表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ空の下で  作者: 桜油
3章
33/140

28話

こんにちは。


今日は路面凍結がヤバそうと言われ、一応早く起きてみました。

今から出かける準備をして、出かける準備が終わったら時間まで暇つぶししようかなと。


作品の話に変わりますが、前話で連れ帰った2人の少年少女について上司と話し合う回です。

では、どうぞ。

「と、いうわけで提督。この2人の保護、どうかお願いできませんか!」

「刹那さん、マジで頼みます!」

「……またか……」


怜と唯笑の話に、提督はこめかみを抑えて深くため息をついた。


無事に『軍』本部まで退避できた怜と唯笑、少年少女であったが、やはり目下の問題は今後の少年少女の処遇。しかし手段を講じるのも無駄な時間だろう。必然か偶然か、怜も唯笑も辿り着いた結論は同じだった。

善は急げとばかりに怜も唯笑も戸惑う少年少女2人を引き摺って執務室に突撃し、唐突な訪問に驚く提督の前で綺麗に土下座をしてみせた結果、冒頭に戻る。


提督の困惑にも負けず、唯笑が続ける。


「だって、この子達は『教会』に追っかけられて困ってるんだよ?拾おうよー、雇おうよー」

「同情はする。だが、そんなこと言ってお前らは人を入れすぎなんだ。しかも全員が全員ここに勤務してくれるわけでもない。そいつらの保護費も財政圧迫の原因だ。これ以上、人を雇う余裕はない」

「うっ……それを言われるとぐうの音も出ない……けど、ほっとけなかったし……」

「自分が関わる全ての人に幸せであって欲しいという願いは大変素晴らしいと思うが、ここは慈善団体ではないからな。『軍』の運営の破綻がほぼすべての国民の生活が不安定になることを意味する以上、『軍』の安定が最優先事項だ」


そう正論を返す提督に、怜が援護射撃をする。


「ですが提督。その保護を本当に必要としている人だけに限定して保護するようにすれば、もっと多くの人が救えるのでは?自立して自分なりの幸福をつかめる人まで保護を継続した結果、本当に行く宛のない人を救い損ねてしまうのは『軍』の生活保護の制度としても本末転倒なのでは?」

「たしかにその精査は必要だろう。しかし、この2人は『教会』の実験体である以上、『軍』としては介入できない。保護すると規則違反に該当して、『国際魔術連合』……つまり世界中を敵に回しかねない」

『その心配は無用だ』


突然、怜の脳内に声が響いた。

唯笑や提督の脳内にもそれは届いたのか、唯笑が「あ、白星くん。やっほー」と軽く応え、提督がそれを見て「なるほど、真白の協力者か」と得心していた。


基本的に事情が事情だけに派手な動きは勿論、他組織の交渉にも消極的な姿勢をとっている椎名たち『放蕩の茶会』だが、どうしても交渉を要する場合は秩佐が顔を公開しない前提で『伝達』などでやり取りをしている。他の3人は『元々』が顔が売れすぎて声だけでも特定されかねないから、とのことだが、秩佐もあと1年もしないうちに交渉担当が難しくなるらしい。秩佐の『元々』の姿である志瑞司(しずいつかさ)を『今回』一度も見かけていない為、怜としては半信半疑だが。

唯笑は「まあ、綴ちゃんたちが少しだけ介入すればそうなるかもね、あの人なら」と妙に納得しつつ、椎名に「で、そうなった時は君たちもめっちゃ有名ってことだから。本当気をつけてね?」と注意を促していたのが印象的だった。


閑話休題。

提督がその理由を尋ねる前に、秩佐は『ああ、別件対応中に少し時間もらってるから、申し訳ないが一方的な通信とさせてもらうよ。不明な点があれば後日唯笑を通して聞いてほしい』とだけ前置きし、やや早口に語る。


『その2人、『国際魔術連合』にも照会かけたけど、どうも魔術師登録がないみたい。たとえ実験体だろうと『所有物』として認知してもらうなら登録しないとだから、この時点で『教会』の方が規則違反してる。追跡があったとしても『国際魔術連合』を味方につけることは可能だから、『軍』の庇護下に置くのはいい戦法と言えるんじゃないか』

『あと、『放蕩の茶会』としてもぜひ保護してほしい。『教会』の追跡に少し違和感あるんだ。唯笑の話では『毎回』血眼になって捜索しているはずだけど、『今回』は『教会』にしては生ぬるいなって。桜坂市に誘導していた(・・・・・・・・・・)可能性まで追える。『前回まで』と決定的に違う何かが起こってるな、これは』

