、同情するなんて烏滸がましい」

「……」

「でも。俺は、唯笑にもう何も諦めてほしくない。世界救済も、自分の関わった人たちの幸せを願い行動するのも、唯笑が自分の幸せを掴むのだって」

「……」

「まあ……俺の勝手なわがままなんだが。だから、俺は諦めない」


怜の言葉に唯笑は目をパチクリさせた。


「……怜、」

「何だ?」

「いや。なんというか……すごく、頼もしく感じる」

「……そうか。もっと頑張るさ」

「うん、待ってる」


やっと唯笑は不器用な本来の笑みを浮かべた。

怜は、所在なさげにしていた唯笑の手を優しく握って星空に視線を戻す。唯笑も握り返し、2人で星座を眺めた。


「……夜空、綺麗だね」


ふと、唯笑が漏らした一言に、怜は、一瞬の逡巡の後に、静かに頷いた。


「今なら手が届くだろうな」

主人公と高式暁が入れ替わっていること、主人公のそばに真白唯笑がいることで、

今までの周回には起こり得なかったことが色々起こっています。

それが希望につながるか否かは分かりませんけれど。


評価、感想などいただけますととても幸いです。

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