『『教会』がやっていた研究、『教会』の勢力図がわかれば、そのイレギュラーが分かるかもしれない。それに、『教会』の情報は『軍』としてもほしいだろう?』

『何はともあれ、ただ庇護下に置くんじゃもったいない。『JoHN』の構成員でも少年兵でも、なんなら重要参考人として捕虜としてでも何でもいいから、『軍』の管理下に置くべきだと僕は思うな。それにほら、あの2人も最近休職したならちょうどいいんじゃないか?』


そこまで話すと『伝達』の魔術の効果を切ったのか、何も声が響かなくなった。

唯笑も提督も2人して考え込んでいる中、怜はふと気になって少年少女の方へ向き直る。

少年少女は不安げにしていた。受け入れてもらえるのが不安なのか、将又別のことか。怜にはわからなかったが、気にせずに思ったままの言葉をかけた。


「大丈夫だよ。お前たちの恩人とやらの期待には応えてみせる」

「「……」」

「でも、もう一押しが足りないみたいだ。とは言ってもここに怖い大人とかいないから、何も不安に思う必要はない。お前たちは……そうだな、自己紹介でもしてみればいいんじゃないか?」

「……自己紹介?」


少女のほうが反応した。怜は「ああ、そうだ」と肯定した。


「俺も唯笑も、お前たちのこととか、恩人のこととか、ちゃんと知りたいんだ。なんせ、仲間になるからな」

「仲間……」


今度は少年の方が反応した。2人がしばらくうつむく。


「それとも、実験体だから名前がないのか……?」

「いや、……ある。ひろがつけてくれた名前」

「ひろ、それが恩人の名前……というか愛称か。きっと良い名なんだろうな。ぜひ、聞かせてくれないか」


そう言うと2人は目を瞠って、互いで見合わせて、やがて意を決したように2人で手を繋いだまま一歩前に踏み出した。


「僕……僕は、一条有希(いちじょうゆうき)。『教会』の『研究室』で少年兵として訓練を受けてました。最終的にひろを助けられるなら、なんだってやります。どうか、お願いします」

「あたしは、日向紗季(ひゅうがさき)。『教会』の『研究室』で何回か実験を受けた後は、ずっと幽閉されてた。ひろを助けたい。それさえ約束してくれたら、あたしはあたしが知ってる情報全部教える。お願い、お願いだから……」


提督はそれにしばらく見入った後、後頭部を掻いた。


「ああ、……はあ……俺もどうやら、お前たちに少し感化されたのかもな」


そう苦笑して、手を差し伸べた。


「いい名前だ。我々『軍』としても、君たちの恩人は好ましく思う。そのような者がトップに立てば、『教会』とも停戦ができるかもしれないな。ぜひ支援しよう。その直接のパイプ役として君たちは役に立てるだろう、歓迎する。ようこそ、『軍』へ。俺は黒守刹那、『提督』……つまり全権代行を務めている。城月、真白が所属する『JoHN』の直属の上司にもなるので、よろしく」


その言葉にぽかんとしていた一条と日向だったが、怜が隣で「良かったな」と囁くと、状況を察したのか満面の笑みを浮かべて握手に応じた。

なんとか上手くいって唯笑が安堵を浮かべていたが、は、っとした表情で「そういや刹那さん、真面目な相談って」と本来の話題を切り出した。提督も失念していたのか、ああ、と思い出したように呟く。

今まで内容が内容だけに空気に徹していた宥が、「一条くんと日向さんにはむしろ好機かもしれませんけど」と、若干暗いながら訳知り顔で話すので、「何だ、宥は知ってるのか」と怜が返す。


「……まあ……知ってると言うか、あれを見ちゃったら予想できるっていうか……」


そう苦々しく言う宥に怜が首をかしげる中、唯笑が「あ、もしかして」と1人で納得していた。


「唯笑ちゃんは知ってたんですか?じゃあ、なんで……」

「うーん……たとえば、死にかけた後に幸せになれる人がいたとして、宥ちゃんは助ける?助けちゃうと、結果論、幸せになれる人が減っちゃうし、下手するとその人も幸せになれないかもって感じ。トロッコ問題みたいなものだね」

「それは……酷く悩ましい問題ですね……」

「だよね……」

「……そうか、あいつはこれから自分なりの幸せを得られるのか。ならば良かった」


そう提督が言った後、本題に入った。


「……お前たち『JoHN』には、最前線に出てもらう」

ちなみに、簡易版と比べて登場人物は結構増えてます。


評価、感想をいただけるとより励みになりますので、よろしくおねがいします。

何かありましたら、こちらへどうぞ。


Xアカウント:@IjiGamerR

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